大吾と王と王妃
●前回のあらすじ●
大吾さんはマールとヴィヴィをめっちゃよく見てた。
いや、違うんです。俺の話を聞いてください。
俺がメアをバインドスキルで縛り上げたのは魔剣でザックリいかれないためであって他意はないんです。
でも確かに動けなくなるように縛るには鎧の内側だけではどうやっても不可能だなとは思ってました。
でも動けなくなるように縛ることは出来ました。
何故ならヴァンブレイスやらガントレットやらグリーヴが外せてバインド出来たからです。
これなら魔法スキル無効の効果がない部分が腕とか足とかがバインド出来るので、胸から腕から足から縛り上げたんです。
さっきのテトラさんもそうだけど、何故触れただけで切断されるメアの鎧を触る事が出来たかと言うと、ヴィヴィがメアの胸部の鎧バッキャン吹っ飛ばしたおかげでヴィヴィの覇気がメアにも通るようになりそこで洗脳状態が解除され自我を取り戻したかららしい。
だからバインドする時やたら暴れ回って『だ、ダイゴ様お待ちを!』だとか『ひっ。あっ、あつっ、熱いです!』って言ってたのね。
ヴィヴィもメアも普段聞けないようなちょっと色っぽい声出すもんだからふんふん興奮して気付きませんでした。
で、そんな色っぽいメアはと言うと。
「だ、ダイゴひゃま…」
お顔トローンして目は虚ろでいらっしゃる。
これアカンやつや…。
クリスさんもオロオロしてるし、何より騎士? のテトラさんがめっちゃピキピキしてますもん。
城に来た時にクリスさんがメアの事を王都の象徴、みたいな事を言ってたけどそんな象徴をギッチギチに縛り上げてしまいました僕。
これもしかして禁錮刑かしら。
罪状はなんだ。暴行罪とか? 自己防衛って言っても絶対聞いてもらえなそう。
テトラさんの後にゾロゾロと他の騎士たちもやって来ては周りを囲んでるもんね。
俺の異世界生活もここまでか。
でも出来れば首都の牢屋じゃなく、家に近いミスニーハにある牢屋にしてもらえると助かります。
あっ。テトラさんもう目の前だ。寧ろ死んだ。
「お前、先程会ったな。名は、アオキと申すと言っていたが」
「はい」
「メアリーはお前をダイゴと言っていたようだが?」
「め、メアリー…さん、ですか? メアの間違いじゃ…なんて」
「メアは冒険者稼業の時に使う仮の名だ。本名はメアリー。可愛い可愛い我が娘だ」
「えっ…。メアがメアリーって…まさか?」
チラリとクリスさんの方を見る。
すると立場の違いからか、ばつが悪いからかふいっと視線を逸らされてしまった。俺は見捨てられたんだ。
なら俺の大切な仲間であるちっぱいガールズは? と見る。
「ほぇ~」
マールちゃん可愛くほぇ~しとる。
マールちゃんも初めて気付いたんだね。お揃いだねマールちゃん。
「てかダイゴ、メアちゃんがメアリー王女って知らなかったの?」
「えっ。ヴィヴィ知ってたの?」
「うん。メアちゃんからは内緒にしてって言われてるけど声とか見た目でバレバレだし他の冒険者も気付いてないフリしてるだけだと思ってたよ。気付かれてないって思ってるのメアちゃんくらいじゃないかな」
そうなの? とスズランの方をチラリと見るとスズランも小さく頷いた。マジで気付いてないフリしてた。
「待て待て待て。ちょっと待って。メアがメアリー王女で、この…テトラさん? がメアの父って事はもしかして」
「なにダイゴ。王様の顔も知らなかったの?」
「王…様?」
「如何にも、私がフェリエ王国現国王のテトラ=フェリエだ」
顎外れるレベルでポッカーンしています。
そう言えば城に来る途中にこの人そっくりの銅像があったような!
だからメアから貰った紋章ピンが通行手形の代わりって。メアは冒険者稼業は本業ではなく、本業は城でやっているって! 謎は全て解けた!
「してダイゴよ」
「は、はひ」
「やはりダイゴという名か」
「…」
ふぇぇぇ…。テトラさん怖いよぉ…。そして詰んだよぉ…。
「た、確かに私の名は大吾。青木大吾と申しますが、そのメア…リー王女とはお父様が思ってらっしゃるような関係では無くてですね」
「誰がお父様だ、あ?」
「すみません」
このやり取りシルバさんの時もやったような気がする。
可愛い愛娘がどこの馬の骨とも分からない男にいいようにされてたらそれはピキピキしますよね。敵意剥き出しですよね。
メアリー王女が周辺の領主へ近況報告へ自ら伺う事が出来るのも可愛い娘の頼みだから断れないんだものね。
「メアリーから話は聞いている。最近仲間になった三つ輪のクローバーというクランのメンバーたちは皆いい人で優しいと」
活路! これは蜘蛛の糸! これを逃す術は
「だが同時にダイゴという男の話もよく耳にする。それはもう楽しそうに話す」
切れてた。蜘蛛の糸切れてた。上げてから落とすなんて酷い。
「今日はそのダイゴを入れたクランメンバーと食事をする事になっていたが、勇者召喚の一件で流れてしまった。色々聞きたい事があったのに残念だと思っていたが、その必要もなくなったな」
「えっ、と」
「メアのこの有様を見ろ。まだ嫁入り前の娘にこのような辱め。そして私は一国の王。私が法。周囲には我が国の騎士たち。言いたい事は分かるな?」
「わかりましゅ」
「だが私とて鬼ではない。メアリーがお前たちの事を楽しそうに話す顔に免じて罪を軽くしてやろう」
「お心遣い感謝申し上げます」
「去勢だ。息子に別れの言葉を残してやれ」
「娘にさせてごめんな」
「歯ァ食いしばれ!」
オワタ。
と思った瞬間、奇跡が起こった。天使が現れたのだ。
「めっ!」
テテーンっと俺の目の前に大の字でちょこんと立ったのはシオン。
シオンは小さい体を少しでも大きく見せようとプルプル背伸びをしながら俺の事を守るように両手を広げてぷんすか怒ってくれています。
何て可愛い子。後で高い高いしてあげようね。
「むっ。なんだこの」
「ぱぱいじめちゃ、めっ!」
「ぱ…?」
「ぱぱもままいじめちゃ、めっ!」
「シオッ…!」
守ってくれたはずのシオンがさらに弩デカい爆弾投下しちゃった。
それ今ここで一番言っちゃダメなやつだぞマジで。
「ママ…とは?」
「ままー♡」
テトラさんに聞かれシオンはメアを指してえへーと答える。
あーあーあー。
もうどうにでもなーれ。
だが審判の時はなかなか訪れない。
俺はチラリと薄目でテトラさんを見ると、白目剥いて気絶していた。これもシルバさんと同じだった。
―――
「改めましてメアリー=ガーネット=フェリエと申します。ダイゴ様、マール様、ヴィヴィ様、スズラン様この度はご迷惑をお掛けし誠に申し訳ありませんでした」
シオンを抱っこしながら純白のドレスを纏った超絶ちっぱい美女がペコリと頭を下げる。
メアリーと名乗ったちっぱい美女は俺が以前会ったちっぱい宿娘であり、ちっぱい冒険者であるメアリーンさんその人だった。
「メア…あ、えっとメアリー様。何故偽名を使って冒険者稼業をなさっているんですか?」
「やめてくださいダイゴ様! 私の事は今まで通りメアとお呼びください!」
「で、ですが一国の第一王女に対しそんな口の利き方をするわけには」
「私は全然構いません。もしその事で何か言う輩がいるのでしたら私に仰ってください。断ち斬ります」
シュッと手刀を作るメア。いやメアリー王女。これは間違いなくテトラさんの娘だと思った瞬間だった。
ちなみにそのテトラさんは現在自室のベッドで唸っているとか。
俺たちは今、城の食堂へ通されているのだが一刻も早く帰りたい。
「皆さまもどうか今まで通り接していただけると」
そう言ってもう一度頭を下げるメアリー王女。
「わかったよ、メア」
「あっ」
メアと言われてパァァと笑顔になるメアリー王女。
その笑顔を見て俺は心に深刻なダメージを受けた。
そう。
以前シルヴェストリの甘味処で測ったメアリー王女のちっぱいレベルは99。大天使マールちゃんと同じ数値だ。つまり俺の好みど真ん中の女の子。正直たまらん。
「ぐさ」
お目目ざっくりクリティカル。眼球が数センチ陥没した。
「ぐぉぉぉぉ…」
「ふぅ。ところでめあ。この際だから言っておくけど、ギルドの人、いえミスニーハの街の人全てあなたがメアリー王女だって知っているわよ」
「えっ」
「そうだよメアちゃん。だってメアちゃんフルメイルから髪の毛出てるし声もそのままだし、もう皆メアちゃん=メアリー王女って事は黙っておこうっていう暗黙の了解が出来てるくらいだよ」
「ま、まさか…。こんな完璧な変装を見破られていただなんて…」
いや、メアもヴィヴィもスズランも普通に会話続けてるけど俺今めっちゃ目痛いんですけど。
激痛が来る少し前に見えたスズランの指がその正体なのだろうけどさ。ちょっとは構ってくると嬉しいな、なんて。
いつもは慰めてくれるマールちゃんも今は期待出来ない。それはもちろん。
「ふ、ふふふふまぁ~~~♡♡♡」
ディラゴォンの肉を頬張って可愛いお顔とろっとろにしてるからね。馬鹿みてぇに可愛いな、おい。
マールちゃんは食事中は食事に集中するから会話に入ってこないもんね。こんな豪華なメニューの時なら尚更ね。しょうがないね。
しかしこんな料理食って明日からの食事に落差で落ち込まないだろうか?
いや、大丈夫か。何でも美味しく食べるマールちゃんだもんね。心配はないだろう。
「ふふっ。マールさんは本当に美味しそうに食事されるのね。見ていてこちらも幸せになるわ」
そう言うのはメアをそのままもっと大人にしたような美女のガーネット王妃。つまりメアの母。ちっぱいレベルは91。19の子を持つ人妻でありながらこの数値。何かに目覚めそう。
「お母様、お父様の傍にいて差し上げた方が」
「あら、いいのよ。あの人も少しはいい薬になったでしょう」
「あ、あはは…」
「ままのままー?」
「あらあら。何て可愛い子なの。確かに髪の毛がメアリーにそっくりね」
ハテ? するシオン可愛い。けどまた爆弾投下するのはやめてね? パパが死んじゃってもいいの?
そんな可愛いシオンを抱っこするガーネット王妃は母性も更にプラスされ究極的なちっぱい王妃となった。
これがバブみというやつか…。胸の有る無しではない。男はいつの時代もバブみを求めているという先代からの教えは真であった。って。
「あっあのですね。シオンは確かにメアに似ておりますが」
「ふふっ。存じてますよダイゴさん。ランプの幼精なのでしょう? 絆のアーティファクトの件、お見事でした」
「知ってたんですか?」
「メアリーから何度も聞かされておりますので」
「お、お母様! 恥ずかしいのでやめて下さい!」
カァァと顔真っ赤になるメア可愛い。
ってガーネットさんが知ってるって事はテトラさんも知ってるって事なのに何故白目剥いて倒れたりしたのだろう?
「あの人はダイゴさんの話になると頭に血が昇って話を聞いていませんから。これで少し大人になってくれれば良いのですけど」
困ったものね、と。
いや多分あの溺愛っぷりからするともう2、3回倒れないとシオンちゃん直視出来ないですよ。マジでそのうち去勢されそう。
「そうそう。ダイゴさん。私から一つお願いがあるのですが、宜しいでしょうか?」
ハテ? する王妃。致命傷で済んだ。危なかった。
「何でしょうか? メアの事もありますし、私に出来る事なら何でもやる所存です」
「そんな大層な事ではないのですが、二日後、人族の王つまりテトラ様と魔族の王シルバ様との会合があるのです。そこへご一緒してはいただけませんか?」
「…」
…。
…。
…ふっ。
う そ つ き !
全然大層な事じゃないですか! ちょっとでも期待した俺の安堵の気持ちを返して下さい!
「やはりいけませんか?」
「し、失礼を承知で申し上げますと私には少々荷が重いと言いますか、既にシルバさんからもお誘いされていると言いますか」
「まぁ! さすがシルバ様ですね! ダイゴさんの事を見抜いておられるなんて」
「え? 俺?」
つい素で答えてしまうほどの疑問。何がなんですって?
「今、人族と魔族は停戦関係にありますがそれは互いの王、テトラ様シルバ様のお力あってこそ。しかし次の代になるとそれもどうなるかわかりません。国の為と力を行使する過激派思想の者が次期王になるかもしれません。それは魔族も同じはず」
そう言ってガーネットさんはヴィヴィをじっと見る。
あれ。ヴィヴィが魔族だって事は俺たちしか知らないはず。メアだって知らないのに何故この人は。
「なので人族の生の声として会合に参加していただきたいのです。王の声が一番である国は統一は取れても幸せにはなれません。国民あっての国、王なのですから。私が見るにダイゴさんは人や魔など分け隔てなく接する優しい心を持ったお方。人族にはこのようなお人がいるのだとシルバ様に見ていただきたいのです」
もしかしたらシルバ様も同じことをお考えになっているかもしれませんが、と。
そう言うガーネットさんはやはり王妃だった。
メアもこんな人が母だからこそ国を守る騎士になろうと思って冒険者をしているのかもしれない。手癖が悪いのは父親譲り感はあるけど。
「それにダイゴさんもあの人に弁解するチャンスが欲しいでしょう? このまま何もなく帰ってしまっては国中に指名手配されそうですから」
「そのお話、受けさせてもらいます」
俺は屈した。
テトラさんならマジでやりかねないからだ。
ただただちっぱい可愛い! って言うしか能がない俺ではこの人には絶対に敵いっこないと思った瞬間だった。
俺は色々諦めて目の前のディラゴォンの肉に手を付ける。
ヴィヴィが言うには最上級で、マールを見ても最上級の肉なのだろうが正直味があまり分からなかった。
そんなこんなでこの日の食事会は終了し、二日後また王都での会合へ人族と魔族の庶民代表として同席する事になったのだった。
ちなみに城を出る時にクリスさんから「勇者の姿はありませんでした。恐らく他の騎士に紛れて逃げたのだと」って話を聞いた。
あかりは変身スキルが使えるから騎士を隠すなら騎士の中作戦で逃げたのかもしれない。
だが俺はテトラさんの時、クリスさんに見捨てられた経緯があるのでちょっとだけいじけてた。
次回は恐らく幕間劇になると思います
どうしても書きたい話があるのです
幕間劇なので物語本編にはあまり関係ありません
ただただちっぱい可愛いっていう話になる予定です