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大吾と双壁の戦乙女①

●前回のあらすじ●

マールそっくりのちっぱい像は色々とクオリティが高くて可愛かった。



『シルヴェストリ』

 

 ミスニーハの街から馬車で四半日程離れた街で人口や規模はミスニーハよりは少なく小さいものの、特産品である甘味‶プリーン″が有名で、それ目当てに来る女性冒険者もいるほど。

 一応ギルドはあるが、規模が大きくないので在中冒険者の最高ランカーはC。

 冒険者や商人よりも市民農民が多い閑静な街。




「つまりサンたちの親を保護したはいいものの、隣街から来る馬車を護衛出来る高ランカーがいないのでミスニーハの冒険者に応援要請が来てるってわけか」

「そういう事ね。さんとるなの両親の怪我の回復を待つって言う手もあるけど、二人共子供が心配だから一刻も早くミスニーハの街に帰りたいと言っているらしいわ」

 ふむ。

 なんでもスズラン曰く、サンとルナの両親である『オリオンさん』と『コメットさん』は数週間前に討伐クエストに向かったが返り討ちに遭ってしまい、何とか命は助かったもの逃げているうちに限界が来て倒れた所をシルヴェストリの人に運よく発見され保護されたようだ。

 オリオンさん、コメットさんは揃ってCランクの剣士と双剣士だったが、討伐対象である‶カッチカチアルマジロ″が斬撃耐性に優れているモンスターだったため、攻撃が通じなかったのではないかとのこと。

 流石ゲームみたいにはいかない異世界。

 ゲームならゴリ押し力押しで何とかなる相手でも、現実では敵わないようだ。

 そうでなければこんなにも多種多様な職種があるはずがないし、皆の職種がバラける事もないはず。

 どんなモンスターにも刺さる一強の職があるなら全員その職になるはずだから。

 モンスターによって武器を変えるオールラウンダーの冒険者もいるだろうが、武器の都合もあるし慣れない武器で討伐に向かうのも危険なので皆が皆出来るわけではないのだろう。

 だからどの職種も重宝されるし、所属がない冒険者がクランに勧誘されやすいのも頷ける。

 しかしまぁ、今はそんな事よりも。

「やったなサン! ルナ! 父さんと母さん見つかったってよ! 今は怪我しちゃってるけどすぐに帰ってくるはずだ!」

「やったやった! マール様がお願い聞いてくれたんだ!」

「よかったね! サン!」

「ぶぇぇぇぇぇぇ……、ぱ‶ぱ‶ぁ‶~…、ま‶ま‶ぁ‶~…」

 あぁぁ…、ルナちゃん大号泣。

「よ‶か‶っ‶た‶、よ‶か‶っ‶た‶で‶す‶ね‶ル‶ナ‶ち‶ゃ‶~‶ん‶…」

 あぁぁ…、マールちゃんも大号泣。

 マールとルナは抱き合ってわんわん泣いてるし、サンとヴィヴィはハイタッチして喜びの舞を踊ってるし、バニラはそんな二人の足元でくるくる走り回ってるし、俺はどうしよう。スズランを高い高いするか? した。

「ちょ、ちょっとだいご。何するのいきなり」

「いや、皆喜んでるから俺も何かしないとと思って」

 ちっぱい女子には優しく触れる事しか出来ない俺だが、STRが元気100倍になっているのでスズランが天使の羽ランドセルレベルで軽い。スズランちゃんもっと食べないとダメよ?

「は、はな、はな離してっ」

 足バタバタさせるスズラン可愛い。怒って腕をローリングさせる子供の頭を押さえる感覚。

 スズランちゃんはあれですね。めっちゃグイグイ攻めてくるけどいざ攻められるとオロオロしちゃう系女子ですね。

 でも後が怖いのでそっと降ろしました。ここまで全速力で来たのも合わせてはぁはぁ顔を赤く染めるの可愛い。

「ところで一個問題があって」

「えっ」

 ピタァと俺含めスズラン以外の全員の時が止まる。

 おいおい、まさかここに来て上げて落とすスタイル? 別の意味でルナとマールちゃんが泣いちゃうよ?

 ルナを見ろルナを。可愛い鼻ちょうちん出ちゃってるじゃねーか。チーンしましょうね。

「怪我人を連れ帰るという事で‶護衛″のクエストになるんだけど、シルヴェストリからミスニーハ間の護衛クエストはBランク二名以上ってギルドが決めているの。モンスターの襲撃や、盗賊の奇襲に備えれるよう高めに設定されているわ」

 最近Bランクモンスターのミノタウロスが出るようになった為、ミスニーハ周りの護衛クエストはBランク以上としているらしい。

 駆け出しの俺たちが普通に街を出入りしているが、護衛対象がいなければただ逃げればいいだけなのでクエスト自体は受けれているとのこと。

 でも駆け出し冒険者は逃げれるだけのステータス持ってないんですがそれは…。

 RPGでも逃げるを選択して逃げ切れずやられるシーンは結構あるものね。

 ゲームなら宿屋かセーブ位置からリスタート出来るけど、現実ではありえない。

 改めて異世界の怖さを知ったのだった。

「でも、さんとるなにも早く両親に会わせたいし、このクエストを私たちが受けるとすれば御者は私。ゔぃゔぃはAランク。だけどだいごもまーるもこの前Dに上がったばかりだから受注条件を満たして無いのよね」

「と、いう事は?」

「Bランク以上の冒険者を一人、臨時のパーティーとして加えるしかないわ」

 え? いやそれはその通りなんだけど、何が問題なのだろうか。

 ミスニーハは大きい街だし、Bランク以上の冒険者なんかいくらでもいそうだけど。

「問題は護衛クエストの人気の無さね。討伐や採取のクエストと違って四六時中神経を使ってないといけないし、Bランク以上の冒険者となれば他のクエストを受けた方が報酬はおいしいもの」

「つまり?」

「だいごが頑張って速攻Bへランクアップするか、さんとるなの両親の回復を待つか」

 Oh…なんてこった。

 まず俺のBランクへの昇格からして無理ゲーやん。この前やっとDになったばかりでヒーヒー言ってるのに、Cを通ってBとか即死やん。

 確かヴィヴィのBランク昇格クエストは飛竜の卵納品だったんだろ?

 ヴィヴィの運が良かっただけで、もしかしたら飛竜討伐とかあるかもしれんのやろ? 無理やん。まず時間掛かるやん。サンとルナの両親の回復待った方が早いレベル。

 つか俺たちで迎えに行くんじゃなくてサンとルナを両親の元へ届けるだけではダメなのだろうか? これなら親子で会えるし、回復を待ってミスニーハに帰ってくればいい。何も問題なさそうだけど。

「さんとるなを送るだけでも護衛である事に代わりはないわ。ギルドの目を盗んで行かせてあげたいけど、今回はシルヴェストリのギルドも関係してるから隠密にっていうのは難しそうね」

 Oh…なんてこった(二回目)。

 ミノタウロスの目撃情報がなかったらミスニーハ周りはDランク、高くてもCランクで護衛クエストを受けられるらしいが、安全面を考慮しモンスターのランクが高いほど目撃情報がなくなってから通常のランクに戻すまでに期間を設けるらしい。

 ミノタウロスをやつけたから翌日には警戒解除、とはいかないようだ。

 つまりはやっぱりBランク以上の冒険者を一人見つけないといけないってわけか。それも金にがめついてない冒険者。そんな奴がいるのだろうか。

 ヴィヴィなら頼まれればやるだろうけど、それはヴィヴィは超絶チートキャラだからであって、一般的な冒険者には実力ギリギリのクエストで報酬も少ないからうまみがない。

「あのさ、要はもう一人Bランク以上の冒険者がいればいいって話だよね?」

 ハテ? するヴィヴィ。ちっぱい魔王の可愛さはSランクの冒険者十万人分だった。

「そうだけど、誰か心当たりがあるのか?」

 俺の言葉を受け、ヴィヴィはニッと笑った。

 くっ…! もう五万人追加の可愛さかよ!

「ちょっと‶メアちゃん″に話してみるよ」

「メアちゃん?」




  ―――




『メア』


 19歳。

 ギルドランクS。

 Aランク調査クエスト資格所持。

 在住不明。本籍不明。

 人間族。

 最高位冒険者『双壁の戦乙女』の異名を持つ一人。

 職業は魔剣士。

 スキル『切断』を極め、如何なる硬度の物体も斬る事が出来る。

 個人スキル『一閃』を持つ。対象が自分が使用する武器と同等以下の硬度だった場合、切れ味が落ちずに使用出来る。

 メアの武器は現在発見されている物質の中で最高硬度を誇るSランクモンスター‶ギリン″の角で造られた剣‶サンダルフォン″。




「待て待て待て」

「どしたのダイゴ?」

 いや、どしたのダイゴじゃないよヴィヴィちゃん。

 Bランク以上って言ったけど、まさか最高のSランクだとは思わないじゃん。

 しかもミスニーハの街で一、二を争う冒険者の一人なんでしょ? 双壁の戦乙女って。

 相変わらず双‶壁″だし。これは期待が持てますねぇ。

 そんなこんなで今現在は廃教会からギルドの集会場へ場所を移し、そのメアちゃんをサンルナ兄妹バニラ含め全員で待っています。

 もしクエストを受けてくれるなら馬車で四半日の距離との事なので、すぐに発てば夜には着くから野営しないで済むからである。

 夜はシルヴェストリの宿を取ればいいしね。

 だがやはり気になる事が一つ。

「こんな高ランカーが護衛クエストを受けてくれるのか?」

「大丈夫。メアちゃんは防御に特化してる冒険者だし、護衛とか防衛クエストを主に受注してる冒険者だから話を聞いてくれると思うよ」

「防御?」

 ハテ? する俺。

 だってステータスっていうかスキルが完全に攻撃スキルのような気がするんですがそれは。

 メアって人の剣が最高硬度の剣で、それ以上に硬度がある物やモンスターが出ない限りは全部切り捨てる事が出来るスキル。

 うん。完全に攻撃に特化した冒険者じゃないですか。

「まぁ会ってみればわかるよ!」

 あぁん。ヴィヴィちゃんったら焦らすのね。

 サンとルナも『パパに早く会いたいママに早く会いたい』って駄々をこねてるけど、俺も『メアちゃんに早く会いたいメアちゃんに早く会いたい』って駄々をこねるよ。

 だって双‶壁″の戦乙女の異名が付く程の冒険者だ。きっとちっぱいに違いない。しかもヴィヴィレベルの。これは期待ですよ! 期待値が高いですよ!

「大吾さん。やけに嬉しそうですね」

「えっ」

「そうね。何がそんなに楽しみなのかしら」

 おっと? どうやら顔に出ていたようだ。もしくはソワソワしていたか。

 なので俺は正直に言うことにした。

「街で一、二を争う冒険者が一堂に会するわけだ。ヴィヴィレベルの(ちっぱい)冒険者がどんな人なのかは気になるだろ?」

「そうですけど、何か言葉が抜けてるような気がしますね」

 ジト目のマールちゃん可愛い鋭い。でも嘘は言ってない。

「サンも気になるだろ? ヴィヴィくらい強い(ちっぱい)冒険者がこれからここに来るんだぞ」

「メア様が!?」

「メア様!?」

 なにその呼ばれ方。

 偉い人なの? 王家とか領主家出身の冒険者なの?

 これはちょっと雲行きが怪しくなって来ましたよ。

 いくら俺の好きなちっぱい女子でもマールちゃんの脅威になるなら俺の敵ですよ。

「あっ。間違えた。メアさんだった」

「えっ。何その間違い。サンくん何か隠してるの?」

「ひ、秘密なの!」

「ふーん。ルーナちゃん」

 ひょいっとルナを抱っこする俺。

 サンが知ってるならルナも知ってるはず。そしてルナはサンほど口は堅くないはず。マールちゃんみたいにぷにぷにほっぺだから。

「なぁに? だいごおにいちゃん?」

「ルナはメア‶様″知ってるの?」

「んーん」

 ふるふる首を横に振った。

 普通に知らなかった。

 でも可愛かったのでなでなでした。

「えへ♡」

「ヴィヴィやスズランはどうなんだ? 何か知ってるのか?」

「女の子には知られたくない秘密の一つや二つあるんだよ!」

「そうよだいご。だいごだって夜な夜なまーるが寝静まった後にやってる事知られたくないでしょう?」

「すみませんでした。本当にすみませんでした」

 ちくしょうダメだこの二人には敵わねぇ。てか何で知って…はっ! セキュリティ!

 マールちゃんはハテ顔で『何かやってるんですか?』って可愛く聞いて来たけど可愛かった(焦り)。

 くっ! 何とかこの話題を変えなければ!

「あっ。来た来た。メアちゃーん! こっちこっちー!」

 助かった!

 今はこの話題を変えるのが先決だ! メアさんでもメア様でもどっちでもいいので来てくれてありがとうございます!

 そしていらっしゃいませ! ヴィヴィレベルのちっぱい冒険者!

 ちっぱいレベルを測る準備は出来ています! 秒で分かります!

「…」

 しかしそのメア様は俺が予想していた姿とはたいぶ違っていた。

 何故ならメアちゃんと呼ばれた冒険者は、黒紫のフルプレートアーマーで全身を覆った姿だったから。

 色々とビックリしたが何が一番ビックリしたかと言うと、そのプレートアーマーの胸部が大きく膨らんでいる事だった。

 双‶壁″の戦乙女とは一体…?


皆の物ー!

メア様が! メア様がいらっしゃったぞー!

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