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大吾と双壁の戦乙女④

●前回のあらすじ●

三つ輪のちっぱいガールズは皆プリーンが大好きだった。



「俺マールヴィヴィスズランでいいんじゃないかな?」

「いえいえ。わたしスズランさんヴィヴィさん大吾さんがいいと思います」

「何を言うの。だいご私ゔぃゔぃまーるに決まってるでしょ?」

「あたしは別に何でもいーよ」

「へっへっへっへっ」

 はい。

 俺たちは今、シルヴェストリの宿に来ています。

 ナンシーさんがやってる宿よりも小さい全三室の宿だが、内装などが綺麗で女性受けしそうだ。

 ここでも特産品のプリーン目的で訪れる女性客をターゲットにしているのだろう。

 夕食と言う名のスイーツ大試食会が終わり、明日も早いので風呂入って寝るかって事で部屋を取ったのだ。

 そこで嬉しい誤算があり、ミスニーハ同様シルヴェストリの宿も一人部屋と四人部屋しかなく、俺は一人で泊まるつもりだったけど四人部屋で三人で泊まるのも四人で泊まるのも変わらないし、むしろ部屋代が安くできるから一緒の部屋で寝てもいいというお許しを得たのである。

 更にはペット同伴可ということでバニラも一緒と正に三つ輪のクローバー全員で一夜を共に出来る。

 と、ここまではひゃほほーぃだったのだが、一つ問題が発生した。

 それはどのベッドで誰が寝るか問題。

 俺たちが取った四人部屋のベッド配置が横一列になっており、誰かしらが俺の隣で寝なければならない。

 そんなのいつも一緒に寝てる(語弊有り)マールちゃんに決まってると思ったのだが、なかなかOKしてくれないのだ。

 皆の前だからって照れないでいいのに。ツンデレさんかな? 二人っきりじゃないと素直になれないタイプかな?

「俺はマールの隣がいいな」

「わたしはスズランさんかヴィヴィさんの隣がいいです」

「あたしはどこでもいいよ! 部屋の壁でも寝れるし」

「私はだいごの隣しかないと思うの」

「へっへっへっへっ」

 まとまりがねぇ。

 数学の問題かな?

 


【問】次の条件で最善の順列にせよ。尚、最悪一つの条件は妥協出来るものとする。

 

 ①AはBの隣がいい。

 ②BはC又はDの隣がいい。

 ➂Cはどの場所でもいい。

 ④DはAの隣がいい。

 ⑤Eはへっへっへっへっへっ。



 うん。

 この場合妥協点は②だろ!

 Bのちっぱい天使はCのちっぱい魔王を見習うべき。

 いや待てよ? 妥協なんてする必要がないな。

 何故ならCBADの順でいいから。

 これなら全ての条件を満たしているし、何も問題ないんじゃないだろうか?

 Eの毛玉が俺の裾齧ってるけど何言ってるか分からないから多分Cと一緒でどこでもいいって言ってたんだな。

 よーし。今日もマールちゃんの寝顔を見ながら寝られるぞー!

「身の危険を感じるので大吾さんとはベッド一つ空けて、の条件を追加でお願いします」

「マールちゃん我儘言って皆を困らせちゃダメでしょ?」

 メッする俺。

 しかしマールには効果がないようだ…。

 ちくしょうマールちゃんは何タイプなんだ!? 光タイプとか天使タイプなんてないぞ! 変化技を無効にするチート特性でも持ってるのか!?

「だいごとまーるを隣り合わせにするとうるさくて寝れたもんじゃないわ」

「スズランちゃん? 別にうるさくしないよ? 皆いるんだし気付かれずに何かやるスリルを味わう気もないよ?」

「ダイゴは物音立てないの得意だもんね! 音が出そうになると咳で誤魔化すし!」

「ヴィヴィちゃん? 俺今すぐALS〇K異世界支店に行って契約解除してくるから」

「でも大吾さんは夜中たまに『マールちゃんマールちゃんマールちゃんマールちゃん』って言ってる時が」

「マールは俺の二個隣のベッドだったね! じゃあマールかスズランの言った順番でいいね!」

 なんて事を言い出すんだマール!

 そういうのは気付いてても言わないのが大人でしょ!

 それに俺はちゃんとマールが寝た事を確認したぞ!

「スズランさんがそう言えば大吾さんはすぐ折れるって言ったんですけど、本当でした」

「そうでしょ? だいごの事は何でも知り尽くしているわ」

 スズランテメェ。

 マールちゃんにある事無い事言いふらしやがって。

 マールちゃんはまだ全然何にも知らない無垢な子なんだぞ。

 そんな事教えたら呼ばれたと思って返事されるじゃねーか。

 何とは言わないけど、何かの代わりに心臓飛び出るわ。

「じゃあ私が言った通りだいご、私、ゔぃゔぃ、まーるの順でいいわね? 大丈夫よ、まーる。部屋は一階だしだいごが暴走しても私とヴィヴィが止めている間に窓から外に逃げられるから」

「異議あり!」

 ビシィッ! と弁護士ポーズ。

 さっきから好き放題言いやがって。

 言いたいのなら言わせておけの俺だけど、間違いだけは正さないといけない。

「何よ。私の言ってる事は何も間違っ」

「俺が本当に暴走したらスズランとヴィヴィだけじゃ止められないぞ。マールも窓に手を掛ける前に捕まえられる」

「ひっ」

「マールの聖域(サンクチュアリ)だって結界展開前に密着すれば発動出来ないのも確認済みだしな。素早さ100倍を甘く見ないことだ」

「あわわわわ…」

 ガタガタ震えて抱き合うマールとヴィヴィ。

 スズランはゾクゾクしてるような目で俺を見とる。やばい(本能)。

 バニラは俺の裾を抱いてあむあむ齧ってた。片足だけレッグウォーマー履いてるみたいになってた。

「そういえば今更だけどメアはどうしたんだ? まだ用事済ませてないのか?」

「本当に今更ね…」

 だって四人部屋だから俺はてっきりマールヴィヴィスズランメアで泊まると思ってた。

 だからマールちゃんと離れて寝る事になるショボーンしてて、そこに同室の許可を得たからひゃっほいしたのだ。

「めあからは『用事を済ませたら休みますので皆様で部屋をお借りください』って言われてるわ」

「そうなのか。帰りが遅くてもヴィヴィたちと一緒に寝ればいいのにな。せっかく皆仲良くなったんだし」

「メアちゃんは相部屋しないことで有名だからね。寝相が悪いから恥ずかしいみたい」

「そうなんですか? わたしさっきメアさんのお部屋に遊びに行った時は凄く綺麗に寝てましたよ」

「えっ。マールちゃんメアのいる部屋行ったの? てかこの宿だったの?」

 まぁシルヴェストリはミスニーハ程大きい街でもないし、ギルドはあるけど街全体が冒険者主流ってわけじゃないから近場で宿屋って言ったらここなんだろうけど。

「お隣ですよ! 宿の方が『まさか双壁の戦乙女のお二人が泊まりに来るなんて夢のようです』って言ってたので内緒で行っちゃいました! よっぽど疲れてるのか鎧着たまま寝てましたけど」

「えっ」

 何そのアルくんみたいな白騎士みたいな。

 あんなガッチガチなフルプレートメイルで寝たら体バッキバキになるだろ。

 寝辛さMAXじゃねーか。

 Sランクにもなると常に戦闘モードなのかしら。

 ゴブリンをスレイする人だって家で寝る時は兜外すって牛飼い娘ちゃんが言ってたよ。

「ピクリとも動かなくて寝相いいのにメアさんは心配性なんですね。大吾さんなんか夜な夜な右手だけ活発に動いて」

「俺も今日は疲れたから早く寝ようかな! 皆もメアを見習って早く寝ろよ! 明日も護衛のクエストがあるんだからな! それじゃあおやすみ!」

 ババッ! っと端のベッドに潜り込む俺氏。

 ちくしょうスズランの奴第二、第三の台詞までマールに教え込みやがって。

 …いや? 俺がそう思ってるだけで今のは本当にマールが知ってるって可能性も!?

 あわわわわ…もうダメだ、おしまいだぁ…。

 俺は伝説の超戦闘民族だと分かった瞬間怖気づくM王子みたいになった。旧作の方ですね。

「だいご、安心して。さっきのも私がマールに吹き込んだだけよ」

「安心した! ありがとうスズラン! でも出来ればそういう事吹き込まないでくれるかな!」

 俺は枕に顔を埋めながら叫んだ。

 あまり騒いじゃうと隣で寝てるメアを起こしてしまうから大人しくしないとね。

 だから皆さんさっさと寝ますよ。

 今まで言ったこと聞いたこと、明日には綺麗さっぱり忘れているように!




  ―――




「んぁ?」

 深夜。

 俺はドアの開閉音で目を覚ました。

 誰かトイレにでも行ったのか? と横を見ると驚きの光景が広がっていた。

 まずヴィヴィがスズランを抱いて『マシュマロ、マシュマロ』って言いながらスズランのほっぺをはむはむしてた。

 あら~。

 確かにスズランは白いし柔らかそうだからマシュマロって思ってしまうのも頷けるな、うん。

 そんなはむはむされているスズランは『お姉ちゃんやめて…』って言ってうーんうーんしてる。

 これは危険な百合の香りがしますねぇ。

 ユリスズラン姉妹の家で日夜行われている薄い電子書籍的なアレの香りがしますねぇ。

 正直スズランが隣だから何されるかビクビクしてたけど、ヴィヴィが押さえ込んでたから動けなかったのね。

 そのまま朝まで頼むぞヴィヴィ警備員。まだ警備の契約解除してないからね。ミスニーハの街に帰ったら解除する。

 で。その奥。俺のちっぱい天使マールちゃんはと言うと。

「んももも…」

「くーんくーん…」

 バニラ咥えとる。

 バニラの背中咥えとる。

 ちょっとマールちゃん?

 ダメでしょ、愛狼をそんなアイスみたいに。いくら似てるからって(マール・メア談)。

 バニラだってやめてってくーんくーん鳴いてるじゃねーか。

 可哀想だから俺はそっとバニラをマールのお口から解放してあげた。

 放した時のマールがとても悲しそうな顔をしたけど許してね。

 あとで本物のバニラアイス買ってあげるから。

 それで助けたバニラはやたら俺をペロペロして来た。

 いつもはあむあむ噛んでくるのにちょっとは心を開いてくれたのだろうか。

「またマールにはむはむされないように俺のベッドで寝てな。俺はちょっとトイレ」

 狼に言ってもわかるとは思ってないけど、ペットを飼ってる人あるあるっていうかついつい喋ってしまう不思議。

 そんな訳でバニラを俺のベッドに置き、部屋を出てトイレに向かった。

 その時。

「きゃっ」

「いてっ」

 運命の再会。

 何と夕飯で行った甘味処にいたちっぱいレベル99の街娘と鉢合わせになったのだ。

 眠気が一気に吹っ飛んだ。

 正直さっきのマールちゃんの時にも驚きのあまり二度見したけど、今も今でビックリ仰天意識覚醒でござる。

「す、すみません。急に出てきてしまって」

「い、いえっ…お、おおお気になさらず」

 わーぉ。声も可愛らしいです。

 さすがはシルヴェストリ一のちっぱい女子(主観)。たまらん。

 電気がない異世界では夜になると蝋燭の火か月明りが頼りなので宿の廊下では暗くてよく顔は見えないが可愛い(に決まってる)。

 それにしてもまさか俺たちが泊ってる宿屋の娘だったとは。

 実家があればそっちで寝るだろうし深夜に宿にいるって事は宿屋経営者って事だろう。

 このちっぱいスレンダー(ガン見)な子が冒険者なわけないし、口ごもってオロオロしてるから商人ってわけでもないだろうし。

 だからあくまで修行の一環だけどこれからはシルヴェストリのギルドにもクエスト受けに来ようかな!

 でも遠いし疲れるから宿に泊まらないといけない!

 疲れてる体で街の外に出るのは危険だもんね! 仕方ないね!

「で、でででは(わたくし)…、わたしはこれで!」

 ぺこりと頭を下げてぱたぱたぱたと廊下を走る様もたまらん。たまらんのだが。

「あのー…そこはメア、あー…。俺たちの仲間の部屋なんですが」

「はっ!」

 ピタァ…と時が止まるちっぱい宿娘(改名)。

 どうしたのだろう。

 メアの部屋に入ろうとして。メアに何か用だったのだろうか?

「もし用がありましたらマール…えっと、女の子の仲間に頼んで起こさせましょうか?」

 俺が入るわけにもいかないので、と付け加えて。

「い、いけませんっ!」

「うおっ」

 くわっ! とお断りされました。

「ちょ、ちょっとお部屋を間違えてしまっただけですので」

 失礼します、とまたぺこり頭を下げてその隣の部屋へぱたぱた移動するのだが。

「あ、あら?」

 ガチャガチャっと鍵がかかってる模様。

 どうしたんだろう。

 確かこの宿は全三室。

 俺たちの部屋、メアの部屋、残りはここだけのはずだが。 

 そもそも今は結構な深夜帯。

 急ぎでなければ明日でもいい気がするし、急ぎならマスターキーを使って開ければよさそうだけど。

「…」

「…」

「…」

「…」

 き、気まずい…!

 ちっぱい宿娘はドアノブに手をかけて固まっているし、俺は俺でどうしたらいいか分からず動けないでいるし。

「あら? あちらに何と大きなプリーンが」

「はぇ?」

 何か変な事言いだしたぞこのちぱ娘(略称)。

 プリーンがなんだって?

 俺は何のことか分からずジッとちぱ娘のピンと伸ばした指を見た。

「そ、そんな…! この言葉に引っかからない方がいらっしゃるなんて…!」

「ええっと…」

 ガタガタ震えだすちぱ娘。

 多分それに引っかかるのはマールとヴィヴィくらいじゃないだろうか?

 ワンチャンでスズランもあり得るかもだけど。

 もしかしてあれかな?

 このちぱ娘もマールたちと同じフルもっふ族かな?

 ますます俺好みです(ゲス顔)。

 でも何か可哀想になって来たので俺はクールに去る事にするよ。

「じゃあ俺もう膀胱が限界なので」

 ああああああああああ。

 ここでもハッキリ言っちゃったよ!

 ちぱ娘もポッカーンしてるしやっちまったなぁ! でもこのままじゃ男は黙って垂れ流しだったからこれでよかったのだ。

「あ、あの…!」

 あぁんもう今度はちぱ娘から話しかけられてしまった。

 これは無下にできませんね。何なら朝まで話しますよ?

 でも出来れば早めにお願いします。

 ちょっと変な汗も出てきてますので。

「あ、ありがとうございます。やはりダイゴ様は相手の気持ちを汲める素晴らしいお方です」

 そう言ってニコッと笑うちぱ娘。

 正直その笑顔にやられて若干ちびったけど、バレないうちに挨拶だけしてトイレに退散した。

 危ない所だったぜ…!

 あのまま廊下にいたらアンモニアの水たまりを作るところだった。

 俺は急いでズボンからおじゃる丸(隠語)を出し用を済ます。

 おー。素晴らしい勢い。

 攻撃力3000の青い眼の白い龍が口から出すビームみたい。これならガイアもマジシャンも滅ぼせそう。

 それにしてもやっぱりちぱ娘可愛かったな。

 マールやヴィヴィ、スズランに匹敵する可愛さ。

 まったく…、ちっぱい女子は最高だぜ!

 って、あれ?

 そういえばあの子、俺の事『ダイゴ様』って言ったか?

 トイレ我慢してたからあまり覚えてないけど何で俺の名前知って、あぁ。宿帳か。

 確か名前書いたもんな。宿の人なら知ってるよね。

 ‶ダイゴ″ってのは異世界でも男の名前っぽいし、鍵がかかってる部屋の他は男は俺だけだもんな。

 マールちゃんはさっき宿の人と話したっぽいし、ヴィヴィとメアは双壁の戦乙女で有名だし、スズランも二輪の花としての名が通ってるかもしれないからね。

 …つーかおしっこ全然止まんねぇ。

 早く止まってくれよ明日早いんだから。

 そんな事を思っていると、またドアの開閉音が聞こえた。

 誰が起きてトイレに来たのかもだけど只今使用中なのでちょっと待ってて! 全然止まらないの! 勢い衰えないのおおおおおおお!!!

 でもその人は俺のオションのSEを聞いたのか廊下で待っててくれているようだ。

 それはそれは凄い音してるからね。高圧洗浄機みたいに俺干からびるんじゃねレベルで出てるからね。

 しばらくするとようやく飛距離が落ち始め、そして全てを、ブルブルッ、出し切った。

 ふぃ~っと一呼吸置き、俺は急いで手を洗ってトイレを出た。

 あまり待たせちゃうとアンモニアの水たまりが出来ちゃうからね。

「…あれ?」

 しかし廊下には誰もいなく、部屋からも物音一つ聞こえない。

 おかしいな。

 さっき聞こえたドアの開閉音は‶一回″だったのに。



おしっこのシーンで文字数を稼ぐ勇気。

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