表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/67

大吾と勇者②

●前回のあらすじ●

大吾さんは小学生女子に防犯ブザーを鳴らされた。




 ケイの一件以降、常日頃から考えていた。

 もしも俺の大好きなちっぱい女子が敵として現れた場合の対処方法。

 チハの場合は武闘家だった事と、そもそもがあまり交流がなかったためにそこまで恐怖と言うか後ろめたいものと言うかそういうのは少なかったけど、今回はそれが段違いである。

 相手が俺のちっぱい天使マールちゃんだからである。

 マールと言えば聖属性の魔法使いで可愛くて、ここぞという時に覚醒して可愛くて、美味しいもの食べる時はほっぺパンパンフルもっふ族可愛くて、そして何よりちっぱい可愛い子。

 そんな化け物クラスの可愛さの子を相手にするとか無理ゲーもいいところだし、まず第一にマールちゃんに手を出す事が出来ない。

 これは今マールに張られている聖域(サンクチュアリ)の結界云々ではなく、俺個人としてちっぱい女子に対して攻撃する事が出来ないし、そもそもそんなつもりも微塵もない。

 俺のスキル『運命の輪(ホイール・オブ・フォーチュン)』発動中であれば状態異常無効効果がマールに付与されて洗脳される事もなかったかもしれないが、もう後の祭りだ。

 なので常日頃から、もし味方がやむを得ない理由で敵対した時の対処法を考えていた。

 その対処法その一、マールの場合はと言うと。

「マールちゃん。美味しいだんだん焼き買ってあげるからこっちに帰っておいで」

「…」

「なに? 一個じゃダメだって? 知ってるよ。じゃあ特別にレモンヌ串も付けちゃおうかな」

「…」

「よし。鶏肉セットでつくね串もサービスしちゃおう。マールちゃんだけ特別だよ」

「…」

「こうなってくると炭水化物が足りなくなっちゃうね。わかったよ。たこ焼き串とお好み焼き串も一緒にどうぞ。これでお値段たったの1パルフェ(1000円)なんだから嬉しいよね」

「…」

「…えっと」

 説 得 失 敗 。

 最初から無理な話でした。

 薄々勘付いてはいたけど、俺マールに結界張られたら何も出来なくね? 優しく話かけるだけしか出来なくね?

 俺のちっぱいの神スキルでマールにステータスを移す事も出来るけど、その条件はマールに触れないといけないし近付けないんじゃどうする事も出来ない。

 マールちゃんをこんな鉄壁な盾にするとはこのあかりってロリなかなかやりやがる…! 恐怖の追い拳骨しようにも結界の中に入ってるから手も出せねぇ。

「あははっ! 私の『女尊男卑(おまわりさんこいつです)』にかかってる間はアンタの声なんて届かないんだよーっ! やーいやーい! ここまでおいでー!」

 こ、こここの…っ! ロリガキ…ッ!

 もしこの戦いに勝てたらそのまだちょっと涙が残ってる顔を更に涙でぐっちゃぐちゃにしてやろう(ゲス顔)。

 俺はちっぱい女子に対してのみ優しく触れる事しか出来ないだけで、ロリでちっぱい認定しない相手なら何でも出来るんだ。何でもな(ドゲス顔)。

 しかしこれまたとんでもないチートスキル持ちが出て来やがったな。

 男女平等とか偽善を謳っている現代社会において男がマウントを取られる女性専用車両、女の涙と合わせて三種の神器のうちの一つである防犯ブザーでの洗脳。

 そのブザーを聞いた第三者は誰もが鳴らされた相手を悪と見るほど現代でも洗脳じみた代物である。

 洗脳系の能力者との戦闘はバトル漫画ではお約束になっているが、今回も例に漏れず味方を盾にされる展開である。

 幸いな事に洗脳系能力者あるあるの本人自体の戦闘力は高くなさそうだし、マールも俺に対して有効打があるわけではな

「おねーさん♪ アイツの事、大っ嫌いって言ってみて?」

「大吾さんなんて大っ嫌いです」

「かひゅっ…!」

 その一言で俺は即死した。余命24年と異世界暮らし数か月の短い人生だった。

 日本で暮らした24年も悪くはなかったけど、マールちゃんと出会い、異世界へ転移し、ヴィヴィやスズラン、メアやシオン、バニラ、オリオンさん一家にナンシーさん一家、色々な人たちと笑い合った日々が走馬灯のように頭をよぎった。

 前にもしこの異世界で死んだらどうなるのかとマールに聞いた事があった。

 その答えは確か『寿命を全うするまでまた別の世界に再転移するか最悪天国行き』だったかな。

 俺はどうなるのだろう。

 俺はこの世界が好きだ。

 正確に言えばマールたち可愛いちっぱいガールズがたくさんいるこの世界が好きだ。

 もっと…、もっと…そんな世界で生きたかっ、た。



 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンッ!!!!!



 …えっ?

 俺の願いが届いたのか空から女の子が降って来た。

 まさか死の間際に現れる死神ってわけではないだろう。

 だってこの女の子は銀髪で褐色肌でスレンダーで、そして何より――ちっぱい可愛いヴィヴィみたいな子だったから。

「ダイゴ! 大丈夫?」

「ヴィヴィ…?」

「ほっ…。何とか生きてるね」

 倒れてる俺の頭をヴィヴィは優しく抱き起してくれた。頬に当たるちっぱいの感触は低反発でたまりません。

 その為マールに即死させられ飛び出た俺の魂も体に戻り、意識を取り戻す事が出来た。

「ヴィヴィ、どうしてここに? メアたちと勇者の様子を見に行ってたんじゃ…?」

「うん。皆で勇者が召喚されたっていう廃教会に行ってみたんだけど、そこで皆あの子のスキルに中てられて正気を失っちゃったんだ」

「マジか。でもどうしてヴィヴィだけ…あっ」

 そうだ。

 ヴィヴィには状態異常・デバフ効果無効の個人スキルがある。

 だからあかりの洗脳スキルも無効化出来たってわけか。やっぱりチートキャラなヴィヴィちゃんなのだった。

「本当はすぐにお城に戻りたかったけど」

 と言いかけてヴィヴィはチラリと通路の方へと目線を向けるとそこにはメアが立っていた。

「クリスさんとスズランちゃんだけなら何とかなったと思うけど、メアちゃんがいるからなかなかそうもいかなくて」

「Sランクのメアを相手にしてたのか」

 しかも見る限りどこにも怪我や汚れなく無傷な状態。

 そう言えば前にも一度手合わせした時はお互い一発も入れる事が出来なかったって言ってたような気がする。

 改めてヴィヴィが凄腕冒険者だと実感した瞬間だった。

「でもおかしいんだよね。メアちゃんの鎧は魔法とかスキルとかを無効にするアレキサンドライト・スピネル製なのにさ」

「確かに魔法スキル無効のメアが洗脳スキルにかかるのはおかしい、が」

 相手はこの異世界ではイレギュラーなチート転移者だ。

 それにもしかすると【音】系のスキルは無効に出来ないのかもしれない。

「ちぇっ。またアンタ私の邪魔するの? いい加減しつこいんですけどー」

「ねぇダイゴ。あたしも妹がいるからさ、小さい子には寛容であろうと思ったり、可愛く見えたりするんだけど」

「皆まで言わないでもわかってる。俺も結構キテる」

「気が合うね。じゃあそろそろお仕置きタイムといきますか」

 二ッと笑うヴィヴィ。可愛さはチート。

 っと冗談言ってる場合じゃねぇ。状況を整理しよう。

 相手の周りにはマールとシオン、バニラと今合流したメア。

 圧倒的不利な状況っぽいけどヴィヴィが傍にいるだけで何ともない安心感が生まれる。

 どこまでも頼りになるちっぱい魔王であった。

「ダイゴ。マールちゃんをお願い出来ないかな。ダイゴとメアちゃんじゃ相性が悪すぎるんだ」

 確かにメアの切断スキル。

 対象を例外なく断ち切る事が出来るスキルを前にしたら俺なんか秒で三枚おろしにされる。

 どこまでも役立たずな俺であった。

「すまん。今の俺じゃマールに近づくことさえ出来ないんだ。マールの聖域(サンクチュアリ)の中に入れさえすれば」

「じゃああたしがマールちゃんの結界破ってくるよ。その隙にダイゴはマールちゃんを」

「えっ。破るって」

 どうやって、と聞こうとしたが既にヴィヴィは走りだしていた。

 めちゃくちゃはえぇ。

 俺が何度も背後を取られたのも頷ける。

 こうしてはいられない、と俺も走り出す。

 ヴィヴィの計画の足手まといになりたくないから。

「ハッ!」

 ドッっと気を放つヴィヴィ。

 ヴィヴィの個人スキル『覇気』。対象の魔法、スキルを無効にすることが出来る。

 これを受けてマールの聖域(サンクチュアリ)は消滅した。

 そしてこの覇気発動でうれしい誤算。

「…ふぁれ? 大吾さん? ヴィヴィさん?」

「ぱぱぁー?」

「へふっ」

 あかりの洗脳スキルも解除され、マールたちが正気を取り戻す事が出来た。が。

「止まらないでダイゴ! 早くマールちゃんを!」

 そうだ。洗脳を解除しただけでまたスキル発動のベルを鳴らされたらふりだしに戻ってしまう。

 それに――


 ガキィンッ!!!


 とメアのサンダルフォンをヴィヴィがハイキックで弾いた。

「やっぱメアちゃんは戻らない…! さっきも試したけどダメだったんだよね」

 さっきと言うのは廃教会へ行った時の事を言っているのだろう。

 一緒に行ったはずのクリスさんやスズランの姿が見えないと思っていたが、ヴィヴィの覇気で洗脳を解除されて今現在は城に向かっているのかもしれない。

 クリスさんだけならまだしも戦闘向きじゃない上に体力がないスズランの護衛も兼ねているから遅れているのだろう。

「まーたそうやって邪魔するんだから! せっかく魔族を倒しに行く仲間集めてるんだから邪魔しないでってば!」

 そう言ってあかりはまた防犯ブザーに手をかける。

 しかしもう二度とマールちゃんを洗脳させたりはしない。

 俺のスキル『運命の輪(ホイール・オブ・フォーチュン)』でマールと繋がり状態異常無効を付与した。発動にはマールちゃんのぷにぷにほっぺをぷにぷにした。

「…あれ? 私の能力が効かなくなってる? まぁでもいいや。おねーさんよりこっちの騎士さんの方が強そうだもんね!」

「むぅ…」

 確かにマールとシオン、バニラを覇気で解放したと言っても相手にはまだメアがいる。

 【音】系のスキルではないにしろ実体のない【気】のスキルなのでワンチャンあると思ったけどどうやら効果はないらしい。

 しかしこれで状況は好転した。

 メアの相手をヴィヴィがしているうちに俺があのロリをどうにかすれば…!


「うぅーん。メアちゃん相手はやっぱキツイなぁ」


 え?

「ヴィヴィ?」

 さっきに比べたら状況はよくなったはずなのにヴィヴィは浮かない表情を作る。

 そう言えばメアの斬撃をヴィヴィはどうやって弾いたのだろう。

 メアの切断スキルは触れるもの全てを断ち切る。

 切っ先や剣の腹、その気になれば爪や髪の毛でさえ関係なしに例外なく全て。

 では何故ヴィヴィはその斬撃を弾くことが出来たのか。

 答えはヴィヴィの傍に落ちているヴィヴィの靴にあった。

「メアちゃん相手に素手や生身じゃ無理だね。オリハルコンが仕込んであるあたしの靴でさえこの有様だし」

 そう。

 弾きはしたが同時に斬られてもいたのだ。

 話を聞く限りヴィヴィの靴はオリハルコン入りの攻防に優れたスニーカーらしいが、その硬度でさえメアの前では紙切れと一緒である。

 そこで俺はようやくヴィヴィとメアがお互いに一撃も入れる事が出来ない理由を知った。

 ヴィヴィはその回避性能の高さから、そしてメアにはそもそも物理攻撃が不可能な程切断スキルを極めた防御があったからなのだと。




慣れない戦闘シーンにオロオロしてるでござる。

次回も双壁の戦乙女のバトルが見れたり見れなかったりする予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ