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大吾と勇者④

●前回のあらすじ●

大吾さんのヴィヴィを想う気持ちはメアでも断ち切れなかった。




 あたしたち豹人族は人族からは魔族と呼ばれている種族。

 詳しくは知らないけど、昔おばあちゃんから聞いた話によると今いる生き物全ては進化して現在の姿になったんだって。

 あたしの祖先は豹。

 そして長い年月をかけて進化し、豹人族となった。

 豹人族の他にも鳥人族、狼人族、魚人族とか色々いるけど人族はそれら全てを総称して魔族と呼んでる。

 でもまだ幼かったあたしはおばあちゃんに聞いたんだ。

 人も猿から進化した猿人族なのに何で魔族じゃないの? と。

 そうしたらあばあちゃんはいつもの笑顔を絶やさずこう言った。

 人はね、自分と違うものを極端に嫌うのさ。でもねヴィヴィ。あんたは違う。どんな相手でも優しくありな。もうすぐお姉ちゃんになるんだから、妹たちのお手本にならないとね。と。

 そう言ってあたしの頭を撫でる手は優しさに満ちていて、今でもその感覚と匂いを覚えている。

 その手と匂いがあたしは大好きで、だからあんな約束をしたんだ。

「大丈夫だよおばあちゃん! あたしが魔族の良さを知ってくれる人とケッコンすれば人だって魔族だってもっと仲良くなれるよ!」

 まだまだちんちくりんな幼女からそんな言葉が出てきたものだから、おばあちゃんに大笑いされたっけ。

 おばあちゃんはヴィヴィの良いところを見てくれる人も必ずいるよって応援してくれたけど、お父さんとか他の皆からはそんなのは夢物語だって何度も言われた。

 現にあたしも地元を離れて人間領のミスニーハに来た時は人と魔族には隔たりがあるって思ったのが正直な感想。

 でもね、みんな。

 やっぱりおばあちゃんの言ってた事の方が正しかったよ。

 今のあたしに力を貸してくれる人は、こんなにも熱い想いをぶつけて来てくれる人だから。




  ―――




 パキィンッ! とメアのサンダルフォンをヴィヴィが蹴り弾く。

 全てのものを切断するメアのスキルに負けない俺がヴィヴィを想うバインドのスキル。

 バインドの拘束力は想いの力に比例する。

 これで一気に形勢逆転だ。

 相手の攻撃を完全回避できる素早さを持つヴィヴィに、絶対防御を突破出来る力が付いた。

 これでヴィヴィがメアを止めてくれている間に俺が勇者あかりを討つ。

「……ヴィヴィ? 大丈夫か?」

 …と思ったんだけど、何やらヴィヴィの様子がおかしい。

 顔は真っ赤だし、汗ばんでるし、何か異常があったのだろうか。

「はっ!? も、もしかして斬られたのか? ちょっと見せてみろ!」

 完全に防いだもんだと思っていたが、メアも最高ランクの魔剣士だ。切断までは行かずとも傷を負わせるくらいは出来たのかもしれない。

 俺はヴィヴィの足を、ヴィヴィの褐色で健康的な足を手に取った。大事な事だった。

「ちょちょちょ! だいじょうぶ! 大丈夫だってば!」

「大丈夫なの? だってほら、なんか顔赤いし汗かいてるし」

「いや、ダイゴが巻いてくれたこの包帯? っぽいのがさ、なんか凄く熱くて」

「え」

「いやいや! でもね! 嫌な熱さじゃないよ? むしろ温かいって言うか、温かさ通り越して熱すぎって言うか。でも、なんか、力が出るよ」

 顔真っ赤でオロオロ後のニッコリスマイルにより俺の心はオーバーヒートした。可愛さは地球の内核並みの熱さだった。

「んあああああっ!!! 熱いってばダイゴ! 抑えて抑えて!」

「ふむ。想いが強すぎるのも考えものと言うわけか」

「はぁ、はぁ…。こんな熱いんだね、ダイゴの」

 ※想いの話です。

 そして熱いのはヴィヴィが巻いているバインドスキルの包帯が、です。

 とりあえず息切れヴィヴィちゃんちょっと色っぽくてエッチだ…はっ!? こ、この視線はっ!

「ふーん。へー。ほー。わたしにバッドステータス付与して大吾さんはヴィヴィさんにエッチな事をしたんですか。なるほどー」

 アカーン!

 何かマールちゃんがえらい不機嫌だ。

 ここはすかさずフォローしとかないと嫌われちゃったら俺が死ぬ。

「大丈夫だよマールちゃん。マールちゃんにも帰ったらやってあげようね」

「あ、いえ。結界張ります」

「ひどい対応!」

 マールちゃんは俺の扱いに慣れて来てる感があります。

 飴と鞭を使い分けるからね。

 お陰でたまに、ごくたまーにくる飴ちゃんくれるマールちゃんに俺が何度ココロブレイクされたことか。

「でもマール。それが正解なのかもしれない。もしこの緊急事態じゃない余裕がある時間帯で俺がマールにバインドをしてみろ。どうなると思う?」

「ど、どうなるんですか?」

「俺が辛抱たまらなくなってバインドで汗をかいたマールちゃんの全身を舐めまわす」

「ひっ」

「ヴィヴィは褐色が映える白い包帯がベストだと思ったけど、マールちゃんは真っ赤なリボンなんてどうかな。きっと白い肌に合って映えると思うんだ」

「あわわわわ…」

 ヒシッとシオンを抱いてガタガタ震えだすマールちゃん。

 俺もマールの扱いに慣れてきた感がある。お互いに慣れ合ってお揃いだねマールちゃん。

 あとマールちゃんのちっぱいにほっぺ埋めてるシオン可愛い。

 ちなみにスズランはメジャーかな。成長期を過ぎたであろうスズランの体を調べるのはちっぱいの神の義務だからね。

 っとこんな話ばかりしていられない。

 今は目の前のメア。そしてあかりをどうにかしないと!

「ヴィヴィ。メアは任せた! 俺はあいつを」

「あっ! ダメだよダイゴ!」

 勝機! と思って突っ込んだが実は罠でした、なんてのはバトルもののあるあるで今回も例に漏れず俺は罠に突っ込んでいった。

 その罠はメアの魔剣サンダルフォン。

 またまた忘れていたけど、メアは剣士ではなく魔剣士。

 原理は分からないがメアの気とか魔力とかで創られる巨大な魔剣は、覇気を持つヴィヴィには打ち消されてしまい無力となるが俺には全然効果は抜群だ。

「ハッ!」

 パァンッ! と魔剣が消滅する。

 ヴィヴィが覇気を使ってくれたのだ。

 この短い間で俺は二度もヴィヴィに命を救われた。

 改めてSランク、AランクとDランクの力量差を痛感した瞬間だった。

「す、すまんヴィヴィ。助かった」

「あたしから離れないで、ダイゴ。それに後ろにはマールちゃん達がいるの。ここを動かない方がいいよ」

 そうだ。

 目の前の敵ばかりに集中してしまっていたが、俺たちの後ろにはマール達がいる。

 メアの切断スキルを防げるのは今のところヴィヴィだけだ。

 もし攻撃対象が俺とマール両方になった場合どうする事も出来ない。

 マールの聖域(サンクチュアリ)だって魔法スキル無効のメアには通じないだろうし、結界ごとぶった斬ってくるかもしれない。改めて自分の軽率な行動を猛省した。

「ふー。一瞬ヒヤッとしたけどこっちの優位は変わらないみたいね! 強くておっぱい大きいなんてさすが騎士さんね!」

 乳のデカさ関係ないやろ! と突っ込みたかったがここでまた暴走したらヴィヴィに迷惑をかけてしまう。

 あのロリ事あるごとにメアのたわわに実ったお胸様を誉めやがって。

 それなら俺だってマールやヴィヴィのちっぱいを誉め称えるよ。讃頌するよ。ちっぱい讃頌するよ。

「…あはは」

「え?」

 何かヴィヴィちゃん急に笑いだした。どうしちゃったの。ちっぱい讃頌がツボったのかな?

「うん。メアちゃんには悪いけど…状況が状況だしね。うん。しょうがないか」

 腕を組んで難しい顔(可愛い)してうんうん頷いている。

「メアちゃんに怒られたら後で一緒に謝ってね? ダイゴ」

「え? まぁ、こんな状況だし…多少の事なら謝れば許してくれると思うけど…」

 ハテ? する俺。

 一体なにをするというのだろう。

「実はメアちゃんには弱点があるんだ」

「なん…だと…?」

 どうして早くそれを言わないのヴィヴィちゃん。

 勿体ぶって倒せるのに倒さなかったら敵がパワーアップしてボコボコにされたエリート王子みたいじゃないか。

「メアちゃんの着てる鎧はアレキサンドライトスピネルで造られているって話は前にもさっきもしたよね?」

「あ、あぁ。加工が難しいからメアくらいしか防具には使ってないとかなんとか」

「防具に不向きなのは加工の難しさもあるんだけど他にも理由があってね? 実はアレキサンドライトスピネルって鉱石はめっちゃくちゃ重いんだ」

「え?」

「だから着てると凄い汗をかくし普通の人じゃまともに動けないの。着てるだけで体力持っていかれるし蒸すから暑いしで」

「でもメアは何ともなさそう…。やっぱ凄腕冒険者だから?」

「凄腕って言ったってメアちゃんも女の子だよ? スキルとか色々あるかもだけど力とか体力なら男の方が上でしょ?」

「まぁ確かに」

「じゃあ何でメアちゃんが鎧を着続けられているかと言うとっ!」

 そう言ってヴィヴィはメアに向かってハイキックを仕掛けた。

 メアはサンダルフォンで受けはするが、今までのジャブではなく強烈な右ストレートの威力である打ち抜くハイキックにメアは受けきれず体勢を崩した。

 そこへ更に追撃のハイキック。

 狙いは、メアのたわわに実ったお胸様だった。


 ベキャンッ!


 と凄まじい音をたてるヴィヴィのキック力すげぇ。と、俺は思うには至らなかった。

 何故ならヴィヴィのキックでメアのお胸様が吹っ飛んだから。正確にはお胸様の鎧が吹っ飛んだんだが、その奥にいらっしゃるはずのたわわに実ったお胸様が見当たらなかった。

 もしかしてあまりの衝撃にお胸様ごと蹴り飛ばしてしまったのでは?

 あわわわわ…いくら謝れば許してくれるって言っても胸蹴り飛ばしたなんて言ったら流石のメアでも怒るんじゃないだろうか? って、ん?

 ここで俺はある事に気付く。

「そう。気付いたみたいだね、ダイゴ。メアちゃんの胸の鎧。これは胸当ての役目もあるけど本当の目的はこれ」

 蹴り飛ばされて芝生の上に転がった胸当て部分には赤と青に光っている石のようなものが左右分かれて仕込まれていた。

「この赤い魔石が筋力増強の魔石。こっちの青い魔石が冷却能力がある魔石」

 どこかで見た事あると思ったら、以前シルヴェストリの街で特産品のプリーンをお土産にした時に使った冷却の魔石だ。

 それが何故こんなところに?

 メアちゃんまさか戦いの最中にプリーン食ってたの? フルもっふ族なの?

「アレキサンドライトスピネルは鉱石自体にアンチマジック効果があるだけで周囲には何の影響もないの。だからメアちゃんはこの胸当て部分に力と冷却の魔石を仕込んで鎧のデメリットを無くしていたんだよ」

 つまり鎧を通してではなく、鎧の中で自分自身にバフを張り能力を上昇させて鎧を着こなしていたと言うわけか。

 何とも回りくどい事だがそれ以上に魔法無効の恩恵がメアは欲しかったのだろう。

 完全切断のスキルを持つ物理攻撃に関しては鉄壁防御を持つメアなら尚更。

 しかしその絶対防御も大ダメージを受けないという条件付きだ。今のヴィヴィには通用しない。

 メアの切断する防御も、ヴィヴィの足に巻かれた俺のバインド能力で無効化してしまっているから。

 そんなメアは自身のバフが剥がされてその鎧の重さに耐えられないのかとうとう膝をついて崩れてしまった。が、今はそんな事よりも。

「ヴィヴィ」

「うん。分かってる。動けなくてもメアちゃんは魔剣が創れるからね。油断は禁も」


「メアって…、ちっぱいなんだな」


「そこ!!???」

 俺がさっきから気になっていたのは魔石でも胸当てでも何でもねぇ。

 ぽっかり空いた胸部の奥の、黒のぴっちぴちスーツに覆われている可愛らしいちっぱいお胸様だった。俺は反射的に拝んだのだった。




なんとメアはちっぱいでした驚き。

次回はつまり、そういう事ですわ。

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