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大吾とガチ休日-午後-

●前回のあらすじ●

ちぱ様はバニラの散歩が出来て楽しかった可愛い。



『ミスニーハ総合運動公園』


 公園面積は芝生のサッカーコート一面分に外周のランニングコースをつけた広さだが、モンスターの脅威はなく子供たちを遊ばせるのに大人気のスポット。

 外周のランニングコースも現役の冒険者から健康維持のお年寄りまで年齢層問わず愛用されている。

 公園入口の屋台には一通りの遊び道具も売っているが他の利用者にご迷惑をお掛けしない程度にお願いします。

 運動で火照った体に嬉しいアイスクリームも絶品です。




「確かにミスニーハの周りは草原だけどミノタウロスとかが普通に出るから子供やペットをのびのび遊ばせるには絶好の場所なのかもしれない。…のだが」

 公園に誰一人としていないんですけど。

 大人気のスポットとは?

 運営してる人がそううたってるだけなのかな?

「今日は王女様が来てるから子供たちや爺さん婆さんはそっちに行っちゃってるんだよ」

「なるほど」

 そう教えてくれたのは公園にある屋台のおじちゃん。

 串やのおばちゃんもそんな事言ってたもんね。

 まぁ俺はあまり興味がないから広い公園使いたい放題やっほいと喜んでおこう。

「ペットと遊べる道具って何かありますか?」

「兄さんのペット…、デザート・ウルフか。それならボールかディスクだな」

「ディスク? …あぁ、フリスビーみたいなやつ」

 お値段はボール一個200コーン、ディスクは一枚1パルフェか。

 まだまだペット飼い主初心者の俺にとってボールとディスクの用途の違いが分からんのだが、投げて取ってきてもらうアレをするならボールでいい気がします。

 そんな訳でボールを二個買った。一個は無くした時、使えなくなった時の為の予備でね。

 そして俺とバニラは芝生広場にやって来た。

 おぉ。マジで誰もいないから余計広く感じる。

 公共施設の利用者が自分だけだと妙にテンション上がるよね。

 てな訳で!

「よっしゃ行くぞバニラ! このボール取って来ーいっ!」

 ポーン! とボールを放る俺。

 バニラも走りやすいように今はリードを外しています。

 ここでの俺の予想は全く反応せず足元で毛玉になってる事なんだけど、バニラはいい方向に予想を裏切ってくれてピコピコ尻尾を振りながらボールを追いかけてくれた。

 おっほー! 何か楽しいぞ!

 異世界に来てから『遊ぶ』って言う事をあまりしていなかったからね。

 男の友達と呼べるのはケイくらいだし、そのケイも店のオーナーだから時間も合わないしな。

 なので今日はバニラと一緒に思い切り遊ぶかな。

「ふへっ。へっへっへっへっ!」

 そしてバニラがボールも持って帰って来た。

 教えてないのにちゃんと俺の足元にボールを置いてくれている。

 うぅむ。デザート・ウルフは頭がいいのかもしれない。

 とりあえずもふもふした。

「今度はこうだ!」

 ビュッっと速く投げる。

 スポーツはしないけどスポーツゲームはする俺はオールFくらいのピッチングステータス(であってほしい)。

 さっきと比べると速くなったのでボールを見失っちゃうかと思ったけど、バニラは一直線にボールのもとへ行って咥えて戻って来た。

 またもふもふした。

「ならこれはどうかな!?」

 俺はまたビュッと投げる。

 が、実は腕の振りは同じでも球速が全然遅いチェンジアップ。

 対戦ゲームでは横や縦の変化球よりも奥行きの緩急が最強なんじゃと思うほどの必殺球だ。

 ダイヤの野球漫画でもサワムーやナルミーが得意にしてた決め球ですからね。

 これなら体勢を崩されていくらバニラと言えど容易に捉えられないんじゃないのか!

「ふへっ。へっへっへっへっ!」

 普通に取って来た。

 まぁよくよく考えれば別にバットに当てるわけじゃないし、転がったボール咥えて持ってくるわけだから関係ないよね。

 ド素人に毛が生えた程度の野球知識で投げたチェンジアップもそんなに球速差無かったろうしね。

 でも何か悲しかったから今度はさっき以上にもふもふした。

 ちなみに何故こんな野球推しなのかというと、有名アニメには突然の野球回がつきものだから何時声がかけられてもいいように事前に練習しないといけないからである。

 しかしその殆どが現代もので異世界ファンタジーでは見た事ないな。

 これは先駆者になるチャンス。

「そういえばマールたちは今頃何をやってるんだろうなー?」

 もふもふ。

「昼時だしマールとヴィヴィが大騒ぎしてスズランが若干引いてるような気がする」

 もふもふ。

「食後のブレイクタイムには普段俺がいるから言えない愚痴とかも言われたりして」

 もふもふ。

「でもそれはないかな? あいつら結構面と向かって言ってくるもんね。あれ以上の事を言われたらさすがの俺も部屋の隅で体育座りしながらすんすん泣くよ」

 もふもふ。

「今日は男同士だから普段は言えない愚痴も俺たちで語り合おうか?」

 もふもふ。

「まずはそうだな。お前ちょっとマールちゃんの事ペロペロしすぎじゃね? 犬っていうか狼なのはわかるけどペロペロしすぎじゃね?」

 もふもふもふもふ。

「それに皆に抱っこもされてちっぱいの感触を堪能しすぎじゃね? 俺だって本当はマールを抱き枕にヴィヴィのちっぱいを枕にしてスズランは掛けちっぱいにしてだな」

 もふもふもふもふもふもふ。

「なに? 『僕は僕で食べられそうになったりして大変』? 贅沢言うんじゃねーよ。食べられそうになる=お口ではむはむされるって事だぞ? ご褒美じゃねーか。変われるものなら変わってやりたいくらいだよ」

 もふふふふふふふふふ。

「それに風呂上がりのマールたちの悩殺する匂いを近距離で味わえるなんて…、あれ?」

 俺はいつの間にか毛玉をもふもふしてた。

 バニラかと思ってたのに毛玉だった。

 いや、もふもふしすぎてバニラが毛玉みたいに真ん丸になった。

「悪い悪い」

「へっ! へっ! へっ! へっ!」

 お詫びのもふもふ。

 つい日頃の不満が手に出てしまったよ。

 許してくれバニラ。

 その後はまたボール遊びをしたり、手で輪を作っての『鼻スポチャレンジ』をしたりと平和な時間を過ごした。

 帰りに買ったアイスは甘くてとても美味かった。

 今度はマールたちと一緒に遊びに来るか、バニラよ。あっ。アイス食うのに夢中だ。




  ―――




「もし」

「ん? …げっ。ですのじゃねーか」

「ですのって何ですの! わたくしはアンナって名前があるんですの!」

 昼飯も軽く済ませてそろそろ帰るかーって事で宿へ向かって歩いているとアンナと出会った。

 個人スキル『制限沈黙(リストラクション・サイレンス)』を持つCランクの魔法使いだ。

 以前会った時はお互い熱くなってたからご紹介出来なかったが、ちっぱいレベルは‶59″の美乳な女の子です。

 髪型はウェーブがかけられたロングヘア。

 クラン加入の話をした時は魔女服っていうか魔法学校みたいな服を着ていたけど、今日はドレス姿をしている。

「あなたはメアリー様をご覧にならないんですの?」

「メアリー様って誰ですの?」

「真似しないでほしいですの! あなた自分の国の王女の名前もご存じないんですの?」

「ぜーんぜん知らん。住む世界が違うし」

「そうですわね。でもその方が気楽でいいのかもしれないですわ」

「どういう…あっ。もしかしてお前領主家出身とかなのか?」

「あら。変態にしては頭がきれますのね」

 今もお父様とメアリー様のお話に付き合って大変でしたわ、と。

 そう言えば串やのおばちゃんが王女様は領主から近況報告みたいのを受けるって言ってたもんね。

 政治的な話から何から色々大変だったのだろう。

 服もバッチリ決めているし。って。

「変態にしてはは余計だ。つかお前よくもタワワニ・ミノルのニュウバックさんにある事無い事言いふらしやがったな。俺がいつお前のお胸様を見たよ」

 俺はちっぱい以外も瞬きレベルで視線を外すスキルを身に付けてるんだぞ?

 ユリさん、ニュウバックさんを始め、美乳のアンナに対しても一回だけとは言わないでも四、五回だけしか見てないだろ。見てましたすみません。

「つか領主家なのに冒険者になるのか? 親とかが反対しそうなもんだけど」

「寧ろお父様が小うるさく言ってくるんですわ。『メアリー様も王女でありながら冒険者稼業に精を出しておられるのでお前も頑張りなさい』と」

「うわぁ…、めんどくせぇ親父で苦労してんだな」

「あら。変態にしては話がわかるじゃありませんの。ホント火の粉がこうも降りかかってくると苦労が絶えませんわ」

「だから変態は余計ですの」

 こういう所も異世界あるあるっつーか貴族あるあるなのだろうか。

 貴族としては皇族とは太いパイプで繋がっていたいし、王女と歳の近いアンナも冒険者として名を馳せればより目に止まりやすくなる。

 アンナが以前俺たちのクランに来た時もヴィヴィやスズランなど名が知れている人物が属しているクランだから入りなさい、と言われて来たのかもしれないな。

「そういえば、もうクランは決まったのか?」

「いいえ。どのクランも二言目には『領主家のアンナ様に~』って名前だけ欲しているみたいですので辞めておきましたわ」

「お前も人の事言えない気がするけど…」

「あら。変態のくせに鋭いですわね」

「どうやら俺が何故変態と呼ばれているのかを知りたいらしいな」

「ひっ」

 まぁアンナは自分の意志っていうよりも家の意思って感じだろうけどな。

「その点あなたは他のクラン長と違ってわたくしを領主の娘としては見ないですわね」

「知らなかったってのもあるし今更ですのに畏まるのもどうかなって思って」

「だからですのじゃないですの! アンナですの!」

 ガウガウ怒り散らすアンナ。

 うーん。これも今更感。ですのの方が言いやすいし。

「じゃあ尚の事俺たちのクランに入ったらどうだ? クランメンバーも皆地位とか気にしないで気さくないい奴ばかりだぞ」

「有難い申し入れですけど変態がクラン長のクランは御免ですの」

「変態変態うるせーですの! お前だって人の事言えねーですの!」

「うるさいですわ! 制限沈黙(リストラクション・サイエンス)! ですの!」

「ぐあああああああああああああああっ!!!!!」

「はぁはぁ…、ふ、ふふっ…このわたくしに同じ魔法を二度使わせるとはなかなかやりますわね…」

「お前なんて事してくれたんだ! この沈黙のせいで前は大変だったんだぞ! ‶ちっぱい″言えなくて大変だったんだぞ! …あれ?」

 ちっぱい言える。

 マールのちっぱい可愛い。

 ヴィヴィのちっぱい枕にしたい。

 スズランのちっぱい禁断の果実。

 うん。言えるし思える。

 前は台詞も地の文も沈黙状態にされてたし。

「沈黙させる言葉はわたくしの任意で決める事が出来るんですの。これであなたはわたくしの真似が出来なくなりましたわ」

「なに? まさか―――? あっ。マジで―――。―――言えない」

「いい気味ですの! わたくしを馬鹿にするからですの!」

「馬鹿にはしてない―――。楽しいから言ってただけ」

「それが馬鹿にしてるって言うんですの!」

「悪かったって。んで? 変態云々は置いておくとしてクランはどうするんだ?」

「だから変態がクラン長のクランは御免だって言ったじゃありませんの」

「マジで御免なのかよ!? それはネタって言うか冗談で言ってただけじゃないのかよ!」

 アンナには完全に変態と思われているどうも俺です。

 他人の評価は気にしないけど誤解は解いておかないと面倒が臭くなりそう。

 相手は領主…あっ。でもアンナが入らなければマールの情報が領主家に入らない事になるのか。

 正直助かるけどアンナはアホだが人の嫌がる事はしないいい子な気がするの。俺に対して以外。

「ふふ、冗談ですわ。いえ、あなたを変態ではないと決めたわけではないですが、わたくし相手にこうも気兼ねなく話せるのは新鮮で楽しいですの」

 ですが、とアンナは続ける。

「メアリー様も聞けばクランに属さず単身でSランクまで上り詰めたらしいですの。だったらわたくしもって思っただけですわ。Sランクは無理でもヴィヴィさんと同じAランクになれればお父様も満足されるでしょうし」

「―――お前、めっちゃいい子じゃねーか」

「なっ、なんですのいきなり」

 オロオロアンナアホ可愛い。

 ちっぱいレベルは59だが頑張る女の子は誰だって可愛いんです。

「それなら俺からは何も言えないな。頑張ってAランク、Sランクになってくれよ」

「ふふん、もちろんですわ。あなたに『あの時俺が変態的な事をしてしまったばかりにクランに入れそびれた』と言わせるのが今から楽しみですの」

「言っておくが俺が手を出せないのはちっぱい女子に対してだけだぞ。お前相手なら何でも出来るんだ、何でもな」

「ひっ」

 ガタガタ震えるアンナだったが、『絶対見返してやるんですのー!』って言いながらスッタター走っていった。

 ってあぁぁ…、ドレス姿で走るもんだからドッシャアアアすっ転んだ。

 しばらく動かなくてプルプルしてたけどゆっくり起き上がってこちらをキッと睨みつける。

 いや俺のせいじゃないでしょうよ。

 アンナは魔法使いなので自分にヒーリングの魔法をかけ、ドレスを叩いてまた走り出した。

「また転ぶなよ、アンナ」

 そう言った瞬間またアンナはドッシャアアアすっ転んだ。

 学習能力がないアホの子だった。

 その後また地面に倒れてプルプルしてたけどゆっくり起き上がってこちらをキッと睨みつけた。

 いや、だから俺のせいじゃないでしょって。

 二度目の睨み顔は最初と比べるとちょっと赤い気がした。



お帰りはテレポートですの!

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