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私のわがままな異世界転移   作者: とみQ
ネストの村編
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「魔族――というかグリアモールには物理的な攻撃は一切通用しなかった。そして、現れたり消えたりを自在に行い、私達は翻弄されてしまった。それについてまず考えたのが、グリアモールはこの現実世界に自由に行き来でき、本体がここには無い存在なのではないかと推測したのだ」


「別の異次元空間みたいなものよね? でもさ、そんな世界が本当にあるのかしら?」


「そうだな。だが奴は完全に存在を消していた。椎名の感知でも気づかない程にな。もし透明になるような力で、姿が見えなかっただけならば椎名の能力ですぐに気づいているのではないか?」


「確かにね。あの洞窟でも彼の存在を完全に認識できたのは姿を現してからだった。その前は微かな風の流れで当たりをつけたにすぎないもの」


洞窟での一件を思い出しているのだろう。

中空へと視線を這わせながらそう答える椎名。


「ああ、少し話が逸れてしまったな。要するにグリアモールだけが行ける並列世界のような空間があると私は考えたのだ。なのでこの世界に具現化している肉体の部分はただの飾りで、そちらの世界にいる本体を叩かねばならないのではないかと考えた。ではそれはどんな世界か。そして常に私達と隣り合わせになっている世界とは? それとはすなわち心だ、私達の精神だ、それらは実体がないように思えるがこの世界に確かに存在している。奴らは実体を持たず、精神だけで在れる存在なのではないかと、そういう考えに至った訳だ」


「えと……なんか哲学的だね……」


「ちょっと待ってよ隼人くん。いきなり話が昇華しすぎじゃない? なんであの魔族が出たり消えたりすることがそういう結論まで行っちゃうわけ? ――て、あ、隼人くんが能力に目覚めたからってことか」


「そうだ」


流石の椎名は理解が早い。

以前から彼女の頭の回転の早さには気づいていたが、ここまで話が早いとは予想していなかった。

対する美奈は話には完全について来れていない様子。


「ちょっと待てよお前ら! 話がよくわかんねえぞ!?」


工藤も同じく、頭の上にはてなマークが出ていたが、一旦最後まで話を続ける事にする。


「まあ私もこんな能力に目覚めなければそこまでの考えには至らなかっただろうがな。私は覚醒した事により、生き物に宿る精神力みたいな物を感じられるようになったのだ。そこであのグリアモールを見た時に確信した。奴は我々とは異質な存在なのだと。まるで精神そのものの塊のような――」


「なるほどなるほど。それで魔族に精神攻撃を仕掛けてその反動で病んじゃったってことね?」


「うむ。そういう事だ」


椎名は考え事をしながら斜め上を見つつ、それからちらりとこちらに視線を向けた。


「そっか。あとさ、それで思ったんだけど、てことは隼人くんて私たちの感情とかも色々分かっちゃうようになったってこと? 例えば今怒ってるとか、疑心暗鬼になってるとかさ」


「――いや、そこまで有能なものではない。あくまで相手の精神力の大きさを知れたり、自身の精神力を操作し、武器とする程度。まあこの先、力を突き詰めたらどうなるかは分からないがな」


「ふうん……」


それは嘘だ。

私自身相手の感情をまるで自分のもののように感じることができる。

グリアモールと相対した時も、奴に内包する情動の機微からある程度有利に駆け引きを進めることが出来たのだ。

だがそれを打ち明かすことは憚られた。

私が感情を読み取れることを知れば、この先互いのコミュニケーションを量る時に変に意識してしまいやりづらくなると懸念したのだ。

これが最善かどうかは分からない。今も椎名の胸の内には疑念の感情が見て取れる。

だが言ってしまえばそれまで。

この事については打ち明けるべきだと判断したタイミングで改めて打ち明ければ良いことだ。


「まあ、いいや。あとさ」


「まだあるのか?」


椎名はその事については深く触れずに終わる。

その辺も見透かされているような気もするが、それはそれで良しとする。

こんな駆け引きのような真似、何をやっているのだと思わなくもないが、そこは今はあまり深く考えないようにした。


「うん、これで最後。魔族ったてさ、その気になれば私たちの精神そのものを攻撃できるのかな?」


「――そこまでは分からないが、そういう芸当が出来ても何らおかしくはないな」


魔族の実力や戦力、生態などについては未だ未知数だ。

グリアモールのような個体が幾つもいるのか。

それとも全く別の種があるのか。戦い方もそれぞれな気がする。

私達でさえ様々な能力を有して戦ったのだから、当然その可能性は考えられるのだ。

ただ、結論から言うと何も分からない、だ。



「――そうだとしたら、防ぐ手だてはあるのかな」


「まあそれに関しては今考えても不確定すぎるので無意味だろう。そもそもどちらにせよまともに戦って勝てる相手ですらなかったのだからな」


「まあそうね。その辺は考えても仕方ないか。分かったわ、ありがと」


それを考えると心底恐ろしいが、今は保留だ。

椎名もそこで納得したように笑顔でサムズアップを決めた。


「うむ」


「とにかくさ、みんな無事でよかったねっ! イエーイッ!」


私も満足し、椎名と互いに軽くハイタッチを交わす。

椎名の言うとおり。何にせよ四人とも無事で良かったのだ。

私の心の中は今、安堵感と充足感で満たされていた。


「イエーイって何!? 私、全然ワケがわからないよ隼人くんっ!?」


「――あ」


一頻り話を終えたと思ったら美奈が半泣きで抗議してきた。

工藤に至っては半ば諦めたようで、遠くの空を眺めながらぶつぶつと一人何かをお経のように呟いている。

工藤はともかく美奈にも理解させてやれていないのは戴けない。

私は美奈に詰め寄られながら改めて話を続けていくのだった。

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