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私のわがままな異世界転移   作者: とみQ
第6章 それでも私たちは抗い続ける
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今ここにアリーシャの渾身の奥義が炸裂した。

光の流星が駆け抜けるような閃光の煌めき。

ドリアードへと放たれるその輝きに、受けている彼自身は吸い込まれるように動きを止めた。

間の抜けた話かもしれないが、美しいと見惚れたのだ。

ドリアードとて攻撃の途中。

最初から防御に専念していたのならばいざ知らず、超速で放たれる剣を、ましてやアリーシャ最強の奥義を前にして今更避わすことや逸らすことなど出来ようはずがない。

真っ向から打ち合う覚悟だ。

ここでドリアードが初めて、その表情から余裕というものを消失させた。

と同時に彼の体内に内在する戦闘力を瞬間的に爆発させたのだ。

その結果、ドリアードは前に出るという選択をした。

一切の邪念を捨ててこの技と向き合う。


「……ッ!!」


ドリアードは声にならない声を上げ、その光の奔流に身を投じた。

奥義とドリアードがぶつかり合う瞬間、ドリアードの身体は視認出来なくなった。

まるで光の化け物のように、光のうねりだけがその場に存在し、その光量を更に増していく。

アリーシャの放った風林火山は以前とは比べ物にならない程の威力となっていた。

それは新しい剣の切れ味によるものなのか。アリーシャ自身のレベルアップによるものなのか。それともその両方なのか。

とにかくどうあってもドリアードを無事で済ませることはないだろう。

アリーシャは確かな手応えと自身の技の予想以上の威力に、全身が大きな脱力感に見舞われながらも勝利の確信を得ていた。


「はあっ……、はあっ……」


気づけば技は出し終わり、アリーシャは荒い息を吐きながら震える足でその場に突っ伏していた。

たった一度奥義を放っただけでアリーシャの体力はほぼ限界を迎える。

肺が全力で身体に必要な空気を吸い上げ、地に倒れ伏す事を所望するのを何とか堪える。

震える両足を必死に奮い起たせ、前屈みになりつつも奥義を放った場所へと顔を向けた。

少し顔を上げただけ。それだけのことで脳が悲鳴を上げる。目の前が霞んで思考に膜を作る。

本当に立っているのがやっとだ。

それでも前回と違い、気を失わないだけまだマシなのだ。


「くっ……」


霞む目を擦り、目をしばたたかせながらアリーシャは晴れていく土煙を見つめていた。

まさかこれだけの威力の技に真っ向からぶつかって、無事で済んでいるはずはないのだ。

それは分かりきっている。

そのはずなのだかどうにも胸のもやもやは消えてはくれなかった。


「……中々の技だ」


声がはっきりと聞こえた。だがそれは自身の予想を裏切っていた。聞こえたのは土煙の中からではなく、後ろからだったのだ。


「がっ!?」


視界が反転し、転げていく。

空を見上げさせられて、そこで初めてアリーシャは自分が吹き飛ばされたのだと気づいた。

続いて胸の奥から生温かい液体がせり上がってきて口から盛大にびちゃびちゃと血を吐いた。


「ゴホッ……、ゴホッ……」


頭がグラグラする。

一拍遅れてきた痛みに意識を刈り取られれそうになる。

それでもアリーシャは、重い体を無理矢理動かし、すぐさま起き上がった。

そのまま逃げるように数メートル後退し、ドリアードから距離を取る。


「ほう……」


感心したような呟きが耳朶に届く。実際そうなのだろう。

今アリーシャは相当のダメージを受けたはずだ。

なのにそんな状態でも素早い回避行動を見せた。

自分でもどうしてこんな動きが出来るのか、はっきり言って疑問でしない。ドリアードもそう思ったから声を漏らした。

だが苦しい時程体は本能的な動きを見せてくれる。

強者の能力とでも言おうか。

それだけアリーシャは若くして自身を成長させる修羅場に恵まれているのだ。

アリーシャは歯を食いしばり、もう一度握る剣に力を込めた。


「まだまだ戦いはこれからだ」


思ったより吐き出す声は低く重い。

戦いとは。

アリーシャの脳内にそんな疑問が過った。

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