大吾とパパーズ⑤
●前回のあらすじ●
背中に当たるヴィヴィのちっぱいから熱が伝わった。
突然だけど、皆は運命って信じるかな。
運命って言っても様々だけど人の出会いの運命ね。
遅刻しそうなトースト齧った美少女転校生に道角で頭ゴッチンからの教室で再会だったり、突如海外から転校してきた超絶美少女帰国子女が実は幼馴染でした的なのは物語でもよくある話だよね。
俺もその手の話は好きなんだけど、所詮は漫画やアニメの中だけの話だと割り切る脳も持っているしそんな出来事に夢見る歳でもなくなったわけだ。
しかもこれはあくまでも恋愛に繋がりそうな出会いだからいいよ?
運命の出会いって聞けば九分九厘の人が恋愛関係だと思うからさ。
でもそうじゃない運命の出会いもあるわけで、例えば夜道で目の前に包丁持った変質者と対峙してそこで命を落とす運命ならそれも運命の出会いと言うわけです。
平和な日本でさえ毎日のように事件のニュースがあるし、モンスターが蔓延る異世界では危険な運命の出会いが山のようにあるだろう。
さて。
そろそろ俺が何故このような話をしているのは説明しようかな。
ついさっきまでマールたちと一緒にいた俺だったけど、メアとクリスさんが勇者召喚をした過激派組織の様子を確認しに行くというので同行する事になったんだけど、ちょっと尿意を催してしまったので雉を射ちにトイレに入ってるのね?
で、小便器に向かって滅びのバースト・ストリームを放っていると個室のドアが開いたんです。
きっと誰かがお花を摘んで出てきたんだなぁと思ったのも束の間、その人が俺の横に立ってジロジロ見てくるんですよ。
もしかしてそっち系のクラン『かいならや』系の人なのかと思ったけど、その人俺のホワイトドラゴンじゃなくて顔を見てくるのね?
さすがに気まずくなって話しかけようと顔を向けたらその人めっちゃ偉いんだって一目でわかる程の衣装を召されているの。そう。例えるなら王様、みたいな?
確かにここは王都で、しかも城だし王様がいてもおかしくないけどメアが案内してくれた一般用であろうトイレに王様がいるわけないし、でも城にいるという事は王族の誰かなのかもしれないしでとにかく俺は混乱していたんだ。
「見慣れない格好をした青年だ」
2メートルはありそうな背丈に服の上からでもわかる鍛えに鍛えぬいたバッキバキの逆三角の上半身をしたその仮王(仮名)のおじさんは実に渋い声です。
ミスニーハの街にいるハンマーを持った冒険者もなかなか見事な逆三角だったけど、この仮王はその一段、いや三段上を行っている。
こんな人にデコピンされたら多分気絶どころか額抉られて死ぬんじゃないかな。
俺は視線を向けるが目線を合わせないように遠くを見るようにした。
「あっ。俺…、いえ、私は友人の招待でお邪魔させていただいてます。青木だい」
「その紋章ピン…よもやメアリーが話していたダイゴという男はお主のことか?」
軽い自己紹介をしようとメアから貰った通行手形にもなるって話の紋章入りバッチピンを仮王に見せた途端空気が変わった。
今までは警戒されながらも多少は緩い視線だったけど、このバッチを見せた瞬間心肺停止レベルの目になりました。
しかも仮王様今ダイゴって言った? メアリーって言った?
多分メアリーは聞き間違いだと思うけど聞き返す事すら許されない死視線で今にでも俺は逝きそうです。
この目を見てすぐに俺は察したよ。
きっとこの人がメアのお父上なのだという事を。
なので俺は正直に言う事にした。
「私はアオキといいます」
「アオキ? 変わった名だな。生まれは?」
「ここから遠く離れた異国の地です。今はミスニーハの街に住んでいますが、今日はクリスさんに城の中を見せていただきまして」
「ほう。クリスの知人か。冒険者、のようだがでは何故メアリーの紋章を持っている?」
「メア…リー? 様とは過去にクエストに同行していただきた事がありまして、その時にこのバッチを頂きました」
「そうだったのか。いや、すまなかった。娘が毎晩のように話をするダイゴというクソ野郎と重なってな。ストレスで腹の調子も悪くなるし、今日娘がその男を連れてくるらしいから悪い虫が寄り付かんよう軽く挨拶をしようと思っててな」
「お父様にここまで愛されて娘さんは幸せですね。私はまだ独身ですからその心中はお察し出来ませんが」
「目に入れても痛くないとはこの事だ。…おっとすまない。娘に呼ばれているのだった。用を足しているところ、失礼した」
「とんでもございません。私もすぐ、一刻も早く城を出なければならないのでした」
では、とお互い手洗いを済ませトイレを出て反対方向へと歩き出す。
スタスタスタ。
スタスタスタ。
スタスタスタ。
「あっ。大吾さんお帰りなさ」
「マールちゃん怖かったよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!!」
廊下の角を曲がった所で待ち合わせてたマールの胸に全力で飛びついた。
ぶええええええええええと大泣きする俺。
あぁ…、マールのちっぱい様が俺の傷付いた心を優しく包み込む…。
心を癒す、こんな事が出来るのはちっぱい天使マールちゃんの成せる業。
「ど、どうしたんですか大吾さん。トイレにお化けでも出たんですか?」
「お化けならどれほど良かったか」
トイレの花子さんの比じゃない怖さだったよ。
正直話してる間全身ガクブルしてバースト・ストリームもブレブレだったからね。
「あれ? そういえばメア達は?」
あまりの恐怖からマールしか目に入らなかったけど、今は心も癒えて視野が広がったので全体が見渡せます。
いや全体は見渡せません。
顔がちっぱいから離れないから。
「メアさんとクリスさんは一足先に勇者さんの様子を見に行くって。ヴィヴィさんとスズランさんも一緒に。残ったのはわたしとシオンとバニラだけです」
そう言うマールちゃんの足元には確かにシオンとバニラがおった。
ごめんなシオン、格好悪いパパで。でもパパとママはとっても仲良しなんだ。バニラはズボンの裾齧らないでね。
「わたしがご飯の話ばかりするので急いで解決して来ますって。申し訳ないことをしちゃいました」
シュン…とするマールちゃんちっぱい可愛いいい匂い。
でもさすがにそろそろ離れないと怒られそうなので渋々顔を離す俺。
前にもあったけど、俺が本気で泣いて抱き着いている時にマールは絶対に無理に引き剥がそうとしないんだ。
本当に優しいちっぱい天使なのであった。
「俺もディラゴォンの肉食ってみたいし皆だって食事楽しみにしてたから大丈夫だよ」
俺以外、と心の中で付け足しフォローする。
嘘は言ってないが本音でもない。
肉は楽しみだけど食事は楽しみではない。なんなのこれ。
「ありがとうございます、大吾さん」
ぱっと笑うマールちゃん。
シオンも俺とマールの事を心配してくれて足をサスサスしてくれてるしもう心に恐怖はない。
「そう言えばさっきメアさんのお父様に会いましたよ! すっごい大きな人でザ・王様みたいな格好をしてました!」
「へーそうなんだー俺も会いたかったなーでも俺たちはもう城を出るし会えないなーざんねんー」
「メアさんさっき勇者の人をお父様と対処するって言ってませんでしたっけ? これから合流すると思いますけど」
「王都は広いからねーこう広いと勇者を探すのも大変だしメア達と合流するのも大変だねー」
「そうならないように最終的にはお城の正門前に集合って話ですよ! 迷子になってもお城なら王都のどこからでも見えるらしいので!」
「…」
仕事の出来る子たちだった。
ちくしょうどうしたらいいんだ。
せっかくマールとシオンに心傷を回復してもらったのにまたゴリゴリ削られていく。
もう何話したか忘れたけど、メアの父さんダイゴって奴をクソ野郎とか軽く挨拶するとか言ってなかった?
あんな体型から繰り出される軽い挨拶が本当に軽いわけないじゃん。
肩に手を置かれただけで脱臼する自信があるよ。
ちっぱい女子の攻撃でもちっぱい女子への攻撃でもないから素のステータスで受ける事になるんだから。
俺が肉塊になるのも時間の問題だよ。
「じゃ、じゃあここで待ってようか。(メアの父さんに)見つかるかもしれないし」
「…? でも(勇者さんは)お城から離れた所で召喚されたって言ってましたけど」
「み、みんなで探すのが目的なら俺たちは城の敷地内を探すってのもいいかもしれないよ? シオンもいるし危険かもしれないし」
「確かにそうですね。バニラも食べられたら大変です」
いや、バニラを初見で食い物だと思うのはフルもっふ族のマールとフルもっふ族候補のメアだけだと思うよ?
でもマールも城に留まるのは賛成みたいだしここは何も言うまい。
メアの父さんと会う確率が少しでも低くなるなら俺は何だって構わない。
あとは用事が出来たとかで速攻帰れば問題無しだ。
ディラゴォンのお肉はタッパーに入れてもらおうね。
なーんて事を考えながら城の中庭を勇者探しという名の散策をしていると、
「ねぇアンタ! 日本人でしょ? アンタももしたして勇者召喚で来たの!?」
と言ってくる妙にちんちくりんな少女と出会った。
その少女は黒髪ロングを花柄のシュシュでサイドテールでまとめ、ランドセル背負っており、その肩ベルトには護身用の防犯ブザー付けていた。
何か色々めんどくさそうな子だったけど一番の問題はお胸様のサイズがマールちゃんと同じくらいだった。
俺から見たらロリ巨乳という言わば天敵との出会いでもあった。
大吾さんの所謂ライバル的存在をどうしようかと悩んだ結果登場した勇者ロリ巨乳。
大吾さんの能力はちっぱい女子にしか効きません。




