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私のわがままな異世界転移   作者: とみQ
第5章 降って湧いた突然の闇
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52

時はアダマンタートルを討伐した直後に遡る。

アルテ達冒険者クランは、一早くこの事をガンジス王に報告するため、一路インソムニア城を目指していた。


「しっかし随分と派手に荒らしてくれたもんじゃわい」


ガッシュが軒並み倒壊してしまった家屋を見て、ため息混じりに呟いた。

彼はドワーフ。

母国がここまでの損害を受ける事には、やはりそれなりに胸を痛めていた。


「まあ避難が遅れなかっただけマシでしょ。誰も死人とか出なかったんだし?」


「うん……まあそうだね」


「ふむ……まあそうだのう」


そんな形で前向きに付け加えるマリンの言葉に、アルテもガッシュも口元には笑みを浮かべて頷いた。


「え? ちょっと何よ二人してニヤニヤしちゃって!?」


「ガハハハハッ! なあに、マリンからそんな前向きな言葉が出るとは思わなんでのうっ! ガハハハハッ!!」


「は……はあっ!? なんか超失礼じゃない!?」


「いやいや、そんなことはないさ。マリンのその思考は見習わなきゃならないと思うよ。ほんとに」


「む、……むう……い、いいけどさ。別に」


そう答えるマリンの頬は赤く染まっていた。

拳をきゅっと前で握りしめ、ぶつぶつと何か呟きながら歩くマリンをアルテは嬉しそうに見つめていたのだった。

アダマンタートルの出現地。

それが人がほとんど寄りつかない北の鉱山付近だったのは本当に幸いであった。

終わってみれば人的被害は奇跡的に皆無だったのだ。

アダマンタートルの進路は、アルテ達の懸命な誘導もあり人通りのない場所を歩ませることができた。

それが功を奏したと皆思えていた。

結果的に先の戦いの充足感から、彼らの足取りは軽く、皆自然と笑みが溢れていた。


「……そう言えば、結局シャナクはやられてしまったんだろうか」


アルテはふといなくなってしまった彼の事を思い出し、何とはなしに呟いた。

別にこれといって他意があったわけではない。

ただ、自分が発した言葉により、周りから向けられる視線が奇異なものを見るようなものであることに、アルテは怪訝な顔になる。


「ねえアルテ。ミナって子も言ってたけど、シャナクって一体誰のことなの?」


その答えをマリンの言葉から知る。

アルテは思わず目を大きく見開いていた。


「……は? マリン、シャナクが……シャナクが分からないのかい?」


「……シャナク。……聞かない名だな。ガッシュ、知っているか」


「……さあな。ワシも聞いたことはないわい。そいつがどうかしたか?」


「……!?」


どういう訳かアルテ以外の三人は、共に先程まで一緒に戦っていたシャナクの存在を、彼に関する記憶を一切失っているようだったのだ。

その事に茫然とし、驚きを隠せないアルテ。


「アルテ?」


「あ、いや、何でもない。この話は忘れてくれ」


「……変なアルテ」


アルテは一旦この話は深く追及せずに置いておく事にした。

今それを自分一人が騒ぎ立ててもどうにかなるものではないと思ったのだ。

それにその事事態は驚くべきことだが、大きな問題となるようにも思えなかったというのが大きい。

皆は少し不審な顔をしたが、別段気にした様子もなく前を向き、そのまま歩を進めていく。


「しかしあの魔法使いの女。何かしらの能力なのだろうが、凄まじいまでの魔力だったな」


「ん? ミナのことかい?」


「ああ、そんな名前だったな」


アルテの話題はさらりとトーマの言葉に消された。

彼はとりあえずはそれでいいと思った。


「え? 何々? あんたがそんなこと言うなんて珍しいわね」


「……うるさい」


マリンの言葉にトーマは少し不機嫌な顔を見せた。

だが彼女がそう言うのも無理はないのだ。

トーマは自信家で基本的に相手の事を褒めるなどという行為とは無縁な男だ。

気心の知れた同じパーティー内の事ならばいざ知らず、今日出会ったばかりの、しかも年下の女性に対しそんな事を言うのはかなり珍しいことであったのだ。


「何よ、ムキになっちゃってさ。ホント子供なんだから。……あ!?」


「……は? 何だ? その目は」


マリンは急に満面の笑みを作り嬉しそうに、いや、いやらしそうに笑いを噛み殺し始めた。


「いや~。トーマがあーいう娘が好みだったなんてねー」


「!? な、何を言っている!? 俺はそういう趣味ではない!」


「なになに? じゃあどういう趣味だってのよ?」


「……知らん」


トーマはマリンのその質問には答えず、何事も無かったかのように歩き始めた。


「ちょっ!? ちょっとトーマ!? 話の途中で無視して行かないでくれる!? 続きを聞かせなさいよ!」


「よし、そろそろじゃわい」


二人のやり取りを遮るようにガッシュが口を挟んだ。

もう少し聞いていても良かったが、目の前にはもう城への入り口が見え始めたのだ。

それを見てマリンはふうとため息を吐いた。


「……ちぇ、わかったわよ。報告が終わったらまた追及してやるんだから」


トーマはそんなマリンの様子に辟易しながら腕を組み、そっぽを向いていた。

マリンの方からはその表情は見えなかった。

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