表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/67

大吾とアジト➆

●前回のあらすじ●

大吾さんとマールは運命の輪で繋がった。



 問題が発生した。

 ランプの魔神や願いを叶える龍って言ったら呼び出した主人に絶対服従って言うか叶えられない願い以外なら何でも聞いてくれるじゃん?

 でもね? このランプの幼女ことシオンちゃんはね?

「シオンちゃーん? パパのお願い聞いてくれるかなー?」

「きくー♡」

「ありがとうシオンちゃん。じゃあ堕天使になったこの子を天使に戻してくれるかな。出来る?」

「堕天使ってなーに?」

 ハテ? するシオンはマールちゃんそっくり可愛い。

 はい。

 俺たちは廃教会調査クエストの翌日また再集合し、ぐっすりネンネして起きたシオンにチハを天使へと戻してくれないかお願いしたのだが。したのだが!

 シオンちゃんは見た目は子供、頭脳も子供だった。マジもんの幼女だった。

 願いを聞くという事は相手の言っている事を全て理解出来る知識が必要なわけだが、幼女相手にはそれは厳しいと言うものよ。

 どんなに脅威の大宇宙パワーを持っていてお家が狭い魔神でもちんちくりんの幼女では厳しいと言うものよ!

 さてとどうしよう。

 堕天使のチハと天使のマールを並べても見た目は羽が白黒で違うくらいでどっちも可愛いちっぱい女子だし、どう説明をしたものか。

 難しい言葉で説明してもシオンは可愛くハテ? するだけだし、幼女でも分かるようにしないといけない。

「てな訳でマールちゃん。お願い」

「えぇっ!? ここでわたしに振るんですか!?」

「だってほら。天使のマールちゃんなら堕天使の違いも分かるかなって」

「しょうがないですね大吾さんは。あとわたし女神ですので」

 コホン、と咳払いをする女神のちっぱい天使マールちゃん。

「えっと、天使と堕天使の違いですよね? これはあれです。チハさん、お願いします」

「えぇ!? ここでワタシに振るの!?」

 ちっぱい女子に譲り合うあたり俺と考えが同じマールちゃん。

 お揃いだねマールちゃん。

 もちろん違いは知ってるけどちっぱい女子に華を持たせようとして譲ったんだよね。

 知らないわけじゃないんだよねマールちゃ、あっ。何か口笛吹いとる。

「えっと、堕天使って言うのは天使が傲慢や嫉妬などの様々な理由で」

「ちぱ子。そんな難しい言葉並べたらシオンがハテ? するだけだ」

「誰がちぱ子よ!」

 ボッと繰り出せるパンチ・デリカット。

 その拳は俺の顔をかすめただけだったが、逆にそっちの方が恐怖で足がガクガクします。

 拳のチハ、足のヴィヴィ。

 ミスニーハの武闘家は今日も強烈のようです。

「チハ、ダメだよ。俺たちはお願いする立場なのにそんな事をするのは」

「うっ…だ、だってコイツが…」

「チハ」

「…ごめんなさい」

 ケイに言われてペコリと頭を下げるチハ。

 昨日もそうだったけど、俺とケイでは全く反応が違うチハなのだった。

 しかし困ったな。

 シオンに説明できるのが誰もいない。

 ヴィヴィ、スズラン、メアは異世界出身だし天使堕天使何て言われても詳しくはない。

 つか天使堕天使の違いを子供に説明する機会なんてそうそうないから何がどう違うかなんて本人ですら説明が難しいのかもしれない。

 で。

 俺たちが皆してうーんうーんしてたその時。

「ままー。んー」

 シオンがマールに向かって両手を上げて背伸びをしだした。

 こ、これはかの有名な抱っこおねだりのポーズ…!

 たんたん、と背伸び戻る背伸び戻るの催促のおまけ付き。

 何か前にも見た事あるぞこれ。

 確かマールちゃんにつくね串だったかを食べさせる時だったけど、あの時も破壊力抜群でした。

「シオンちゃん?」

 そんな破壊力抜群のシオンをひょいっと抱っこするマール。

 するとシオンはマールのちっぱいをペタペタし始めた!

 一体どうしたの急に!

 ご飯の魔力水はさっきあげたし、こんな俺とケイ得なサービスをしてくれるなんて! さすが俺の娘です。

「さすが大吾さんの娘ですね」

「さすがダイゴの娘だね」

「さすがだいごの娘ね」

「さすがダイゴ様のお子様です」

「俺たちって本当に心通ってるよね」

 ちっぱいをペタペタふにふにされたマールはもちろんヴィヴィやスズラン、メア? からもジト目を頂きました。

 ありがてぇありがてぇ、ってどうしたんだろうね本当に。

 マールちゃんのちっぱいはいつだってふにふにしたいくらい神聖なものではあるけど、さすがの俺でも時と場合を考えるよ。

「ままぁー。ないー」

「こらシオン。ママのちっぱいにそんな事言っちゃいけません。それにママはないからいいんだぞ。ちっちゃくて可愛いじゃないか。マールちゃん、気にすることはないよ。マールの良さはシオンにはまだ早いからね」

「大吾さんちょっと静かにしてましょうか」

「あ、はい」

 ふぇぇぇ…、マールちゃん怖いよぉ…。

 おかしいな。迅速にフォローしたのに効果がないようだ。言葉選びを間違えたのかしら。

「シオンちゃん? 何がないのかなー?」

 と、マールはシオンに聞くが何がないってちっぱいふにふにしてたんだがらお胸様がないって話じゃないの?

 子供は急にとんでもない、突拍子もない行動に出るっていうあれじゃないの?

「かーどー」

「カード?」

 ハテ? するマールマジちっぱいお母さん。育てられたい。

 ってカード? カードってなに?

「あっ」

 するとマールの頭の上にぽん! っと豆電球が出た。

 おー。久しぶりに見たぞそれ。今度電球が切れたら使わせてもらいますね。この世界には電球ないけど。

「そういう事ですね! さすがわたしの子です! シオンちゃんは賢い子です!」

「えへ♡ えへ♡」

 ナデナデするマールとルンルンするシオン。

 全然話が見えてこない。

 一体何がなんだって? 俺とマールの子が賢い子ってのは分かった。

「ここは私にお任せ下さい! この女神マールにお任せ下さい!」

 そんな俺とは裏腹に何か分かったマールちゃんは俺にシオンを預けてスッタターと廃教会から出て行った。

 残された俺たちは皆してポッカーン顔してて似た者同士だった。

 シオンだけは抱っこしてる俺の胸にほっぺをスリスリして気持ち良さそうだった。

 ここはヴィヴィ似だった。




  ―――




「おっ…、ぐずっ…、おまたせ…っ、しまっ、しましたっ…」

 えええ。

 マールちゃん泣いちゃってるんだけど。どうしたのよ。

 まぁ原因は一目瞭然で、マールの頭の上にはソフトボールくらいのデカイたんこぶがあった。それも三段。

 こんな事も前にあった気がするぞ。

 異世界に来る前にマールが創造神様に長期休暇頂いてくるって言いに行った時だったかな。

 あの時はたんこぶが二段だった気がするけど、今回はおまけで一段追加されたのね。

 これがアイスクリームならよかったけどたんこぶじゃ辛かったね。って。

「まさかマールちゃん、天界行ってきたの?」

「うっ…うっ…、そ、そう…です、けど?」

 スンスン泣きながら答えるマールちゃん健気可愛い、ってそうじゃねぇ。

 天界ってそんなホイホイ行き来出来るものなのか。

「たんこぶ付けて帰って来たって事はまた創造神様にやられたのか。今度は何て言って来たの」

「ちょっ、ちょっと…お願いしたい事が、あっ、あるからっ…、まっ、また…っ、お願いっ、叶える、カードっ…、下さいなって…」

「…」

 この子はホントに想像以上にお馬鹿さんだった。

 いや。話は分かるよ?

 堕天使になったチハを天使に戻すのは創造神様クラスの力じゃないと厳しくて、だったらその創造神様に戻してもらおうってのは分かるよ?

 でもそれが許されるのは野比家の長男だけだよ。未来の青狸型ロボットは歴史を自分の思い通りに作り替えようとする未来人を許さないって言ってたけど特大ブーメランなんだよなぁ。

 で。

 シオンもその事を教える為に転移前にマールがそのカードをしまってた胸元のポケットをペタペタしてたんだね。

 ないって言うのはお胸がないんじゃなくて創造神様のカードがないって事だったのね。

 でもシオンはつい最近行動を共にするようになったのによくマールがそのカードを貰って、胸ポッケにそれをしまってたって知ってたね。

 やっぱり何かしらの力を持ってるんじゃないだろうか。

 願いは叶える力は持っててもその願いを理解する頭がないだけで凄い子なのかもしれない。

「そ、それで? 創造神様は何て?」

 三段まで重なったたんこぶをよしよししながら聞く俺。

 泣いてるちっぱい女子を見るのは忍びないからね。

 シオンも俺と一緒に小さいおててでよしよししてくれた。

「一人前の女神になるまで帰って来ちゃダメって言ったでしょうって…。そんな子には罰を与えますって…っ」

 あー…、そういえばそんな話でしたね。

 結構前だったから俺も忘れてたよ。

 マールちゃんもマールちゃんだけど、創造神様もちょっと厳しいんじゃないだろうか。

 だって一人前の立派な女神になろうとマールちゃんが天界に戻る事はこの先無いかもしれないんだぞ?

 マールちゃんは俺と一緒にミスニーハで暮らして老後はシルヴェストリでのんぶり過ごすんだから。って。

「あれ? でもマール、そのカード…」

「……えへ」

 スンスン泣いてはいるが手には見覚えのあるカード。

 俺がちっぱいの神になる力を与え、恐らくはケイにもアイテムクリエイターの力を与えた、あの創造神様のカードがあった。

 あと泣きながら笑うマールちゃんは一人前の女神クラスに可愛かった。

「今回だけですよって貰って来れました。どんな願いでも一つだけ叶えて差し上げる事が出来ます」

「そ、そんな…! 創造神様が二回もそのお力を分けるなんて聞いた事ないわ…!」

 だろうね。

 天使からして見れば創造神様は総理大臣や大統領など国王だからね。

 その国王にもっと力ちょーうだいなんて並の神経では言えないし思いも付かないだろうよ。

 さすがマールちゃんは神クラスのちっぱいを持つちっぱい天使であった。

 これでチハは天使に戻りケイの元へ。

 俺たちも教会を手にする事が出来て皆が皆ハッピーエンドを迎える事が出来る。

 今夜は宴じゃああああああっ! 喜びの舞を踊るぞおおおおおっ!

「しかし条件があります」

「えっ」

 ピタァっと動きが止まる俺たち。

 え? まさかここで上げて落とすパターン?

 スズランといいマールといい、このパターン多ない? あまり同じ展開だと飽きられちゃうよ?

「今回の創造神様のお力ですがケイさんにしか使えないようになっています」

「マールさん? 何故?」

「ケイさんがチハさんをどれだけ想い、一緒にいたいかを言葉にする事でその想いの強さの分だけチハさんを元の天使へと戻すことの出来る力のようです」

「チハへの想い…」

 ふむ。

 つまりは今までみたいに『ちっぱいを司る神になりたい』って言っても想いが比例しないと効果は薄いって事か。

 ちょっと創造神様のカードも劣化した感じだけど俺なら今でも十二分に力を賜れる。

 ちっぱいへの想いは神をも舌を巻くものがあるから。

「お力を使えるのは一度だけです。しっかりとチハさんを想って、お願いしてください」

 そう言ってケイにカードを渡すマール。

 ケイはカードをしっかりと手にし、チハに目を向ける。

 もう想いも言葉も決まっているって感じだ。

 変に言葉を選ぶ必要なんかない。

 今の、今までのチハとこれからどうしたいかを言えばいいだけなのだから。


「俺は不器用で、意地っ張りで、ちょっと乱暴で、でも優しくて、元気で可愛くて堕天使になってでも俺の事を想ってくれるチハの事が好きだ。俺はそんなチハといつまでも一緒にいたいと思っている。これからも今回のような事が起こらないとは限らないけど、今度は俺とチハ、二人でなら、どんな状況だって越えられると信じてる」


 だから。


「神よ! 俺の願いを! 叶えてくれ!」


 チハが――、天使に――、戻れますように―――














 ケイが創造神様のカードの力を使ったその後。

 俺たち三つ輪のクローバーとメアだけは廃教会に残り、まだ住めないまでもアジトに出来るように掃除をしていた。

 今回のケイとチハの件。

 結果から言うとチハは天使に戻った。

 もちろん天使に戻った事により堕天使で得た力は無くなってしまったけど、チハはもう全然気にする様子もなくケイと二人仲良く帰って行った。

 恩だの何だの言ってたけど、俺たちだってケイには世話になってたし困った時はお互い様だからね。

 一人のちっぱい女子が幸せになった。それでいいじゃないか。

「それにしても、意外だな」

「何がですか? 大吾さん」

「マールが天界にちょっとそこまでみたいに行けるのとか、創造神様のカードの力にも劣化版があるのとか」

「異世界だろうが大吾さんが元いた世界だろうが天界は一ヶ所しかありませんのでちょっと雲にズボッっとすればそこは天界です」

「天界のイメージが崩れそう」

 雲にズボッって。

 雲は水蒸気なんだよ? 雲が固まると雪になって落ちるって先生が言ってたぞ。

 説明してよマールちゃん。長くなるからやめとく?

「で。創造神様のカードの件ですが」

「そうそれ。俺の時はあんな条件無かったと思うし、やっぱ追加分のカードは」

「あれは嘘です」

「力が弱いって嘘かよ」

 思わず突っ込んじゃったじゃねーか。

 マールは俺の反応に気分を良くしたのか二ッっと笑った。

 可愛すぎて心の臓が悲鳴を上げた。

「大吾さんが教えてくれたんですよ」

「俺が? 何を?」

「本当の事を言うよりも優しい嘘を言った方がいい時もあるって事です」

 えへへ、と笑うマール。

 もう好きにしてくれレベルで可愛さが上限突破のオーバーキルなんだが? ライダーに出てくる怪人が爆発するシーンみたいになるんだが?

「創造神様のお力ならチハさんの堕天した体を戻すのは簡単でしょうけど、また何かあった時に自分を犠牲にしてしまいそうじゃないですか」

 そんなの、ケイさんは望まないでしょう? と。

 だからマールはケイの気持ちを聞き出す為に嘘をついたんだ。

 面と向かってあんな事言われればケイにゾッコンのチハが堕天使よりも深い恋に堕ちるだろうからね。

 いつもは食べ物に目がないちっぱい天使マールちゃんはやる時はやるっていうのを忘れていた。

 これならもうチハがケイから離れるような事はないだろう。

「改めてになるけど、まーるって本当に神族だったのね」

「私も驚きました! マール様はどこか神聖なオーラをしていらっしゃると思ってはおりましたが、天使様だったなんて」

「ホントだよね! マールちゃん格好よかったよ!」

「いやー、それほどでもありますー」

 にへーと笑うマールちゃんはもういつものマールちゃん。

 このオンオフがしっかりと出来るのはマールがやれば出来る子だからなんだろうね。

 今日はマールちゃん大活躍だったけど、昨日はヴィヴィも十分仕事してくれたし、スズランもメアもチハを説得してくれたし、バニラはへっへしてたし、シオンもマールにヒントを教えてくれたっぽいし今回のクエストは皆がいたから達成出来た事ですね。

 俺もちょっとだけ貢献出来たかな。

「はっ! 大吾さん大変です!」

「何だマールちゃん! 何があった!」

「わたし掃除してる場合じゃなかったです! 何かクエスト受けないと全財産が100コーン(100円)だったの忘れてました!」

「そう言えばそうだったね。じゃあ掃除はそこそこにして、何かクエスト受けに行こうか」

「はい!」

「それなら私も行くわ。御者の出番ね」

「あたしも行く! メアちゃんも一緒に行こう!」

「わ、私もですか!? …そうですね。今日は皆様とご一緒させて下さい!」

「バニラも行こうねー」

「へっへっへっへっ」

「シオンもな」

「いくー♡」

 そんな訳で俺たち三つ輪のクローバーは今日も皆一緒に頑張っていきます。

 まずは廃教会を買い取るのにヴィヴィに立て替えてもらった250パルフェを貯めないと。

 あっ。そういえばアンナにクエスト完了の報告してねぇ。

 一件落着したしアンナにも後で何かお礼しないとな。

 ツインテールにする為にリボンなんかどうですの?



圧倒的っ…!

圧倒的マールちゃんっ…!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ