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実に二十回にも及ぶライトニングジャッジメントをその身に受けたアダマンタートル。
その強大すぎる生命力こそ奪えないものの、雷撃により身体の自由は奪われ、一時的な痺れによる麻痺状態に陥った。
闇魔法の効果もあり、思考も錯乱状態であるため悲鳴とも呻きとも取れる声を出しながら、その場にうずくまるようにしてその魔物は現在停滞していた。
「それじゃあ問題はこっからだぜっ!」
依然としてアダマンタートルの頭上を浮遊している美奈達。
だがその中でアルテ以外の彼のパーティーは一旦アダマンタートルの元を離れ、地に降り休息を取っていた。
もちろんいつでも戦いに身を投じられるよう警戒は怠ってはいないが。
「そうだね、じゃあアリーシャ。頼むよ」
「うむ」
アルテの言葉を受けアリーシャは毅然として頷きを返した。
現在はアリーシャを美奈が、シャナクをアルテが、それぞれ両腕を掴んでフライの効果で浮遊した状態である。
「アリーシャ様! お気を付けて!」
フィリアが心配そうにアリーシャに言葉を送る、
それをアリーシャは優しい笑顔で受け止めた。
四人は少し場所を移動し、アダマンタートルの顔の前にまで来た。
「……っ!!」
アダマンタートルは美奈とシャナクの魔法、それにフィリアの氷の能力によって今は完全に動きを封じられていた。
身動きが取れないとはいえこの迫力のある魔物を目の前にして怖じ気づく気持ちが芽生えない者の方が少ない。
一同はアダマンタートルの赤く血走った瞳を見つつ、息を呑んだ。
「じゃあ行くぜ!」
「あ、ああ! やってくれ!」
それでもシャナクの合図を皮切りに、二人はアダマンタートルへと跳び移った。
下り立った先はアダマンタートルの口の中。
その瞬間、口を閉められ押し潰されたらという疑念が一瞬頭を過るが、幸いそれは杞憂と終わった。
「アリーシャ様! お気をつけて!」
再びフィリアがアリーシャへと声援を送る。
心配で仕方がないといったフィリアの感情が端からひしひしと伝わってくる。
それにアリーシャは再び手を振って応えた。
そしてそのまま二人はアダマンタートルの体内へと侵入していったのだった。
案内役はシャナク、道を切り開くのはアリーシャの役目だ。
目的はアダマンタートルの体内にあると思われる魔石。
魔物は例外無く魔石を体内、若しくは身体のどこかに所持している。
それは人で言うところの心臓のようなものだ。
魔物は等しく、そこから魔力を得て体内に取り込み、活動源としているのだ。
なので魔物を倒すには早い話、魔物から魔石を切り離してしまえばいいのである。
そうすれば魔物を傷つける必要も無く難なく倒してしまえるのだ。
だが一重に魔石を切り離すと言っても勿論それは容易な事では無い。
特にアダマンタートルのように外側から見える所に魔石が無いタイプの魔物は。
だから最初は全員で総攻撃をしてアダマンタートルにダメージを与え、生命活動を停止させて倒す方法を取るつもりであった。
だがガッシュのパーティーがこれまで魔法やら物理攻撃やらで散々叩いたけれど全く倒せる見込みが無かった事を最初にアルテに会った際、話に聞いていたのだ。
そして美奈の魔法を以てしてもやはりそれは叶わなかった。
だから今回の方法を選ぶことにした。
きっかけはシャナクの提案だったのである。




