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大吾と噂②

●前回のあらすじ●

マールとヴィヴィはチューチュー可愛いちっぱい女子だった。



 ヴィヴィが仲間に入って数日が経ち、俺とマールも異世界の生活に少しずつ慣れ始めてきた頃、街はある噂で持ちきりになっていた。


 ‶黒い翼の悪魔を見た″と。


 数人の目撃情報があるし見間違いでは無いだろうというギルドの判断から、万一の時は一人で立ち向かわず仲間を頼るようにと冒険者全員に警告されたのだ。

 まだ被害報告は出ていないし、目撃場所もバラバラな事から噂の域を出ないでいるが、火の無い所に煙は立たないし警戒しておくに越したことはないとのこと。

 ちなみに目撃者の証言での‶黒い翼の悪魔″の容姿や目撃場所はと言うと。


 容姿…金髪、短髪、人型、男、華奢、黒い翼

 目撃場所…街の各所、街周辺の草原、エメラルドマウンテン


 の以上であるが、それら全て目撃したのは夜間で、本当に悪魔なのかは実際分からなかったらしい。

 しかし噂は独り歩きするもので、色々な目撃情報が合わさって‶黒い翼の悪魔を見た″という噂が現在ミスニーハで持ちきりになっているようだ。

 悪魔という事もあって身の危険を感じている人も多いらしいが、魔族の王であるヴィヴィ曰く、


「黒い翼を生やした魔族なんて見た事ないよ。魔族って言っても人型になるとその種の特徴は消えちゃうし、見間違えじゃないのかな」


 との事。

 確かに豹人族であるヴィヴィにしても細部(意味深)まで見たわけではないから分からないが、一見すれば普通の人間と変わらない。

 他の魔族にしても同じだと言う。

 多少の身長の高低差や体付きの違いはあるものの、基本的な外観は人のそれと変わらないらしい。

 よくオカルトや漫画、アニメなどで見る人間に翼が生えた状態での悪魔というのはそもそもが存在しないようだ。

「そもそも‶悪魔″って言葉が気に入らないんだよね」

「まぁ、ヴィヴィからするとそうだろうな」

 悪魔という言葉があるがために魔族は人々から忌むべき存在であると思われているわけだし。

 でも最近の漫画やラノベでは悪魔や魔族が可愛い女の子で登場してるし、イメージも昔と比べて変わっては来ているが、異世界の人々には通じないだろう。

 あっ。目の前に可愛い魔族のヴィヴィがおった。

 ヴィヴィがいれば魔族も全然受け入れられるんじゃね?

「マールにもちょっと聞きたいんだけど」

「なんれふか。だいぼふぁん?」

 俺とヴィヴィが話してる隣でマールはだんだん焼きをフルもっふしていた。本当に可愛い子。お口の周りがソースだらけ。俺はタオルでマールのお口を拭き拭きしながら小声で聞いてみた。

「異世界転生とか転移って神だけの特権なのか?」

「んっ。ありがとうございます、大吾さん。…え? どういう事ですか?」

 ソースを拭かれて照れるマールとハテ? するマール、どっちが可愛いかと問われたら俺は三日三晩悩む自信がある。

「いや、だからさ。俺がこの世界に転移したのは創造神様が送ったからだろ? 寿命まで生きてもらうとかで」

「そうですね」

「その権利って言うか、死者の案内? は全部神がやってるの?」

「えっと」

「善人は天国へ、悪人は地獄へって話もあるし、創造神様は本当に全員案内してたのか? そもそも死者は全員天国へ行くのか? 地獄は本当にあるのか? もしあるなら地獄も創造神様が見てるのか?」

「えっとえっと」

「もしかしたら異世界転生地獄版みたいのがあって、俺とマールみたいに悪魔と言うか、地獄の使者と一緒にこの世界に来た奴もいたりとかするのか?」

「ごっ、ごめんなさい。わかんないです…」

 ぶぇぇぇぇと泣き出しちゃったマールちゃん。

 あぁぁ…、質問攻めにした俺が悪かったよ。ごめんよマールちゃん。

「あぁよしよし。泣かないでマールちゃん。ダイゴ、女の子泣かせちゃダメだよ」

「正直すまんかった」

 まさか泣いちゃうとは思わなかったんだよ。

 でも泣いてるちっぱい天使をあやすちっぱい魔王…、この絵はとてもいいと思います。

「えっとっ、わ、わたしも、くっ、詳しい事はわかりませんが、創造神様は最高位の神様ですけど、同じ位の神様も他にいらっしゃるので、全員の案内を、そ、創造神様だけでやってるというのは、ない、と、思います。地獄という場所がある、という話はわたしは聞いた事が、ないです。あるかもしれませんし、ないかもしれません」

 すんすん泣きながら、つっかえながらマールは答えてくれた。

 なんて健気な子。俺もよしよししたい。抱きながらよしよししたい。

「そうか。ありがとうマール。ごめんな」

「いえ…」

 マールも泣き止んで笑ってくれた。心の傷が一瞬で全快した。

 そして二人のおかげで分かったことがある。

 ‶黒い翼の悪魔″の正体は魔族ではないこと。

 俺とマールのようにこの世界に転移してくる者は色々な神が関わっていること。

 そして地獄はあるかもしれないということ。

 まぁ仮にその黒い翼の奴がいても悪さしてるわけじゃないみたいだし、特に気にする必要もないのかもしれないけどね。




  ―――




「あ、だいご。またクランの参加希望案内来てるわよ」


 そういうこの子はスズラン。

 ギルドの受付嬢でユリさんの妹。お互い綺麗で可愛く人気があることから‶二輪の花″と呼ばれている。

 ちなみに歳は16歳。真っ白な肌に真っ白な髪の毛で、服装も特注の真っ白なギルドの制服を着ている全身真っ白な女の子。

 性格も外見同様純粋無垢で清楚な子、かと思いきや結構な毒舌を持ってる事があるらしい。

 そのギャップに一部のファンから根強い人気を誇っており、スズランが非番の時はクエストを受けない冒険者がいる程とか。

 ちっぱいレベルは88。駆け出しちっぱニストは致死量レベルの猛毒を持つ。

 しかし俺の中ではまだ16歳で年相応のお胸様という事で、年は八つ差とちょっと離れてはいるが妹のようなポジションになっている。

 スズランとの出会いは数日前なんだが、それはもう強烈なインパクトだった。

 以下回想。


『すみませーん。このクエストお願いします』

『ん。…ダイゴ、アオキ? あなたがあの‶だいご″? お姉ちゃんから話は聞いてるわ』

『え? お姉ちゃん? …あー、もしかしてスズランさん? ユリさんの妹の』

『…』

『…あの?』

『スズラン』

『ん?』

『スズランって呼んで』

『スズランさんでしょ?』

『‶さん″はいらないわ。スズランって呼んで』

『ス、スズラン?』

『ん。だいご』

『えっと、スズラン…は、あの大吾ってさっき言ってたと思うんですけど、ユリさんには何て聞いてるのでしょうか?』

『私は16歳。だいごより年下だから私に敬語なんて使わないでいいわ』

『あ、そ、そうなんだ。じゃあ、うん。普通にね、普通に』

『ん』

『で、何て?』

『最近入ったダイゴさんって方がギルドに来たらよろしくね。でもスズランはダイゴさんの好みど真ん中だから手を出されないか心配だわって』

『よろしくしてくれるのは嬉しいんだけど、俺だって誰彼構わず手を出してるわけじゃないからね? ちゃんとポリシーを持って生きているんだ』

『だいごは私に手を出さないの?』

『まだ16歳でしょ? 出さない出さない』

『17歳になったら?』

『出さない』

『18歳になったら?』

『出さない』

『19歳』

『出す』

『じゃあ三年後にもらってね』

『ちょっと待って? 何でいきなりこんな話になってるんだっけ? 俺とスズランって初対面だったような気がするんだけど』

『お姉ちゃんが仕事終わって家に帰るとだいごの話よくして来るから気になってた。それで今日会ってみてだいごも私の事気に入ってくれたみたいだからいいかなって』

『えっと? 何で俺がスズランの事を気に入ったってわかるの?』

『ギルドに入った時からここに来るまでの10分間で200回以上私の胸をチラ見して来たから。あんなに熱を帯びた視線向けられた事なかったからどんな人なんだろうと思ったけど、ギルドカード見てなるほどなって思ったわ』

『すみませんでした。受付に可愛いちっぱい女子がいたから気になって仕方がなかったんです』

『じゃあどうする? 今すぐやる?』

『何をやるのかは敢えて聞かないけどやらない』

『じゃあ三年後まで待つ』

『いやあのな? 俺には既にマールちゃんという心に決めた人がいてだな』

『でもさっき19歳の私には手を出すって言ったわ』

『言ったね』

『手は出すけど本気じゃないから食うだけ食って終わりってこと?』

『表現が生々しい上にただのクズ野郎じゃねぇか誰だそいつ俺だ』

『嫁が妊娠したら性欲の捌け口が無くなるからその間だけ私に愛してるって嘘言って欲望の限りを尽くすってこと?』

『全女性の敵じゃねーか。昼間でも正面から刺されるレベルだけどそれは俺じゃない。俺は嘘はつかないから』

『…へぇ。じゃあ19の私に手を出すのは嘘じゃないのね』

『あっ。いや、それはその、言葉の綾というかストライクゾーンの話というか何というか』

『それに可愛いって言ったわ』

『可愛いは認める』

『だいごも普通よ』

『お前も嘘つけないタイプだな。親近感が湧くわ』

『じゃあどうする? 今すぐ孕ませる?』

『今度は分かり易すぎて耳を疑ったよ。嫁以外誰も孕ませません』

『一番最初に孕んだ女が嫁ってこと?』

『俺も話聞かないタイプだけど、お前も大概だな』

『ますます似た者同士ね』

『そうね』

『でも噂だとだいごは今、嫁と一緒の部屋に住んでて夜はお預けされてるって』

『嫁が冷たくて寂しんだ。この前なんて自作のイエスノー枕作ったのに裏返せないようにノーを上にして敷布団に縫い合わされてたし』

『そんなにお預けされて特濃になったの注がれたら一発だと思う』

『ねぇこの話もう止めない? 気付いてるかどうか分からないけど、さっきから他の女冒険者やギルド職員や、何より後ろの二人からの視線が体中穴だらけになるくらい刺さってるんだ』


 以上回想。

 16の女の子となんつー会話してるんだと思うほどの強烈な出会いだった。

 その日のクエストでマールはずっとヴィヴィと話してた。

 風呂に入って宿に戻ると敷布団からイエスノー枕が外されてて『待ちに待った時が来たのだ!』って思ったけど、表裏両面ノーのノーノー枕になってた。マールはいいピッチャーだった。

 そんなこんなでスズランとは最近よく話すようになったのだ。

「大吾さん。‶クラン″って何でしたっけ?」

「クランって言うのは、そうだな。チームみたいなものかな。ソロの冒険者では達成できないクエストを力を合わせてクリアするみたいな。もちろんクエスト外でも商人や料理店と契約して物を仕入れる代わりに装備や食事を安く提供してもらうとか」

「へー。そうなんだ。あたしずっとソロだったから知らなかったよ」

「まぁヴィヴィは一人でも全然強いからな。普通は協力しないとクリア出来ないのもクリアしたって話だし」

「へへ」

 照れて笑うちっぱい魔王、いいですね。

「それに有名なクランになればクエストの依頼が受けやすくなるのもメリットの一つね。クエストボードに貼り出されているクエストはみんな、‶フリー″のクエストだもの」

「フリー?」

「クエストを申請する際にギルドは依頼主にどういう冒険者に受注してほしいか聞くのよ。それで名のあるクランなら指名されるし、信用もあるから報酬上乗せって事もあるの。フリーっていうのは誰でも受けれるけど報酬が少なかったり、急ぎのクエストなんかがほとんどね」

「指名されたらされたでその分責任も出てくるけどな。今の俺たちみたいに二日に一回クエストに行くってクランじゃまず指名なんかされないよ」

「だから今ギルド内じゃ自分のクランにだいごを入れようとしてる人でいっぱいになってるのよね」

 そう言うとスズランはニヤっと悪戯っぽく笑った。

 この子また変な事してないだろうな。

 前なんかユリさんに『だいごから熱いの貰った』って言ったらしくて、何を勘違いしたのかユリさんは俺に『手を出すの早すぎです』って言ってきたし。熱いのは視線です。主にお胸への。

「だいごはヴィヴィゲームクリアしたって噂になってるし、そんな人がクランにいれば依頼主も安心だからね」

「ほぇー。凄いじゃないですか大吾さん! 大人気ですね!」

「全然嬉しくない。マールちゃんやヴィヴィと気ままに一緒にルンルンしてる方がずっといい」

「あたしもクランに入ってって言われるけど断ってるよ。今のままの方が全然気楽だもん」

 ヴィヴィはAランカーだからな。

 どんなクランも喉から手が出るほど欲しいだろう。

 街のみんなからも人気が高いしね。

「で、今回の案内は何件来てるの?」

「今回は二件ね。断るにしても一度は内容を確認してもらうわよ。こっちも仕事でやってるんだから」 

「わかってるよ。二件ならそんなに時間もかからないだろうし」

「そうなんですか?」

「ヴィヴィゲームやった次の日なんか二十件くらい案内来たな。全部断るのに一時間くらいかかった。マールとヴィヴィは集会所で飯食ってたから知らないだろうけど!」

 俺も一緒にちぱ飯したかったのに。

 正確にはほっぺたパンパンの二人が見たかったのに。

「じゃ、だいご。これ今回の案内ね。二件。ちゃんと目を通して返事するように」

「うす」

 まぁ結局は断るのでサラッと流し見でいいだろう。

 どれどれ? と、俺はマール、ヴィヴィと一緒に内容を確認した。

 二人とも顔を寄せて来たのでいい匂いがたまらんかった。




 クラン『タワワニ・ミノル』


 現在女性冒険者4名。全員Dランク、Eカップ以上です♡

 男性冒険者は募集していなかったのですが、ヴィヴィさんに勝てる男性なんて素敵ですし是非私たちに色々と教えていただけませんか?

 宿屋は四人部屋ですけど女の子しかいないのでベッドを寄せれば五人くらいなら寝れると思いますし!

 ランクはまだまだ低い私たちですが一緒に強くなれたらと思います! 良い返事をお待ちしています♡




 ぴらっ。

 無言のスルー。

「大吾さん? 何となく予想は付きますけど何で完スルーなんですか?」

「一行目は読んだ。本当だよ」

 大体なんだよ『タワワニ・ミノル』ってクラン名は。異世界ネーミング死に過ぎだろ。

 この子ら完全にエロで誘ってるじゃねーか。そのバインバインなアレで誘ってるじゃねーか。

 誰も彼もがパイの実好きって思うなよ?

 しかも何だかんだ言って結局は触らせもしないやつだろコレ。

 俺の暗黒時代の時に何度ネットのサイトに引っかかって家に電話がかかって来たことか。

 ごめん親父。金を払てくれてありがとう。あと、死んじゃってごめん。俺は元気でやってるよ。

「ダイゴを誘うならB以下じゃないとね」

「ヴィヴィちゃん? 以上でしょ? ランクの話だよね?」

 カップの話なら合ってるけど。

「二件目はどんなクランですか?」

「どれどれ」

 じっと確認。

 両隣の二人はリンゴとミカンでヤバババーン。




 クラン『かいならや』


 男冒険者4名。全員Cランク。内訳は攻め3、受け1(療養中)。 

 ダイゴくんはどんな攻撃でも耐えれる屈強な男だと聞いた。

 私たちは皆攻めが得意なんだが受けが苦手で、唯一の受け担当も体調不良で療養中なのだ。

 私たちは君を求めている。

 クランに入ってくれた暁には全力で歓迎しよう。

 屈強な体を持つ総受けの君が先頭に立ち、私たちは後方より入れ替わり立ち替わり休みなく攻撃を続ける事を約束する。

 最初はキツイだろうが、必ず慣れるので安心してクランに入ってくれ!




 俺は案内の紙を粉々に破り捨てた。

「あー! 大吾さん何で破いちゃうんですか! 大吾さんなら体も丈夫だしぴったりなのに!」

「ち、違う…、違うんだマールちゃん…。このクランは違うんだよマールちゃん…」

 ガタガタ震える俺。

「受けがいないんじゃ皆でモンスターに攻めて攻めて攻めまくればいいのにね」

「モンスター相手じゃないんだよヴィヴィちゃん…。理由は療養中の受け担当が知ってるよ。多分痔だと思うけど…」

 ガタガタ震えが止まらない俺。

「私が誘っても乗ってこないからてっきり男が好きなのかと思ったわ」

「やっぱりお前が変な噂流したんだなスズラン、コラ」

 俺が好きなのはちっぱい女子なんだよ。

 男は友情だけでいいんだよ。やっても握手が限界だよ。それ以上は無理なんだよ。尻は出すだけで入れるのは無理なんだよ。

 つか今日の案内は二件だけだけど両方ともろくなのじゃねぇ。怖ぇよ。巨乳女子も攻めの男も。

「ならいっその事、自分でクランを作っちゃえば?」

「「「えっ?」」」

 スズランの言葉を受け、俺とマール、ヴィヴィの三人は同じ反応をした。仲良しで嬉しかった。

 やっぱり俺はちっぱい女子と一緒じゃないとダメなんだと改めて思ったのと同時に、噂の恐ろしさを知ったのだった。



オラは正月の朝からなんつーもんを書いてるだ…

これも徹夜テンションのせいおやすみ

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