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私のわがままな異世界転移   作者: とみQ
間章 2 椎名と工藤の腕試し
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椎名と工藤の腕試し8

俺は椎名との作戦会議を終えて、再び地上へと着地した。

やっぱり俺は空よりもこの地上が落ち着く。

しっかりと地に足を着けて、地面を通して周りの情報を得つつ、新ためてヤツを見据えた。

空にいる間、やけに大人しいと思ったら、金属野郎はひしゃげた腕や首がすっかり元に戻っていた。

どうやらこのちょっとの間を修復に当てたのだろう。面倒くさい奴だ。


「まあいいさ、どうせぶっ壊すだけだ。第二ラウンドと行こうぜ」


俺は再び意識を集中させ足元にある土を操った。

砂塵を再び腕に纏い、それらはざらついた音を立てながら、俺の戦いの道具となる。

金属野郎は戦いの再開と共にこっちに突っ込んで来るかと思いきや、趣向を変えたのか、手の平をこちらにかざした。

魔法を放つのかとびびったが、手の平から放たれたのは金属の弾丸だ。

奴の手から数発こちらに向けて射出されてきた。


「うあっ!?」


一瞬にして彼我の距離を埋める弾丸に、俺は慌てふためいたが、何とか砂の膜を展開し防いだ。

バスバスと音を立てて砂の防御膜にぶち当たる。

威力はさんなに高くない。


「!!」


だがその隙をついて金属野郎は場所を移していた。

一瞬目を離した隙に俺の後ろにまで。中々のスピードだ。

拳の乱打が浴びせられて俺は肝を冷やす。

だが対応出来ない程じゃない。

普通のヤツならまともに食らっていただろうが、足元の地面を通してヤツの動きを把握しているのだ。

目を離したところで奴の動きは手に取るように分かる。

俺は金属野郎の拳を前に飛んで難なく避わす。

奴はそれが意外だったのか、渾身の一撃をあっさりと避わされて、勢い余って前につんのめった。

しめたと思い攻撃を仕掛けようとしたら、そのままくるりと回転し、勢いをつけて蹴りを放ってきた。

中々器用なことをする。


「ストーン・バレット!」


それを俺は拳大の石の弾丸三発で牽制する。

今しがた前に飛んだ際に手にしたのだ。

例え地面から離れていても、一メートル程度の範囲なら土や石を意のままに操ることができる。さっきのお返しだ。

全ての石は見事命中したが、ダメージが入ったよえには見えない。

それでも奴の動きを止めるには十分だった。

その隙に今度は砂を纏った右蹴りを放つ。

蹴りは金属野郎の横面を捉え、奴の首がボギリと右に折れる。

まるで機械を相手にしているようだ。

どんなに物理攻撃を与えても動きが鈍る様子がない。

だが、例えダメージは無くてもバランスは崩れるだろう。


「まだまだぁっ!!」


更に追撃をけしかける。

俺は手足や肘、膝に砂を纏った状態で、金属野郎をサンドバッグにして滅多打ちにする。


「オラオラオラオラァッッ!!!!」


顔、肩、腕、足、胴。

全力の拳を放った場所が少しずつではあるが確実にひしゃげていく。


「このっ! クソ野郎があ~っっ!!」


気合いの声と共に十数発の乱打の最後。両の拳を頭上で組み、頭から地面に叩きつけた。

グシャリと嫌な音を立てて地面に数センチめり込む金属野郎。


「はあ……、はあ……」


流石にあれだけの乱打で俺も息が荒くなる。

だが、これでそう簡単には修復できない程ボロボロにしてやったはずだ。


「どうだっ……!」


そんな俺の意に反して、金属野郎は地面にめり込んだ体をバキリと引き抜いて、ゆっくりと立ち上がった。


「……まじかよ……」


そんな言葉が漏れる。

流石に色々がたが来ているようには見えるが、少しずつだが確実に修復していく。

こんな感じだと、奴を殴って倒すのは難しそうだと思ってしまう。

金属野郎は修復が終わらない内に、今度は真正面からユラリと俺に向かってきて、拳を振り上げてきた。


「舐めんなっての……」


俺はニヤリと笑みを浮かべて余裕の表情でヤツを迎えた。

奴は振り上げた拳を俺の顔に向けて放ったが、直撃の数センチ手前でピタリと止まってしまう。

金属野は急に体の動きを鈍らせてギチギチと震え出した。

それを悠然と手を腰に当てて見つめる。


「お前は俺の攻撃を何回受けたと思ってんだよ?」


金属野郎の体にはいつの間にか夥しい量の砂が付着していた。

そのまま砂は固まり、地面とも繋がり、一時的にではあるがヤツの体の自由を奪う。

それに気づいたヤツは体の砂を振り払うべくもがきはするが、俺が砂の緩急を調整し、それをさせない。

完全に砂で金属野郎を羽交い締めの状態にした。

そしてそのタイミングで、俺の耳に風切り音が届いた。

その音が何なのか、俺には分かりきっている。


「椎名ぁ! 今だっ! やれえっ!」


「わかってるわよ!」


俺の声に応える声は、空から超スピードで落下してくる椎名だったのだ。

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