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「俺なら魔石の場所を探し当てることができる。そいつを壊せばいくらアイツがヤバくても倒せるはずだぜ」
アダマンタートルに美奈達が攻撃を仕掛ける直前。
美奈達四人とアルテ、マリンの六人はアダマンタートルの攻略方について少し話し合う時間を持った。
無策では流石に厳しいとアルテが言い出したのだ。
その場において、シャナクが突然そんな事を言い出した。
「は? そんな芸当が出来る者の存在なんて聞いたことはないよ?」
それにいち早く疑問を呈したのはアルテである。
そんな提案をされて、彼も半信半疑の気持ちが拭えきれないのだ。
だがそう言うアルテに対し、シャナクはあくまで余裕のある表情を崩さなかった。
「ああ、俺もだ。俺以外にそんな事が出来る奴に会った事はねえ」
親指を自身に突きつけて、自信たっぷりに答えるシャナク。
「は? それって自分自身の信用を低くしている発言だと思うんだけど」
「大丈夫だ」
「えっと……その根拠みたいなものはあるのかな?」
「それは俺がトレジャーハンターだからだ」
「は……はあ?」
そんな事を平気で宣うものだから流石のアルテも呆れた声を上げた。
「ねえ、ちょっとこの男頭がおかしいんじゃないの?相手にするだけ時間のムダよ!?」
そこにすぐさま食いついてきたマリン。
最初から自分達以外をあまり信用していない節があったのだ。
マリンのその行動は最もだと言えた。
「どうすればいいのかな?」
「ちょっと!? ミナ様!?」
その時救いの手を差し出すように声を上げたのは美奈だ。
流石に仲間であるフィリアですらも、美奈のその発言には賛同しかねた。
だが美奈はそれを受け流すように微笑み次の句を告げる。
「だって他に方法が無いんだよね? シャナクさんの提案以外には?」
「そ、そうですけどっ! 一旦は私たちで総攻撃を仕掛けてみてからでも遅くは無いかとっ……」
「うん、それもやってみよう。もちろん私も全力で立ち向かうよ? だけどそれでも無理な時はさ、シャナクさんの意見を取り入れようよ」
「いいのかい? 俺が嘘ついてるかもしれないぜ?」
せっかく自分の肩を持ってくれた美奈にそんな挑発的な事を言う。
そんなシャナクの態度を見てますますマリンは機嫌が悪くなっていく。
「マジであなたなんなの? 本当に意味がわからないんだけど」
「私もミナに賛成だ」
「アリーシャ様まで!?」
険悪なムードになりそうな所にアリーシャも賛成の意を唱える。
「結局このままではアダマンタートルに対する有効な攻撃手段が無いのだろう。序列三位の冒険者クランで歯が立たないのだ。少なくともやってみる価値はあると思うのだが?」
そんなアリーシャの言葉を受けてマリンはやれやれと大袈裟にため息をついた。
「あっそ。それならあなたたち、仲もいいみたいだから勝手にやってくれるかしら? 私たちはシャナクの作戦には乗っからないわ」
「こらこら、マリン。そんな言い方はないだろう?
頼むからもう少し落ち着いてくれよ」
ぐいぐいと話を進めていくマリンに釘を刺すように待ったをかけたアルテ。
「う……アルテ、ごめんなさい。私ったら、つい」
アルテに言われて急にしおらしくなるマリン。
先程もそうだったがアルテに言われた事はマリンは素直に聞き入れる。
アルテに見えないようにこちらにあっかんべーをしてくる所を見ると、本人は全く納得はしていないようではあるが。
「シャナク。君も真面目に話してほしい。君の作戦いかんでは採用もやぶさかではないのだから」
「……わーったよ。悪かったな」
シャナクも罰が悪そうに手を振った。
「えっ……と。それでシャナクさん、私たちはどうすればいいのかな?」
「そうだな。簡潔に言うと作戦はこうだ。アダマンタートルの体内に侵入して魔石を見つけ出し、切り離す。以上だ!」
「体内に侵入……か」
確かにあの巨大さだ。
侵入自体は大して難しい事では無いだろう。問題は魔石を簡単に見つけ出せるかどうかと体内の危険度だ。
「そうだ。だが、侵入する前にまず奴の動きを止める必要がある。それから侵入は俺ともう一人必要だ。俺は攻撃はあまり得意ではないからな。魔石を見つけても切り離せない。アダマンタートルと魔石を上手く切り離してくれる奴が必要だ。それに道中の危険を振り払う役目も担ってもらう」
「ならそれは私の役目だな」
アリーシャが即答で名乗りを上げる。皆が一斉にアリーシャに注目した。
「アリーシャ様! そんなの危険すぎます! 魔物の体内など何があるか分かりません!」
「大丈夫だ、フィリア。このくらいの事でいちいち怖じ気づいたりはしない。それにこの作戦に賛同したのは私だ」
「っ……ですが……」
アリーシャの意見は最もであるが、それでも心配な事に変わりは無いのだ。
「フィリア、大丈夫。厳しいと判断したら、私が二人を連れ戻すよ」
いざとなったら美奈は精霊オリジンの力で二人をアダマンタートルの体内へと侵入する直前の状態へと引き戻すことができる。
その辺を考慮すると、そこまで危険な任務、というわけでもないように思えた。
「ただアリーシャ。私の能力にも限界があるの。中に入って十五分してもアダマンタートルを倒せないようなら二人を引き戻すからね?」
「分かった。その時は遠慮無くやってくれ」
アリーシャと美奈はそれだけ言葉を交わすと笑顔で頷きあった。
心配そうな表情は変わらないフィリアも、もうこれ以上口出しは無駄と踏んだのか、その様子を黙って見つめていた。
そこで今まで事の成り行きを見守っていたアルテもうんと頷いた。
「よし、話はまとまったみたいだね。結局僕らの出番はほとんど無さそうだけど、サポートできるところは手伝わせてもらうよ」
「はい、それで構いません」
にっこりと頷く美奈。
そこでようやく話はまとまった。
アダマンタートルの頭上ではアルテの仲間であるガッシュとトーマが未だに激戦を繰り広げている。
いくら二人が歴戦の戦士といえど、そんなに時間の余裕はないのだ。
「うっしゃ! じゃあアダマンタートル討伐作戦決行だぜっ!」
シャナクの妙にテンションの高い声が街に響き渡った。




