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私のわがままな異世界転移   作者: とみQ
第4章 アダマンタートル
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アリーシャとシャナクの二人がアダマンタートルの体内に侵入してから、そろそろ十五分の時間が経過しようとしていた。

美奈も流石に焦ってきた。

フィリアに至ってはアリーシャが心配で気が気でないようだ。

彼女は落ち着かない様子で辺りをうろうろしつつ、時折弾かれたようにアダマンタートルを見つめている。

そして何より問題なのは、アダマンタートルの様子が変化してきたのだ。

当初は痺れと闇魔法の効果でまともに身動き一つ取れない様子であったが、現在は徐々に身体に力が戻りつつあるようだ。

フィリアが仕掛けた氷の縛りも、きしきしと音を立て始めている。

このままでは引きちぎられるのも時間の問題と思えた。


「ミナ、そろそろ手を打たないと」


「うん。わかってる」


アルテに言われて頷く美奈。

しかし言葉とは裏腹に表情は固かった。

美奈は迷っているのだ。

確かにどうにか手は打たなければならない。

だが出来れば美奈としてはあまり無理はしたくなかったのだ。

理由は簡単だ。ここで時間を巻き戻してアリーシャとシャナクを助けたとして、目の前のアダマンタートルに対して手詰まりになりかねないからだ。

美奈の先程の魔法の連発。

それには精霊オリジンの時間を巻き戻す能力が欠かせない。

しかし戻せる時間には限度があるのだ。

もちろんそれは美奈のマインドが続く限りということである。

先程美奈はマインドを消費して時間を巻き戻し、自身の魔力を回復していた。

そして回復した魔力を消費して再び魔法を打つ。

そんな手法で行っていたのだ。

マインドが尽きてしまえば当然時間は巻き戻せなくなる。

そうなると美奈の戦闘能力はほとんどなくなったも同然なのだ。

因みに先程の一件で既にマインドは半分程消費している。

もし今時間を巻き戻してアリーシャとシャナクを助けてしまったらもう先程の手は当然使えなくなる。

マインドが持たなくなってしまうからだ。

しかもそれでもアダマンタートルを倒しきれないことは最早実証済み。

それは美奈にとって八方塞がりを意味していたのだ。


「ミナ?」


「あ……うん」


アルテが不思議そうに美奈の顔を覗き込む。

それに曖昧な返事しか返すことができない。

そうこうしている内にも無情にも時間だけが過ぎていく。


「ガ……ガ……」


「おいっ! アダマンタートルがそろそろ復活するぞい!」


アダマンタートルの様子を見ていたガッシュが叫ぶ。

流石にそろそろ限界だろう。


「ミナ様! どうしますか!?」


「……フィリア、とにかく一旦アリーシャとシャナクを助けるよ」


依然として二人がアダマンタートルから出てくる気配も無いのだ。

美奈は再びアダマンタートルの方へと向かう意思を示す。

その時だ。

突然アダマンタートルの様子が変わった。

何やら苦しみだしたのだ。


「ガガガ……?? ……ガッ!? ゴアーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!」


やがてそれは最上級の叫声へと変わり。

アダマンタートルはぶるぶると大きく身体を震え上がらせた。


「何じゃ!? 急に苦しみだしおったわい!」


「やった……のか?」


ガッシュやアルテも耳を押さえつつ、視線はアダマンタートルを捉えたまま。


「もういやっ! 何なのこの声っ!」


マリンに至っては余りの声量のためか耳を塞ぎ、その場にしゃがみこみ、怯え震えていた。

対してトーマはそこまで興味が無いのか、横目で一瞥した程度である。

アダマンタートルの悲鳴、いや、断末魔の叫びと言ってもいいだろう。それが止むと、身体が光り輝き、なんとアダマンタートルは次の瞬間一瞬にして消滅してしまったのだ。


「アダマンタートルが消えた!?」


「やったのでしょうか!? アリーシャ様は!?」


慌てふためく一同。

だがこれが、長年ここインソムニアを悩ませてきた魔物、アダマンタートルの呆気ない幕切れであったのだ。

そして消えた後に夥しい量の光り輝く金属塊が無数に地面に落下してきた。

その中に見えた、一つの人影。


「あれはっ! アリーシャ様!」


アリーシャは気を失っているのか、中空で身動き一つしない。このままでは地に叩きつけられ、挙げ句の果てには金属塊に埋もれてしまう。


「ブリーズウィップ!」


フィリアは慌てて氷の鞭を出現させ、アリーシャを捕らえた。

そのまま自身の近くまで引き寄せ、その体をしっかりと抱き止める。


「アリーシャ様! アリーシャ様!」


フィリアが呼びかけるが一向に目を覚ます気配が無い。

完全に昏倒してしまっているようだ。


「ミナ様! アリーシャ様が!」


「見せて!」


どんどん顔が青ざめていくフィリアを横目に美奈はアリーシャの身体に手を置いた。

そして意識を集中。


「タイムトラベラー・リバース!」


アリーシャと別れてから約十数分。

そこにまでアリーシャの時を戻す。

ただ気絶しているだけかもしれない。

放っておいてもいずれ目を覚ますかもしれないが、最早美奈に戻せる時は限られている。

もしこのまま目を覚ますのを待っていて万が一取り返しのつかない事になるよりは、マインドに余力を少しでも残せるうちに回復させておいた方がいいと判断した。

それに、アリーシャがこんな状態になった理由も早い段階で知っておくに越したことはない。

アリーシャ程の手練れを昏倒させるような相手がアダマンタートルの中にいたという事なのだから。


「う……ん」


「アリーシャ様!」


「フィ……リア?」


ゆっくりと目を覚ますアリーシャを力いっぱいに抱き締めるフィリア。

今一この状況が読めなくて困惑の表情を浮かべるアリーシャ。

何にせよ、今はアリーシャが何とか無事でアダマンタートルを倒せて良かったとしよう。


「ミナ……私は一体?」


「アダマンタートルの体内で何があったのか思い出せないかな?」


フィリア越しに美奈に声を掛けるアリーシャにその時の状況を訊ねるが、アリーシャは依然として呆けたようになっていた。


「……何だろう。アダマンタートルの体内に入る所までは覚えているのだが……その後の事が……何も思い出せない……」


「え? ……」


美奈はアリーシャのその答えに眉根を寄せた。

今しがた美奈はタイムトラベラー・リバースを行使したが、戻したのはアリーシャの身体の調子のみ。記憶までは戻さなかった。

アダマンタートルの体内で起こった事は覚えている方が好都合だと判断したからだ。

けれど実際そこの部分の記憶は抜けている。

それがどういう事か分からずに、美奈は首をかしげた。


「アリーシャ、頭を強く打ったりしてないかな?」


「……わからない。特に体に異常は感じないが」


フィリアの言う可能性も考えられなくは無いがそんなに都合良く記憶を失くしてしまうものなのだろうか。

それでもアリーシャが無事なのであれは些末な問題なのかもしれない。

そこまで考えて、一同はふとあることに気づく。


「アリーシャ、シャナクはどうしたんだい?」


後ろで黙って話を聞いていたアルテがアリーシャに訊ねた。

すると、そこで返ってきた答えはかなり意外なものであったのだ。


「シャナク? ……誰だ、それは?」

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