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聖剣のネクロマンサー  作者: のきび
1章.学園編
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4.アディ、尻にしかれる

 ボマルに勝った一件から、俺は学園内で一目置かれるようになった。ただし体面的には引き分けと言うことになってるらしい。今後のボマルの貴族の経歴に傷をつけたくないと言う学園側の配慮なのだが、実際に見ていた者がボマルが後ろから刺すと言う貴族にあるまじき行為をしたと言う話を漏らしたせいでボマルの株は駄々下がりだ。

 その話でボマルを軽んじた他のクラスのエリートがちょっかいをだし逆に返り討ちにあうと言うこともあり、俺は最低でもボマルと同じくらいの実力者と思われるようになった。

 そして従者になって厄介なことができた。どうやら従者は主人が学園にいる間は四六時中一緒にいないといけないのだ。もちろんティアは俺に自由にして良いと言うのだが俺が図書館へ行くと一緒についてきて俺の席の前に座る。邪魔だと言うと隣りに座ろうとするので、そのまま前に座らせているが、正直鬱陶しい。

「なんでじっと見てるんだ。お前は魔法が使えないんだから俺の研究を盗もうとしても無駄だぞ」

「アディ、それは失礼よ。私だって魔法は使えるわよ」

「ふん、一種類じゃ使えるうちに入らんだろう」

「いいのよ、どうせ聖騎士になれば神聖魔法(エルドラド)が手に入るんだから」

 一般魔法はその者の持つ特性が出る。俺が全属性の初級魔法を使えるのは聖と邪の化身である聖騎士装備と死霊魔法の根元である死霊魔導書をその身に宿しているせいだろう。

 聖騎士装備と死霊魔導書は師匠から使用を固く禁じられている。俺も今は使う気はない。

「でも、アディは初級魔法しか使えないのにそんな高等魔法の魔導書を見ても使えないんじゃない?」

 俺が見ているのは魔導書は過去の大魔法使い達が書き残した書物で、自分の持てる魔法を事細かにすべて書きつらねたものだ。当然今の俺には使うことができない。

 だが、それでも読む必要があるのだ。

「お前、この世にある初級魔法の数って知っているか?」

「お前じゃないよ、ティアだよ。う~ん100くらい?」

 俺はその答えに鼻を鳴らし呆れる。

「1000以上だよ、しかも失伝してしまった物まである」

「そ、そんなにあるの!?」

 魔法は上級になればなるほどその数が減る。そして初級は中級とは比べられないほど多い。この魔法と言うものは元はどれも格付けなどされていなく、どの魔法が上で下とかも無かったと思われる。つまり初級魔法は上級魔法や高等魔法よりも細かく砕かれた存在だと言うことだ。

 現状俺は初級魔法しか使えない。だけど組み合わせれば上級魔法のような威力も出せるし高等魔法さえ凌駕することだってできる。問題はそこまでの威力を出させると詠唱時間が長くなると言うことだ。読み解いた初級魔法を組み合わせて上級魔法を繰り出すには全部で10以上の魔法を唱えなければいけない。敵も間抜けじゃない俺が呪文を唱えるのを待ってくれることなんてのはまずあり得ないし、魔物ならなおさら待ってくれない。

「でも、それと高等魔法の本を読むのがなんの関係があるの?」

「お前はバカか? 秘密は誰にも教えないからアドバンテージがとれるんだぞ。教えるわけがないだろ」

「お前じゃないよ、ティアだよ。……アディのケチ」

 実際なぜ高等魔法の本を呼んでいるかと言うと、この高等魔法をバラバラに分解して初級魔法にまで落としこむためだ。そうすれば俺でも現在ある上級魔法や高等魔法がなんなく使えるようになるのだ、もちろん詠唱時間はとんでもなく長くなるだろうが。それに伴う新魔法の発見も捨てがたいからな。

 それにこれは練習なのだ、パズルを普段からしている人としてない人ではその作る早さが違う。常に分解組み立ての練習をしていれば詠唱時間も減るかもしれないし何かが掴めるかもしれない。


 正直このままでは戦闘では使えない、なにか新しい戦いかたを覚えないと実践ではゴミ以下だ。詠唱時間が短縮することができれば良いのだが。詠唱時間短縮か、いや逆に考えるんだ詠唱時間が長くても良いと。例えば剣で戦いつつ詠唱をすると言うのはどうだろうか? そうすれば隙もなくなるしそれほど強力な呪文を唱えなくても敵を倒しやすくなるはずだ。

 未だかって剣と魔法を併用して戦った奴はいない。いや正確には神聖魔法(エルドラド)は剣と併用しているがあれは剣を媒体にしているから正確には剣と魔法の併用ではない。

 そうだ、その戦い方を俺の戦闘スタイルとすれば強みになるはずだ。となると剣術だがおれは剣に関しては全くの素人だ。

「剣術か……」

「なに、アディ剣術を覚えたいの? もしよければ私が教えようか? 聖騎士の剣術は無理だけど、剣術の基本なら教えられるよ」

 俺がポツリと漏らした言葉にティアが待ってましたとばかりに反応し、よければ自分が教えると身を乗り出してきた。聖騎士の剣術など教えてもらうつもりはないし、教えると言ってもお断りなのだが、普通の剣術なら良いかもしれない。

「良し、お前、俺に剣術を教えてくれ、普通ので良い」

「……ティア」

「はぁ?」

「お前じゃなくてティアって呼んでくれるなら教える」

 なんで俺が交換条件出されてるんだ? 最初に教えると言ったのはお前の方だろ。と突っ込みたいところだが師匠に教えを乞うときは相手を敬えと耳がタコができるほど、いやトラウマになるほど教わっているしな。これは仕方がないことだ。我慢だ、我慢だ。

「ティ……」

 俺が名前を呼ぼうとするとティアを俺の目をじっと見ていた。これなにげに恥ずかしいな。ただ名前を呼ぶだけなのにじっと目をみられると急に難易度が上がる。そうか目と目が合うから恥ずかしいのだ。おれは顔を横にそむけて彼女の名を呼んだ「ティア」

「こっちちゃんと見て言ってよ」

「それは契約に入っていない」

 ティアは口を膨らませるとブーブーと不満を露にする。

「その顔、豚みたいだぞ」

「ちょ! 女の子に豚はないでしょ! もう、良いわよ教えるわよ。教えれば良いんでしょ」

 なんで逆ギレしてるんだこいつは、まあ教えてくれるんなら別に良いけど。そしておれはティアの弟子になった。なぜか、だんだん立場が下になってる気もするが、きっと気のせいだろう。



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