大吾とクラン⑤
●前回のあらすじ●
マールとヴィヴィとスズランは大吾さんのちっぱい愛を信じてた可愛い。
「あっ。えっと…ダイゴくんとマールちゃん? だっけ? やっほー」
「え? あっ、イチカさん。こんにちは」
「こんにちはイチカさん!」
ケイの店を後にした俺とマール、ヴィヴィはサンたちのいる廃教会へ向かっていたが、その途中に石工職人のイチカさんと会った。
相変わらずの作業ズボンにTシャツの袖を肩までくるくる巻きの職人スタイルでちっぱいレベルが‶81″の女の子。親方さんの話だと二十歳になるって言ってたな。たまらん(本音)。
「そっちの人は?」
「あぁ、俺のクランメンバーでヴィヴィです。ヴィヴィ、この人はイチカさん。工房『トールハンマー』の凄腕石工職人さん」
「初めまして。よろしくね」
「初めまして。へぇ、ダイゴくんクラン作ったんだね。マールちゃんだけじゃなくてこんなに可愛い子まで一緒なんて隅に置けないなぁ」
ぎゅっと握手をするヴィヴィとイチカさん。
いや、まぁ傍から見たらそうなんでしょうけどその‶ダイゴくん″と言うのは止めてもらえないだろうか。
年下のちっぱい女子にくん付けされると何かムズムズしますわ。
社会人になれば〇〇さんや呼び捨て、役職で呼ぶのが一般的になるからくん付けで呼ばれたのなんて大学以来だから色々こみ上げてきます。
それにしてもヴィヴィとイチカさんはタイプっていうか、似てるな色々と。
お互いボーイッシュだし、髪も短くまとめてあるし、ちっぱいだし。って。
「イチカさんってヴィヴィ知らない、んですか? ヴィヴィゲームとかやってて街では有名って聞いたんですけど」
年下なんだけど敬語を使ってしまう俺。仕事の先輩でもないし了承がないとタメ口は相手に失礼にあたるかしら。
「あー。名前は聞いた事ある。でもアタシって殆ど工房仕事だからさ。あまり外に出ないんだ。出ても出荷とか仕入れだけですぐ帰っちゃうし」
「そうなんですか」
職人さんがどういう生活サイクルをしているのか知らないけど、休日くらいはあるだろうし、街に出だす機会はありそうだけどな。
そういえばイチカさんの親父兼親方の、あっ。名前聞いてなかったけど、親方さんがイチカさんは他人に興味がないって話をしていたな。だから魂のない空っぽの神像を造らせるわけにはいかない、って。
でもまだ二十歳なんだし自分の時間をしっかりと持つのは大切だと思うし良い思います。
俺も自分の時間を大切にしてますからイチカさんとは気が合いそうです。相手に合わせるのは疲れるし、面倒臭いですもんね。
ちなみに俺の一人の時間でも頭の中にはマールちゃんは出てきます。困った子ですよまったく。
「今日は出荷ですか?」
ハテ? するマールちゃん可愛い。やっぱりリアルは圧倒的可愛さ。
そんな可愛いお目目の先にはイチカさんが肩に掛けているトートバッグがある。
マールちゃん? そんなにお鼻をピクピクさせてもダメよ。多分食べ物じゃないからね。
「うぅん。今日はちょっとこれを捨てに来たんだ」
「…………えっ」
そう言って見せてくれたトートバッグの中には、マールそっくりの‶神像″があった。
「ええええええ!!??? イ、イチイチイチカさん! どうしたんですかこれ!」
「この前ダイゴくんから像の製造依頼の話聞いたじゃん? アタシは像造った事なかったからさ。マールちゃんをモデルにして練習してたんだ」
「練習って…」
マールをモデルって言ってもイチカさんと話したのって本当に店先で挨拶した程度だった気がするのに、それだけで一目でマールと分かる程の圧倒的なクオリティの神像を造り上げるなんて。
確かに親方さんが言っていたようにイチカさんは天才の職人だ。
「ちょっと気になって調べてみたんだけど、神像って大きいものだと人の何倍、何十倍って大きいのがあるでしょ? でもそんなに大きいやつだと親父にバレちゃうからさ。内緒で造ってたんだ、コレ」
「は、はぁ」
「でも今日の朝見つかっちゃってね。『テメェにはまだ早ぇっつったろうが! 早く捨てて来いこんな石人形!』って言われちゃったから捨てに来たんだ」
いや来たんだって。だて。
職人の目からすれば魂の籠ってない石人形なのかもしれないけど、俺からしたらそれはもう立派な神像だぞ!?
細部まで作り込まれてるし、可愛い顔してるし、そして何より―――ちっぱいだし!
「イチカさん! お願いします! この像を売って下さい! いくらで売ってくれますか! ありがとうございます!」
「えっ。ちょ、ちょっとダイゴくん待って。落ち着いて」
グイグイグイと迫る俺。顔が近いです。
はっ。いかんいかん。いつものが出てしまった。おっとマールとヴィヴィは安定のジト目ですね。可愛い子たちだよ本当に。
「残念だけど売れないよ。親父に釘刺されちゃったし」
「どんな?」
「『捨てに行く途中であの若ぇあんちゃんに会っても絶対売っぱらうじゃねぇぞ! うちは金より出来を優先させてる店だっつーのを忘れんな!』って」
ってって! ってて!
お金より出来を優先させるっていうのは知ってたけど、それでも捨てるなんて!
勿体ない! 捨てるくらいなら俺が貰うよ! そして部屋に飾るよ! そして色々な角度から鑑賞して楽しむよ! …ん?
「イチカさん。ちなみになんですけど、どこに捨てに行くんですか? そのマー…、ちっぱい像」
隣のちっぱい天使から誰がちっぱい像ですか!? って言ってきたけど別にマールちゃんの事じゃないよ。凄く似てるけどこのちっぱい像はマールちゃんじゃないよ。ちっぱい天使像だよ。マール像だった。
「いや、別に決めてないよ。その辺の草原にポーイしようかと思ってるけど」
「それなら俺がとっておきの場所に案内しますよ」
ニタァと笑う俺。
その笑顔を見たイチカさんはおろか、マールもヴィヴィもうわぁ…って顔をした。悪い笑顔だったと自負してる。
―――
「わー! 凄い! 綺麗!」
「きれい! きれい!」
はい。
そんな訳でやって来ました廃教会。
理由はもちろんサンルナ兄妹とバニラにお昼ご飯を食べさせる事。そういえばバニラ…あっ。マールちゃんがやけに大きなアイスクリーム持ってると思ったらバニラだった。色が一緒だったし、ほっぺスリスリしてるから気付かなかったよ。…え?
「バニラはいつでも可愛いね~♡」
「へっへっへっへっ」
ふふっ。まぁ? 言うてもペット、言うても狼ですわ。
全然羨ましくないし、俺なんか昨日の夜にマールちゃんの寝顔見たもんねー。お口パクパクさせて可愛かったもんねー。
「ダイゴ? 手から血が出ちゃってるからそれ以上強く握るの止めた方がいいよ?」
おっと。つい力が入ってしまったようだ。
サンルナ兄妹も抱き合って『あわわわ…』してるし怖がらせちゃったかな? 大丈夫だよ。怖くないよ。
「この綺麗な像はこのお姉ちゃんが造ってくれたんだぞ? イチカ姉ちゃんだ」
「凄い! イチカ姉ちゃん凄い!」
「すごい! すごい!」
「い、いや、その、べ、別に、アタシは」
サンとルナに褒めまくられて赤くなるイチカさん。
もうお分かりだと思うが、イチカさんに像を捨てるならこの廃教会に捨ててくれと言ってここへ連れて来たのだ。
元に奉られていた神様には悪いが、俺たちが自分のアジトを持てるようになるまでの間、ここに仮置きということで置かせてもらう事にした。神様なら許してくれるはず。
アジトに持って帰る、と言うのはもちろん俺のものであるから。
持ち主がいらないと言って捨てちゃうものは俺のもの(ダイゴアン論)。イチカさんの親父さんも売らないで捨ててこいって言っただけみたいだし(すっとぼけ)。
テレビで捨てちゃう食材だけで料理作る番組やってるでしょ? あれですわ。持ち主への振る舞いは子供たちの笑顔。
「ルナ、見て。マール姉ちゃんそっくりだ!」
「そっくり! そっくり!」
そんな子供たちはイチカさんの像に夢中です。
それとルナは興奮すると同じ言葉を繰り返す癖があるようだ。今度『抱っこ』って言ってもらおうかな。マールちゃんに怒られそう。
「何か不思議な感じだね。むず痒いって言うか。アタシの造ったものでこんなに喜んでくれるなんて」
「今までだって感謝されてたんですよ。知らないだけで」
「そうなのかな。話なんかしないからさ。出荷すればはい終わりって思ってたし」
頬を染めながらポリポリ頭を掻くイチカさんもどこか嬉しそうだ。
実を言うとマール似のちっぱい像が欲しいのはもちろんだったけど、サンやルナに見せれば絶対喜ぶと思ったし、それを見たイチカさんも造って良かったと思ってもらいたかったから。
その点に関しては捨てるんならお前のものは俺のもの作戦は大成功だったと言えるだろう。
「イチカ姉ちゃん! 僕のも造って!」
「るなも! るなも!」
「あたしも! あたしも!」
「へっへっへっへっへっへっ」
「うわあああああっ! ちょっとちょっと!」
何かイチカさんが三人と一匹に揉みくちゃにされとる。
サンとルナは分かるけど、ヴィヴィとバニラ何しとん。無理言っちゃダメでしょ。でもヴィヴィの像も見てみたい俺もいる。ちっぱいで仕上がるだろうし(興奮)。
って、あぁぁ…。
サンもルナもヴィヴィもイチカさんの服を引っ張るもんだからイチカさんのおへそが見える。俺はもちろん紳士なのでそんなイチカさんをガン見しています。
ってあら!? また画面(視界)が真っ暗に!? 前にもこんな事があったような!?
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でも確かヴィヴィの時はマールちゃんのおててが暗幕代わりだったので俺はまたこの暗幕を舐め回した。
「ひやあああっ!? だから大吾さん何で舐めるんですか!」
「飼い主の手や顔を舐めるのは愛情表現だから」
「いつわたしが大吾さんの飼い主になったんですか!」
「バニラみたいにペットになれば俺にもほっぺスリスリしてくれたり、お顔ペロペロしたりしても怒られないかなって」
「人としてのプライドはないんですか大吾さんには!?」
「果たして人はプライドなんて言葉を使える立場なのだろうか? 僕らは王者でも多種よりも優れているわけでもないと言うのに」
「何か面倒臭いですね今の大吾さんは。それにいつまで舐めてるんですか!」
「マールちゃんの手がふやけるまで」
「どんなお風呂ですか!?」
そんなの嫌です、と手を引っ込まれてしまった。
あぁまだペロペロしていたかった。マールの手だけを舐める仕事ないかな。流石に寝ないと倒れそうだから一日二十時間くらいまでなら働けますよ。
「そ、そそそれじゃあアタシはもう帰るね! バイバイみんな! その像は親父には内緒にしてよね!」
マールちゃんといちゃいちゃしてるとサンたちに揉みくちゃにされていたイチカさんがその手を掻い潜ってスッタターと帰って行った。
大丈夫だったかなイチカさん。すみません騒がしい子たちで。像ありがとうございます。
あれ? そういえばバニラはどこ行った? まさかイチカさんにくっついて行っちゃあっ。俺の裾齧ってた。
「本当によく出来てるねこの像。マールちゃんそっくり」
「ダイゴ兄ちゃん! 見てよこれ! 凄いよ!」
「だいごおにいちゃん! まーるおねえちゃんみたいだよ!」
俺もまだまじまじと見ていなかったが、改めて見ると本当によく出来ている。
髪や服に動きもあるし、マールそっくりな可愛い顔してるし、四肢も柔らかそうな線をしてるし、ちっぱいを隠すことのないポージングを選んだのは流石の一言。
そして神像と言うかフィギュアでの定番の確認――
「大吾さん? 何その像を下から覗こうとしてるんですか?」
「…」
くっ!
マールやヴィヴィだけなら『どんなパンツ穿いてるか確認してます(キリッ)』って言うのにサンとルナがいる手前言えない…!
サンとルナには俺は正に優しいお兄ちゃんで通ってるからな。失望させるわけにはいかないよ。え? 違くないでしょ?
しかし嘘は言えない俺。
なので何も言わない事にしました(マール流)。
「マール姉ちゃん。この像にお願いしたらマール様聞いてくれるかな?」
「え?」
「前にマール姉ちゃん言ってたじゃん。『困ったときはいつでもお祈りすればマール様は聞いてくれます』って」
あー。サンと初めて会った日の事だな。
サンに串焼きをあげてルナがいるから残りは持って帰るって言った時にマールが言ったんだ。
女神マールのご慈悲があらんことを、みたいな。
今まで普通に遊んでたからもしかしてって思ったけど、サンやルナにはマールは女神マールとは別者だと思われているようだ。
「…そうですね。女神マールは必ずやあなたの声を聞いてくれる事でしょう」
そして久しぶりの女神モード(?)のマール。
転移する前もそうだったけど、マールちゃん『女神』って言葉に弱すぎ…?
もしかして女神マールって呼べば何でもやってくれるんじゃないだろうか…? どきどき。
だがサンやルナのような純粋無垢な子供たちは大人の言う事は何でも信じてしまうので、像に向かってお祈りを始めた。
「マール様、パパとママに早く帰って来るようにお願いして下さい」
「ください」
しかも結構ガチなお願いされてしまっている。
いつもはあまり親の事を口にしないサンとルナだけど、やっぱり本当は寂しいんだろうな。
子供には親が絶対に必要なのだ。
しかしいくら女神マールちゃんと言えどこればかりは、と思ったその時。
バンッ!!!
という音と共に廃教会の入り口扉が開かれた。
まさかな、と思って皆で入り口を見てみると息を切らせているスズランが膝に手を付いて立っていた。
どうしたのスズランちゃん、そんなに慌てて大汗かいて。
冒険者ではない普通の受付嬢であるスズランが息を切らせてるのは珍しい。そして色っぽい。
「み、見つかったわ」
「え?」
はぁはぁ言いながらも声を絞り出すスズラン。
見つかったって何が? 俺に変態容疑をかける元凶となった黒フードの男?
「今さっき隣街‶シルヴェストリ″のギルドから手紙が届いて。ミスニーハの冒険者二人を保護したらしいの。‶おりおん″と‶こめっと″って名前の冒険者。聞いた事、あるわよね?」
「パパだ!」
「まま! まま!」
「えっ」
マジで女神マール様のご加護があったのか…?
言った本人であるマールちゃんですら口開けてポッカーン顔してる可愛い。肉まん詰めたい。
皆さまにもちっぱい女神(?)マールのご加護があらんことを…!




