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大吾とクラン④

●前回のあらすじ●

大吾さんはマールとヴィヴィとスズラン―――――が大好きだった。



 李下に冠を正さず、と言う諺をご存じであろうか。

 りかにかんむりをたださず、と読み、(スモモ)の木の下で冠を被り直そうと手を上げると、実を盗むのではないのかと疑われるから、そこでは直すべきではないという意味。

 つまりは人から疑われたくないのなら疑いをかけられるような行動は避けるべきである、という例え。

 さて。

 何故こんなQさまや東大王くらいしか出てこなそうな諺を言い出したのか説明しよう。

 実は俺氏、現在全く身に覚えのない罪で女性冒険者から軽蔑の眼差しを向けられてますのん。

 おい待てコラ。

 何だその目は。俺が君たちに何したっていうんだ。

 一緒にギルドに入って来たマールたちも『えっ…』って言いながら俺から一歩距離を取ったんだぞ!

 やめてくれよマジで!

 これ以上俺の評価を下げないでおくれよおおおおおっ(魂の叫び)!!!

「しらばっくれても無駄よ! あなたが犯人だって事は分かってるんだから!」

 そう言う女性冒険者だが、全然喋った事も無いし寧ろ見た事も無い。

 正にアンタ誰? 状態。

「私は‶タワワニ・ミノル″のリーダー『ニュウバック』! ギルドからのクエストによりあなたを拘束するわ!」

 タワワニ・ミノル!

 俺にクラン加入要請をして来た所のリーダーか! そして他意しかないクラン名の名づけ親か!

 クラン加入案内の紙に全員DカップだかEカップ以上って書いてあった気がするけど、このニュウバックさんは鉛筆の濃さなんかで知られるアルファベットくらいありそうですね(真顔)。

「えっと、マジで分からないんですが。そもそもクエストって何です?」

 ハテ? する俺。需要は無かった。

 てか何すか本当に。

 クエストだの拘束だの。穏やかじゃないですねぇ。

「これよ」

 リーダーのニュウバックさんの隣から出て来た女性冒険者三名。この人たちもタワワニ・ミノってる。

 ちなみにリーダーのニュウバックさんはちっぱいレベル‶0″。逆に凄いお胸様をお持ちであった。

 その他取り巻きの三人は10前後。ふーん(興味なし)。

 そんな取り巻きが出して来たのはクエストの用紙。

 どれどれ? 一体どんなクエスト内容なのだろう。この俺に無実の罪を着せるクエストは。




【謎の黒フードの男を捜せ!】


 依頼主:匿名女性市民、商人、冒険者数名


 適正ランク:D以上


 エリア:ミスニーハの街


 報酬:犯人を特定した場合50パルフェ


 内容:黒フードの男の捕縛


 依頼主コメント:最近夜に街を歩いているといきなり目の前に現れて顔と胸を見てくる男が出るの! 気持ち悪いからその男をとっ捕まえて懲らしめて!




「大吾さん? やっていい事と悪い事がありますよ?」

「ダイゴ、面会には毎日欠かさず行くから」

「だいご。牢屋の暮らしも悪くないかもしれないわ。でもそうなると折角立ち上げたこのクランも活動停止か解散ね」

「ちょーぃ! 君たち!? 何かもっとこう、俺を庇うような事を言わないの!? 仲間内からも犯人扱いされてるの!?」

 お願い待って見捨てないで!

 マールちゃん、信じて。俺本当にやってあ、あれ? 何かわざとらしく口笛吹いてる…。あっ、もしかしてチューしてほしいのかな!? マールちゃん相手なら俺は耳で呼吸するよ!

 ヴィヴィはヴィヴィで難しい顔(可愛い)してうんうん頷いているし、スズランは『前科の一つや二つあった方が男らしいわ』とか言っちゃってるし。

「あなたが女性冒険者や女性市民、商人の胸をいやらしい目つきで見ているのは確認済み! よってあなたを犯人として拘束するわ!」

「ちょちょちょ! 一体誰に確認を取ったのかは知らないけど、そんなもん言いがかりで」

「確認が取れたのは匿名ガンナーの子、匿名ですのの子、匿名武闘家の子よ」

「匿名なのに皆分かる不思議」

 何でだろう。最近会ったような気がするよこの子たち。

 てか匿名ですのの子って。

 アンナじゃん。

 あのアホ、正体隠す気無いじゃん。

 ちなみに匿名武闘家の子って聞いただけで背筋が凍ります。何故かしら?

「大人しく捕まる事ね! これ以上罪を犯して牢生活を延ばしたくはないでしょ!?」

「確かにその人たちの胸を見たりしたような気はする。つか見た」

「やっぱりあなたが犯人で」

「しかーし!!!」

「ひっ」

「俺が夜に出歩く時は必ず嫁のマールと一緒だ! 嫁の前で他の女の顔や胸を見るだろうか? いや見ない!」

「大吾さん? わたし以外にマールって名前の女の子のお嫁さんがいるんですね。だってわたし嫁じゃないですし」

 俺の渾身の反語が通じないちっぱい天使マールちゃん。

 いやいや。俺の知ってるマールって名前の天使はマールちゃんだけだよ。

 俺の将来の夢はマールの旦那さん(キャッ♡)。

 しかしニュウバックさんは全く聞く耳を持たない感じだ。

「街で黒フードの男が出るのは本当なのよ! でもなかなか捕まらない! だからあなたが犯人で一件落着でしょ!?」

「どんなデカイ穴の開いた推理してんだあんた」

 子供になった高校生探偵も爺ちゃんが凄い高校生探偵もそれこそシャーロック・ホームズもビックリだよ。

 もし命懸けの学級裁判でそんな推理したら硬球で千本ノック受けたり、バターになったり、火あぶりにされたりのフルコースを喰らうよ? 弾丸で論破されるよ?

「第一、俺は黒フードなんて持ってないし」

「そんなのいつでも用意出来るし処分出来るわ!」

「第二、俺は胸は見ても顔は見ないし」

「正直なのはとてもいいけど気持ち悪っ!」

「そもそも誰なんだよこの依頼した匿名女性って」

 名前隠して依頼するならもっと犯人の特徴を教えろよ。

 何なんだよ『黒フードの男』って。こんなん黒フード被ってる奴捕まえたら即終了じゃねーか。冤罪祭りになるわ。

「くっ…! ここまでしらばっくれるとは…!」

「いや、そもそも犯人じゃないし」

「しょうがないわね。名前は出したく無かったんだけど、この際よ。この匿名の冒険者の中には私も入っているわ!」

「は?」

「私も会ったのよ黒フードの男に! 夜! いきなり目の前に現れて顔を見られたと思ったらすぐにどこかへ行ったけど!」

「えっと…、胸を見たっていうのは…」

「同じように顔を見られた女性たちは皆‶巨乳″なのよ! だから胸も見たに違いないわ!」

「それは違うよ!」

 論 破 !

 キタコレ!

 思わぬ所に突破口! クモの糸! 途中で切れたりしないでね?

 なので俺は自分が無実である理由を言う事にした。

「そもそも俺は巨乳を見」

「それなら大吾さんは犯人じゃありません! だって大吾さんはお胸が小さい女の子にしか興味がありませんから!」

「そうだよ! ダイゴは巨乳の女の子より胸が小さい女の子が大好きで仕方ない男なんだから!」

「あなたは知らないでしょうけどこの男が一日に何回私たちの胸をチラ見してくるか教えてあげましょうか? 三人合わせて平均790回よ。それに比べて誰とは言わないけど巨乳のお姉ちゃんは1回だけ。この差こそ今回の事件でだいごが犯人じゃない事の証明になるはずよ」

「ねぇ君たちさ。庇ってくれるのは嬉しいんだけど、あれ? 庇ってるのかな? 俺は今どうなってるの?」

 やっと希望の光が見えたと思ったら一気にどん底だよ俺は。

 でもいいか。だって俺はミスニーハの街では既に変態冒険者で通ってるしね(開き直り)!

 それとスズランちゃん? その誰とは言わない巨乳のお姉ちゃんには絶対今の話しないでね?

「で、でも…じゃあ一体誰なのよ。黒フードの男は」

「そんなん知らねーよ。クエスト受けたお前らで勝手に探してくれよ。俺を巻き込むんじゃねーよ。俺はこれからクランの皆に昼飯奢らなくちゃいけないんだから」

 ちなみに奢る人はじゃんけんで決めた。

 四人でじゃんけんするとなかなか決まらないのでマールとスズランはヴィヴィに代表でじゃんけんをやってとお願いしたので、俺とヴィヴィの戦いになった。

 ふっ。俺はじゃんけんで負けた事がない鬼畜の緑ジャージ先輩を知ってるんだぞ?

 ‶俺、じゃんけんで負けた事ねーから″の構え。負けるわけがねぇ。

 と、思ってた時代が俺にもあって、結果は三回勝負で三連敗。

 ふぇぇぇ…ヴィヴィちゃん強いよぉ…。

 と、思ってた時代が俺にもあって、ヴィヴィの奴‶反応″のスキルで俺の僅かな筋肉の動きに超反応して出す手を変えてやがった! ちくしょうきたねぇ! そんなんチートやん! チーターやん! ヴィヴィはパンサーでしょ(ドヤァ)!?

「わ、分かったわよ。疑ったりして悪かったわね」

 そう言ってタワワニ・ミノルたちは去って行った。

 ふぃー。疑いが晴れてよかったぜ。

 冤罪で捕まってマールちゃんに会えなくなったりしたら気が狂ってたかもしれないからな。

「良かったですね大吾さん! 小さいお胸が好きなことが功を奏しましたね!」

「あたしは最初から信じてたよ! ちっちゃいのがいいんだもんねダイゴは!」

「毎日毎日飽きもせずギルドでも街中でもちっぱい女子を見ていた甲斐があったわね。まさかそれが決定的な証拠になるだなんて驚きよ」

「お前ら三人には後で個別に話がある」

「ひっ」

 疑いは晴れても軽蔑の眼差しと変態としての地位は返上されないんだよなぁ。

 でもいいや。俺はそんな視線とか周りの評価なんか気にしないし。

 三つ輪のクローバーが解散しなかった事が一番嬉しいんです。

 ちなみにその日の昼飯は四人で25パルフェ(2万5000円)だった。どんだけ食うの君たち(二人)。俺はもう二度と昼飯、というか飯を奢るじゃんけんはやらないと心に誓った。




  ―――




 昼飯後、スズランは受付嬢の仕事へ、ヴィヴィとマールは廃教会にいるサンルナ兄妹とバニラへ昼飯を届けに行くため一度別れた。

 ヴィヴィとマールに食い物を買いに行かせると廃教会に着くまでにどんな寄り道をするのか分からないので、俺が昼飯を買ってそれをマールたちに届けてもらうようにしたのだ。

 いくらマールたちでも子供やペットのご飯までは取らないだろう。…取らないよね? 今日は皆いなかったよ、とか言わないよね?

 そんなこんなで一人になった俺はケイの店『ねぇものはねぇ』まで来ていた。

 特に装備の新調や道具の買い足しというわけではなく、ケイに俺たちの‶三つ輪のクローバー″に入らないか聞きに来たのだ。

 ちっぱい大好きなケイの事だ。返ってくる言葉は予想通り、


「すまんダイゴ。俺はお前らのクランには入らない」


 だった。

 えええええ。

「いや、別にお前たちだから断ってるってわけじゃないんだ。今までも何回か有名処のクランに加入の話は貰ったけど、全部断ってるんだよ」

「そうなのか。しかし何でだ? 有名クランに入れば店の売り上げだって良くなるだろ?」

「金じゃないんだ。俺は昔、一緒にクランを作ろうと話した子がいてな。その子の帰りを待ってるんだよ」

「えっ。何その白馬の王子様を待つお姫様みたいなの」

 ケイちゃん夢見る男の子だったの?

 でも夢の国提供の映画は男はヒロインになれないんだよ? こんな事言っちゃって大丈夫かな。消されたりしないかな。ギリギリを行くスリルがたまらないんだよ。

「何とでも言えよ。お前だって聞けばマールさんが決めたクラン名の為に合併の話を全部断ったっていうじゃないか。似たようなものだろ」

「確かにな。すまんケイ、俺が悪かった」

「気にすんな。俺も悪かったな。折角のお誘いなのに断ってしまって」

「ちなみにその子ってちっぱい?」

「もちろんちっぱいだ」

「ならしょうがない!」

 ガシッと握手を交わす俺たち。やはり俺とケイは親友だった。

 ちっぱい女子にこの身を捧げるのは男として当然だからな。

 ケイは男だった。それだけだ。それだけで十分な理由だったんだ。

「で? そのちぱ子はいつ帰ってくるんだよ」

「ちぱ子って、…いいなちぱ子! 俺もこれからちぱ子って呼ぼうかな」

 ちっぱい女子、ちっぱいガール、ちぱ子、皆さんはどの呼び方をしていますか? ちなみに俺は全部です。その時の気分です。

「ある日突然消えてしまってな。今どこにいるのか全然見当がつかないんだ」

「えっ」

 消えたって何ですか消えたって。

 俺はてっきり幼い頃に約束した錠のネックレスと鍵的なアレかと思ったのに。偽の恋でも本物の恋になる的なアレかと思ったのに。

「何かそのちぱ子の気に障るような事言っちゃったんじゃないのか?」

「うーん…」

 余計なお世話と思ったが、全てのちぱ子が幸せに暮らせる世界を目指している俺にとっては放ってはおけない。

 二人で一緒にクランを立ち上げる約束をするような仲ならお互い悪しからず思ってる筈だしな。

 俺はケイ×ちぱ子のカップルを応援します!

 でも意外だな。

 てっきりケイは天使捜索クエスト出すくらいだからマール狙いかと思ったのにそんな嫁候補がいたなんて。

 まぁ爽やかイケメンの甘いマスクしてるからね。A級一位だからね。嫁候補くらいいるよね。

「実は俺もミスニーハの街に来たばかりの頃は冒険者でな」

「マジか」

 全然見えねぇ。

 華奢だし、色白だし、イケメンだし(妬み)。

「全然柄じゃないのは分かってるよ。ランクもDに上がったはいいけどそれからはもうクエストのリタイア続きでな」

「他人事じゃなく聞こえるよ」

「お前は大丈夫だよ。マールさんがいるからな。マールさんを守る為ならどんな事でもやってくれそうだし」

「マールに手を出そうものなら神をも屠るからな」

「はは。そういう奴だな、ダイゴは。で、そのクエストのリタイアが続いたもんだから金が無くなってくるだろ? そこで一緒にクエストに行ってくれるパーティーを募集したんだよ、ギルドで」

「ふんふん」

「その時一緒に行ってくれたパーティーっていうか既にクランだったのかな? それがタワワニ・ミノルって人たちで。聞いた事あるか?」

「よりにもよってあの爆乳のニュウバックがリーダーのクランかよ。俺さっき濡れ衣着せられたわ」

 爆乳のニュウバックって凄い響きだな。

 皆さんは何でタワワニ・ミノルのリーダーがニュウバックって名前か分かってました? そういう事ですわ。

「相変わらずのようだな。たまに店に来るけど正直ウンザリしてるんだ。素直でいい人たちなんだろうけど、自分たち中心というか、人をからかう癖があると言うか」

「分かるわー。俺に対してなんてからかうレベル通り越して犯人扱いされてたしな」

「犯人? 何のだ?」

「なんか最近夜になると黒フードの男が女市民や冒険者の前に現れては顔だけ見て立ち去る事件? が起こってるんだと。んでそれが俺だろって。ついでに胸も見ただろって」

「ハハハ! 確かに普通の男ならあの大きな胸に釘付けだろうけどダイゴじゃな。犯人にする相手を間違えたな」

 ケイ、お前もか。お前もマールちゃんたちのように俺を慰めるようで慰めないパターンか。

 俺だってたまには優しくされたいよ。

 マールちゃんによしよしされたいよ。

「んで? そのタワワニ・ミノルとのクエストで何があったんだよ」

「いや、特には何も無かったんだよ。普通にクエスト達成して終わり。でもギルドに帰ってくるとそのちぱ子がいなくなってて」

「ふーん? 謎だな」

「謎だろ? タワワニ・ミノルのメンバーたちに聞いても知らないって言うし」

「その後はちぱ子を探しつつ、何でも屋を開いて帰りを待ってる感じか」

「そんなところだ。アイテムクリエイトっていうか、そっちの方が俺に合ってたようだしな」

 なるほど、わからん。

 黒フードの男といい、ケイの嫁(予定)のちぱ子失踪といい、前に聞いた黒い翼を持つ悪魔といい、ミスニーハの街にはよからぬ何かが住み着いてるんじゃないだろうか。

 もしそんなのが本当にいたら俺は全力で逃げますがね。怖いのはごめんですわ。お家に帰ってマールちゃんに『怖いよぉ』って抱きつきますわ。








「ふぁっ。だいぼふぁんおふぁなしおわっふぁんでふか?」

「マーリュふぁん、これもおいふぃーよ」

 ケイの店から出たら近くのベンチでマールとヴィヴィが揃って中華まんみたいのをフルもっふしてた。

 ミスニーハの街にはフルもっふ族であるマールとヴィヴィが住み着いていた。

 俺が渡した串やの飯がまだあるんですがそれは…。

 俺と別れたのはその中華まんを買いに行くためだったのね。

 フルもっふ顔は可愛いし、子供たちのご飯を食べてないのは偉いけどお腹空かせてるだろうし早く行きますよ。

 あれ? マールちゃんもヴィヴィも口の周りに肉と餡子とピザソースとカレーが付いてるけどまさかね?

 でもよく見たらまだ中華まんが残ってるらしいので子供たちに買ってあげたのか。

 なら尚更冷めないうちに早く行こう。

 あまり時間をかけるとフルもっふ族に全部食べられてしまうから。

 っと、教会に行く前に目の前のフルもっふ族の二人の顔を綺麗にしよう。

 拭いた後の照れた顔が可愛いフルもっふ族なのであった。



フルもっふ族はどの世界でも可愛い正義

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