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聖剣のネクロマンサー  作者: のきび
1章.学園編
3/6

2.現代魔法とは分解された古代魔法の一部である

 今日はエリート組たちの模擬戦闘を見学するため闘技場に来ている。

 エリートの五人はすでに装備を整え闘技場に立つ。これはエリートと平民(ピープ)の差を見せつけるためのもので実力差を見せることによりエリートがそれ以外の者を従いやすくするための行事だそうだ。

 一人目のエリート、エルザ=イースト=マザリアス。ハムズレイス王国四家の一つ西を司るマザリアス家の次女である彼女は生まれた時から西の聖獣白虎に守護され当主の証であるイーストの名を与えれ未来をを約束された天才である。

 彼女の戦い方は聖獣をその身に宿し戦うその際彼女の体はまるで伝説の獣人のような姿になる。普段の可憐な姿からは想像もできないほどの荒れ狂った戦闘をするところから爆風(テンペスト)白虎姫(エルザ)と呼ばれている。


 二人目のエリート、ザムル・グレイン。グレイン公爵家の嫡男である。六大公爵家の一つグレインの家に生まれた彼は非凡な才能を持ち魔法も剣も勉学もすべてに置いて一級品で実力は爆風(テンペスト)白虎姫(エルザ)に勝るとも劣らない。


 三人目は王国聖騎士団団長グリム・トルステンの娘であるティア・トルステン。齢15才にして聖騎士の剣を顕現させることのできる天才だ。彼女の持つ聖剣グランクロスはまだ発展途上で実力を出しきれていない。本来聖騎士装備は厳しい訓練を経たのちに顕現する。それを訓練もしてないうちから顕現できるのだ。


 四人目はボマル・クワイゼン伯爵の嫡男、クラス委員長ののボマルだ。普通クラス委員長は実力、人望共に一番の者がするのだが白虎姫(エルザ)は生徒会に入ったためにクラス委員長を他の者に譲ったのだ。

 ザムルは遊ぶ時間が減るからと理由で辞退し、ティアは稽古の時間が減るからとボマルが選ばれた。

 とは言えボマルはザムルの腰巾着なのでクラス委員長の仕事もほったらかし遊びにいってしまう。そのせいで、ほとんどの雑務は俺たちに回ってくる。


 五人目は大商人の息子ゴルバトノフトロトス・クランボヤーズ。舌を噛みそうな名前だが外国の言葉で富よ永遠なれと言う意味があるらしい。俺たちは面倒くさいのでクランボヤーズと姓の方で呼んでいる。まあ、そちらも長いのでどっこいどっこいなのだが。

 この男もザムルに取り入っており実質エリート組を支配しているのはザムルである。ただこの男は金で地位を買ったので実力は平民(ピープ)程度しかない。しかし頭が回るのだ特に金勘定には秀でていてすでに自分の店を持っていると言う。


 そして彼等エリートが戦う相手は魔物である。魔物は自然発生して人々を襲う。今回彼らが相手にするのはD級魔物トロルである。トロルはかなり強く完全装備の兵士が束になってやっと倒せる位の強敵なのだが、エルザは剣を抜いたのすら分からない早さで細切れにし、ザムルは一刀両断のもとに切り捨てた。ティアは蝶が舞うようにトロルの攻撃を交わし急所を幾度か刺し動けなくなったところで首を跳ねた。ボマルは苦戦したがなんとか一人で倒した。

 グランボヤーズの対戦相手はパッと見はトロルなのだが実は幻術でゴブリンをトロルに見せただけの代物だ。

 試合が始まる前に俺のところに来て余計なことを言うなよと釘を刺されている。幻術は魔力量が多いものには効きにくい。俺の魔力量は常人の10倍(実際は1000倍)と言うのは周知の事実で皆に知れわたっているため念のために釘を指したのだろう。まあ、案の定効かなかったわけだが。

 エリート達が魔物を倒し終わると次の相手は俺達だ。指名されたものは戦うか拒否するかを選べる。もちろん拒否した場合学園にいる間はその者の従者にならなければいけない。もちろん負けた場合もだ。従者をしたくなければ勝つしかないのだ。もちろん学園史上平民(ピープ)が勝ったことなど一度もない。

「それではエリート組の諸君対戦相手を選びたまえ」

 エリート達がその言葉にうなずくとエルザがまず発言をする「では私はエリナを選びます」

 教師がエリナに戦う意思があるかを訪ねるが当然従者になることを選んだ。エルザの従者ならむしろ誉れだ。選ばれたエリナは喜んでさえいる。

「では次の者」

 次は当然ザムルだザムルはマリンを選ぶマリンも戦う意思がなく従者になって喜んでいる。

 もしかして従者になりたくないのって俺だけじゃないのか?

「では次のもの」

「「ではアディを」」

 二人の声が重なる、その声の主はティアとボマルだ。

「どう言うこと、私がこのクラスの三位のはずだけど?」

 ティアが自分より先に声をあげようとしたボマルに遺憾の意を表明する。

「ティア、あなたこそ感違いなされては困りますね。私はクラス委員長です。本当は一番先に選ぶ権利があるのですよ。ただ私はエルザ様とザムル様は認めてますので先を譲ったまでです」

 確かにボマルの意見ももっともだ、通常ならクラス委員長は首席の者がやる。だが、エルザは生徒会に入っているためできない、ザムルはやらないと言っても公爵家でクラスの席次だしなりよりボマルはザムルの腰巾着だ先を譲るだろう。だがティアは三位で爵位はなく聖騎士の家の者である。聖騎士団は力が集中するのを避けるため爵位を与えられていない。ただ聖騎士は家柄が重視される、それは建国からの聖騎士の家以外から聖騎士は排出されないからだ。

 ただその分聖騎士には特別な地位が与えられている。爵位的には男爵クラスでも公爵と同等の扱いを受けるし対等な立場であるのだ。だから聖騎士は貴族から疎まれる。領地もないようなものが公爵と同等だからだ。

 だから今回ボマルが俺を選んだのはティアに対する嫌がらせだろう。もしかしたらザムルの差し金かもしれない。

「なるほど、これはボマルが正しいな。ではアディを戦うか否か選べ」

 教師が俺に戦闘の意志を確認するように問いかける。正直戦うのは面倒くさいが従者などごめんだ。やるしかないか。俺が迷っているとティアが声を上げる。

「待ってください、そんなこと認められません」

「クラス委員長はそのクラスの首席と同等の権力があるそれは学園のルールであるから曲げられない」

「ぐっ」

 学園のルールと言われてはティアも黙るしかない。同級生との言いあいなら聖騎士の家訓で通るだろうが教師にそれは効かない。

「さあ、えらべアディよ」

「戦います」

 ”ザワザワ”

「ほう、戦うか」

 当たり前だ戦わなければ俺は5年間あいつの従者としてコキ使われる。当然俺からはなにも言えない、従者なのだから。学園生活を安穏と過ごすためには従者などやっていられないのだ。

「先手を打たせてやるよ間抜け」

「優しいんだなボマル、ではお言葉に甘えることにするよ」

 ボマルはやれるものならやってみると言わんばかりに両手を組み俺が行動を起こすのを待つ。魔法の秘密は解読半ばだが少し使ってみるか。

「”生活魔法 ウオッシュ” ”おまじない魔法 ラック”」

「「「「は?」」」」

「わははははははは。おいアディのやつ戦うのに生活魔法とおまじない魔法を使いやがったぞ。恐怖で狂ったんじゃねぇか」

 クラス(じゅう)の者達が俺の使った魔法に驚き大爆笑をする。ウオッシュは身体を清める魔法で、ラックは神にお願いする程度のおまじないである。

「これから半殺しにされるのに身を清めてどうするんだよ!」

「おまじないで怪我しないように神に祈るために身体を清めたんだろうよ!」

 言いたい放題である。まあ、知らないやつはそうなるよね。

「おい間抜けバカにしてるのか? 良いだろう半殺しで許してやろうと思ったが侮辱されたとあっては許すわけにはいかない。侮辱の代償としてその腕切り取ってやろう」

 俺の魔法に侮辱されたと勘違いしたボマルは声を荒げ剣を抜くと俺に向かい突進してくる。しかしボマルは破裂音とともに宙を舞い地面に仰向けで倒れる。


「「「「!!!???」」」」


 クラスメイト達はそのあまりの衝撃に声すらもあげられない。首席ではないとはいえボマルは弱いわけではないむしろ強い。それが一撃で倒されたのだ、みんな何が起きたか分からないのであろう。

 この世界の魔法は一つの魔法を分解したものなのだ。いや正確には数種類のだが初級魔法それだけで一つの魔法なのだ全属性使える俺はそれを幼いときに感覚的に悟った。

 なぜだかは分からないがまるでパズルのピースのようにバラバラにされているのだ。そして隣り合ったピースを繋ぎ合わせると違う魔法になる。二つを繋ぎ会わせただけでこれなのだからたぶん本当の魔法は強力すぎるのだろう。だからバラバラにされたのだと推測している。

 もちろんこれは死霊術(ネクロマンシー)も同じで段階毎に別の魔法が隠されている。

「く、くっそ油断したぜ」

 ボマルが剣を支えに立ち上がるがすでに満身創痍である。

「もう、降参した方がいいんじゃないか?」

 俺が親切心からそう言うとボマルは青筋を立て俺に向かってくるがまた宙を舞ってしまう。俺の周りには見えない空気の球があって俺に近づく者を自動で迎撃すして破裂する。その衝撃はC級魔物の一撃位はあるようで普通のものなら一撃で倒れる。立ち上がってさらに俺にかかってくるお前はなかなかのものだよボマル。俺は倒れたボマルに残った空気の球をぶちこむとトドメをさした。まあ死にはしないのは実験で確認済みだ。これでしばらくは起き上がれまい。

 俺がきびすを返し観客席に戻ろうとすると後ろから声がする。

「ま、まちやがれ」

 その声と共に俺の腹に剣の切っ先が突き出る。熱い、なんだこれ。俺は刺されたのか? 俺は後ろから蹴り飛ばされるとそのまま前のめりに倒れた。あの衝撃を受けてまだ立ち上がるのか、プライドと言うやつだろうか。平民(ピープ)なんかには負けられないと言う意思が立ち上がらせたのか。だけど残念だったな今のお前なら初級魔法で倒せる。俺はありったけの初級攻撃魔法 ガンロックを放った。大量の石礫(いしつぶて)はボマルに命中しそのまま倒れた。今度こそ勝ったようだがこのまま勝ってはあいつのプライドがズタズタだろう。俺は自分にスリープの魔法をかけ気絶したように眠った。

 まあ教師もいるし死ぬようなことはないだろう。俺は怪我が治療されるまで深い眠りへと(いざな)われた。


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