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私のわがままな異世界転移   作者: とみQ
第4章 アダマンタートル
337/1064

33

人通りの少ない路地を抜け、大通りへ出るとドワーフの兵士達がいた。

どうやら逃げまどう街の人達を誘導しているようだ。

次から次へと地下の城内へと入っていく人達。


「おいっ! お前たち!」


その内の一人にメンデスが声を掛けた。

すぐに彼の存在に気づいて、一人の兵士が近づいてきた。

ここの現場を任された部隊長といったところだろうか。

彼の衣服や顔の所々は薄汚れていた。

大粒の汗を流してそれがこの場の凄惨さをより現実的なものと思わせた。


「メンデス様! ご無事でしたかっ!」


「あれは一体どうなっておるのだ!?」


「はいっ! メンデス様が発たれてからほんの数時間後の事です。街の中心に急にあの魔物が現れたのですっ! そこからあっという間に周辺の建物を踏み潰してしまいましたっ!」


「急に、どこからともなく現れたというのか!?」


「はいっ!」


兵士の口振りだとどこかからやって来たという事ではない。

何も無い所から急に現れたと言う。

美奈達はその不可思議さに眉根を寄せる。


「異変に一早く気づいたガンジス王がとにかく街の人々を避難させるように我々に命じましたっ! ですがあれほど巨大な魔物ですっ! 街のどこにいても危険地帯となり、街の人々はパニックになりましたっ! 思うように避難が進まなくなっていた所に、我らが英雄ガッシュ率いる冒険者パーティーが現れ、あの魔物、アダマンタートルに攻撃を仕掛けましたっ! それでしばらく魔物の注意は彼らに向いたのですっ! そのお陰もあり現在城への避難を続けているのですっ!」


アダマンタートルの方を見るとガッシュと呼ばれた冒険者の活躍でか、確かに人が少ない南部の壁際に進路を取るように攻撃を仕掛けているように思える。

倒すには至らないまでも、美奈達が今いる位置からはどんどん遠ざかっていっているようだ。


「なるほどっ! ではガッシュ達が何とかしてくれるというのかっ!?」


だがメンデスのそれには顔色を曇らせた。


「いえっ! ……さすがの英雄ガッシュといえどもあの大きさの魔物に致命傷を与えるには至らないようでありますっ! 先ほどから時間を稼ぐのがやっとのようなのですっ!」


「……そうか」


「ねえ、私たちも一緒に戦おうよ」


「ああ、勿論だ。元々私達が討伐する予定だった相手だ。それにどのみちこのまま放っておくわけにはいかない」


美奈とアリーシャの発言にドワーフの戦士は目を見開いた。


「はい……仕方ありませんね」


フィリアは半ば脱力気味にこれを了承。

少し長めにため息を吐く。

そして三人はお互いを見合わせて頷いた。


「じゃあ、行こう」


「ミナ! 本当に行くのか!?」


メンデスが心配そうな眼差しを向けるが美奈は笑顔で応えた。


「はい、メンデスさんはこのまま避難していてくださいね?」


「……う、うむ! わかったっ! あの魔物の事はミナ達に任せるぞっ! それに英雄ガッシュもいるっ! 是非とも彼らの力になってやってくれいっ! それではまた後で会おうっ!」


それだけ言い残してドワーフの兵士と一緒に地下へと潜っていくメンデス。

途中何度も振り返っては美奈に大きく手を振った。

それがあまりにもバタバタしたものだったので手を振り返しつつも苦笑いを浮かべる美奈であった。

そして完全に城の中に入ってメンデス。


「……はあ~……」


長い長いため息が美奈の口から漏れでた。

ともすれば今にもその場にへたりこんでしまいそうな程だ。


「お疲れ様です美奈様」


そんな彼女の背中をさするフィリア。

ようやくメンデスから開放された美奈は心底安堵したようであった。

こういったことには本来我慢強い美奈なのだが、流石にメンデスに対する気疲れは半端なかったようである。

だがいつまでも時間を費やしている場合ではない。


「よし……じゃあ行こう?」


これで心置きなく戦えると思いつつ、気持ちを切り替える。

その時美奈は、ふと後ろにいるシャナクの存在に気づいた。

彼はこの一部始終を黙って見守り、自身は避難しようとはしなかったのだ。


「シャナクさんはどうするの?」


美奈がシャナクに問い掛けると彼は軽く微笑んだ。


「面白そうだから俺も行くぜ!」


「……そうなんだ」


「ん? なんだ? 俺の力程度じゃあ不服かい?」


「ううん? そういうわけじゃないよ?」


シャナクが共闘を申し出てきたが、美奈は曖昧な返事しか返せない。

確かに先程の戦いの際の動きを見るに、足手まといにはならないとは思うが、かといってアダマンタートル討伐の戦力になるとも思えなかったのだ。

それに何となく彼女は違和感のような気持ちを抱えていて。

それでも彼の気持ちを無下にはできない。

そんな思いの方が今は勝った。


「うん、わかった。よろしくね?」


「ああ!」


改めて顔を見合わせる四人。


「じゃあ、行こう?」


皆は気力十分に頷き合い、いよいよアダマンタートルへと向けて走りだすのだ。

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