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大吾とアーティファクト⑥

●前回のあらすじ●

ランプの幼精は水をこくこく飲んで可愛かった。



 ランプの魔神と言われてどんな事を想像するだろうか?

 一般的にはランプを擦ると中から魔神が現れ、その魔神を召喚した主人の願いを叶えるというものだろう。

 青い体でおしゃれな髭してる魔神が出てるのが一番ポピュラーなお話かしら。

 ジャンルは違うけど自分が思ってる人を数々の質問をして言い当てる魔神なんかもいたな。

 あとは心をクラッシュされた某ゲーム会社の社長が持ってたカードとか。

 でもね? 俺たちが今、見ているランプの魔神? 精? はと言うとね?

「んにゅー」

 スヤリーンと俺の腕の中で寝とる。

 たまに自分の親指をちゅぴちゅぴ吸ったりなんかして。

 何とも可愛いけど俺の知ってるランプの精と違う。

 マジもんのランプの幼精、ランプのロリであった。

「やっと人がはけてきたな」

「凄い人でしたもんね」

「アーティファクトを持って出てくればそれは注目されるわよ」

「あたしどさくさに紛れてお尻触られたよ、もー」

「ヴィヴィ。そいつを探し出して血祭りにあげるぞ」

「ダ、ダイゴ様から凄まじい殺気を感じます…!」

 はい。

 そんな訳で俺たちは古代遺跡レゾナンスから出て現在は自分たちのキャンプで休憩してます。

 絆のアーティファクトであるランプを持って出て来た手前、まだ朝方なのにも関わらず多くの冒険者、商人、調査団の人たちの注目を集め先程まで凄い人だかりだった。

 三つ輪のクローバーなんて無名のクランが何て偉業だ、双壁の戦乙女が二人共いるのか、二輪の花のスズランじゃないか、金髪の子が天使レベルで可愛い、毛糸の帽子かと思ったらデザート・ウルフか、ところであの男は誰? 誘拐犯?、 ヴィヴィちゃんのお尻はぁはぁ、などなど。

 って誰が誘拐犯だ。

 確かに今の俺は小さい子を抱っこしてるけど。マールちゃんは天使レベルで可愛いけど。あと誰か今、ヴィヴィのお尻はぁはぁって言った?

 ついでに言うとメアは同じクエストを受けているけど三つ輪のクローバーには入ってないんだけどね。

「ふふっ、皆がだいごの事を不審者を見るような目で見てるのが面白かったわね」

「全然面白くねーよ。何で騎士の人たちに職質受けないといけねーんだよ。冒険者なんて犯罪者は皆そう言うんだ、とか言われても他に言いようがねぇじゃねーかよ」

「大吾さんの目がいけないんじゃないんですか? お胸の小さい子を見る目が」

「この目は生まれつきなんだよマールちゃん」

「このホットパンツお気に入りだったのになー。結構穿いてるし買い替えようかなー。ダイゴいる?」

「いる」

「大吾さん?」

 おっと。つい本音が。

 でもマールちゃん、覚えておいて。

 ホットパンツが嫌いな男はいないんだよ。これは世界の理なんだ。

 俺の秘蔵のコレクションがまた一個増える喜び。あっ。俺まだスズランのパンツ貰ってない(変態)。

「帰り道は気を付けた方がいいわね。アーティファクトは揃って高価なものだし、盗賊や闇商人なんかに狙われるかもしれないから」

「そこは安心して下さい。道中はこのメアの名にかけて必ずや皆様をお守り致します」

「あたしも任せて! 人は顎を打ち抜けば一発だからね!」

 不安は安心に変わり、そして恐怖となった。

 確かに市場に出れば高値で取引されそうなアーティファクト。

 今現在は俺たちが持っているので自分で取れないなら奪ってしまえな奴らがいてもおかしくない。

 弱肉強食の異世界では日本の常識は通用しないので、そういう所も注意しないといけない。

 なのでこういう高価なアーティファクトなどを入手する可能性があるクエストでは護衛を連れる商人や調査団が結構いるんだとか。

 護衛クエストは金銭的・精神的にも人気がないクエストなのに受けてくれる冒険者がいるのか? と思ったが、高額な報酬を見込めるアーティファクトクエストなら支払いも高額で、普通の護衛クエストよりは人気があるらしい。もちろんその報酬も成功時のみに限った契約にはなるだろうが。

「その方たちにはアーティファクトを奪われるわけにはいきませんね。この子のお家ですから」

「そうなんだよなぁ。ぶっちゃけミスニーハに帰っても噂で広まって宿に押しかかって来られちゃたまったもんじゃないしな」

 ナンシーさんやギルさん、他の宿泊客にも迷惑がかかるし、と。

 うーん。どうしたものか。

 アーティファクトが冒険者や商人が狙うのは一般的には換金目的なので、保管をするのは警備がしっかりしている富豪や国家だろうからね。

 俺たちはと言えば言い方は悪いけど警備が皆無な宿住まいの冒険者にアーティファクトを手放す気がないというオマケ付き。

 このクエストを受ける時にもその事を思わなかったわけじゃないけど、古来より願いを叶える道具はどこかへ姿を消すって決まってるのに。

 さっきもマールが言ったようにこのアーティファクトのランプはこの子の家みたいなものだからね。

 ランプの魔神に自由を、って言って世界を旅させる手もあるけど、このランプの幼精はというと。

「んにゅー」

 スヤリーンって寝てるだけやん。

 ランプから出てきても寝てるだけやん。

 ランプの精が皆が皆願いを叶える能力があるってわけじゃないと思うけど、寝てるだけなのでどうしたらいいのか分からないの。

 とりあえずほっぺをぷにぷにした。マールちゃんそっくりのぷにぷにほっぺだった。

「絆がより深まるって意味はどういう事なのかしらね」

 ハテ? するスズランちゃんマジ禁断の果実。

 スズランは古代遺跡にくる時にもその事を気にしてたからね。

 翡翠色の瞳で見られると体が動かなくなります。かと思ったら無意識に手が出そうになる魔力を持っている。危ない(危機感)。

 そういえばこの子もスズランそっくりの翡翠色の目をしていたな。

「この子は私たち全員に似ているし、さっきの壁画から考えるとこの子のご飯は私たち全員の魔力が入った水って事だと思うんだけど」

「まぁそんな感じだろうな」

「えっと…、どういう事です?」

「つまりこの子にご飯をあげる時には私たち全員がいないといけないという事よ」

 その言葉を受けて驚きのメア。

 察し組の俺とスズラン。

 まだ状況が掴めないマールとヴィヴィ。

「これが‶絆がより深まる″と言われている所以ですか」

 まだ願いを叶える力があるって決まったわけじゃないけど、その力を使う為には主人の魔力が必要なのだろうか。それも個人ではなく深い絆で結ばれた複数人の。

 願いを叶える力とはそれくらいしないと使えないものなのかもしれない。

「でも別にそんな問題じゃなくない? あたしたちいつも一緒にいるし、すぐに魔力あげられる…し」

 と、ここで注目されるのがメア。

 そう。

 もしこの仮定が正しければメアは俺たちと行動を共にしないといけない。

 これがまた絆をより深めると言われる所以だろう。

 俺たちはそれでいいのだが、色々な街を転々として護衛防衛クエストを受けているメアには問題だろう。

「わ、私は冒険者をやってはおりますが実は本業ではなく、合間を縫ってさせて頂いてると言いますか常に皆様と行動を共にするのは難しいと言いますか」

 オロオロするメア。

 ってメアは冒険者が本業じゃないのか。

 Sランクで超絶チート装備とスキルを持っているから冒険者だと思ってたよ。

 冒険者にしては立ち振る舞いが上品だなって思ってたし、もしかして本業はどこかのお姫様かな? なーんて。

「とりあえずミスニーハに戻ろう。もうここにいてもやる事ないし、これからの事は戻ってから考えようか」

 俺は幼女を抱きかかえ、マールの元へ。

 テントを仕舞わないといけないので一回ランプに戻ってもらう為だ、が。

「…どうやって戻すんだろう」

 さっきはランプから一定距離離れたら戻ったけど今は離れても戻らない。

 じゃあ自分から戻ってもらおうと思っても寝てるしどうしようね。

「しょうがない。マール、俺テント仕舞っちゃうからちょっとこの子を頼んでいいか」

「あっ、はい」

 そして幼女を抱くマールちゃん。

 男の俺と違って色々柔らかいマールちゃんのお胸へ場所を移したので幼女も気持ち良さそうに笑ってみせた。

「か、可愛いですね、この子…」

「そ、そうだね。それにあたしたちに似てるし親近感が湧くよね」

「私の中に眠る母性本能が目を覚ましたわ。もしかしたら妊娠したかも」

「私も何だかキュンと来ております…」

 何か女の子たちが幼女を囲んでキャアキャア言っとる。

 確かに可愛いもんね。キュンと来るよね。でもいくら可愛い子を見たって言っても妊娠はしないよ。

 俺はそんなキャアキャア言ってる女の子たちを横目にテントを仕舞います。

 バニラだけはペグを抜いてくれるのを手伝ってくれます。ありがとうバニラ。あとで肉の串焼きあげるね。

 そんな訳でキャンプ地を片づけた俺たちは絆のアーティファクトを手に古代遺跡レゾナンスを後にしたのだった。

 幼女を抱いてるマールとその両隣でキュンキュンしてるヴィヴィとメア。

 スズランも何やら嬉しそうだし問題も残ったけど今回のクエストは成功と見ていいだろうか。

 でも皆の興味が幼女に向けられているので俺はポツンと大人しくしてます。

 いいもんね。俺には愛狼のバニラが…あれ? バニラいない、あっ。バニラも幼女に興味津々でマールの太ももの上に乗ってクンクンペロペロしとる。

 バニラはオスだけど動物は子供や赤ちゃんに優しいからね。

 きっとマールたちそっくりの幼女からはいい匂いがしてるのだろう。 

「そう言えばいつまでも『この子』じゃダメですよね。お名前があるのでしょうか?」

 ハテ? するマールちゃんはいい匂い可愛いちっぱい天使。

 ランプの幼精の名前な。どうなんだろうね。

 アーティファクト自体は太古の昔からあるらしいし名前もあるとは思うんだけど、ランプには文字らしき文字は記されてないし、本人に聞こうにも寝てるしな。

「もしまだ名前が無かったら大吾さんが付けてあげて下さい」

「えっ。俺が?」

「そうだね。ダイゴが付けてくれるならあたしも大賛成だよ!」

「いい名前にしてね、だいご。その後でいいからこのお腹の子にも付けてあげて」

「ダイゴ様、よろしくお願い致します」

 何かランプの幼精に名前付ける事になっとる。

 こ、これはそう遠くない未来に俺とマールの間に子供が出来た時の為の練習って事ですか!?

 でもヴィヴィやスズランからも熱が籠った目で見られてる気がするんですがそれは。

 メアはフルヘルムで目は見れないけど、何やらモジモジしとる。可愛いフルプレートであった。

 あとスズランのお腹の子ってなに? マジで想像妊娠したの?

「名前、か」

 皆に似てるからな。難しい。

 世の親御さんたちはどうやって決めてるんだろう。

 俺はマールが抱いている幼女のほっぺをツンツンして考える。

 日本にいた頃も独身だったし、ペットとかも飼った事がなかったから名前をつけるのなんてゲームの中で主人公につけるくらいで全然経験がないからな。

 主人公に名前つけるのも『ダイゴ』で終わりだったし、女の子の名前を付けた事はない。

 強いて言うならネット小説サイトにアップしてたちっぱいヒロインハーレム物の女の子たちに付けてたくらいだけど、その事をマールたちに言っても心を砕かれる言葉を浴びるだけなのでやめておいた。

 お前は心優しい女の子であってくれよ、と幼女のほっぺをツンツンしてると誰に似たのか俺の指をぱくっと咥えてちゅぴぴぴし出した。

 うぅむ。

 これはマールやヴィヴィの血を色濃く受け継いでる気がする。



今後の三つ輪のクローバーに関わる出来事だったのでした。


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