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私のわがままな異世界転移   作者: とみQ
第2章 ドワーフの王国、インソムニア
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23

ここインソムニアの地下通路はまるで人が造り出したダンジョンのようであった。

歩けば歩くほどその広さは量りしれず。

恐らくインソムニアの地底の街ととほぼ変わらない面積が地下に広がっているのではないだろうか。

そもそも王室に辿り着くまでに数十分の時間を擁したのだ。

それまでの道中でも幾つもの十字路や三叉路があった。これを迷宮と言わずして何と言おうか。


「はあ……」


美奈はそのスケールの大きさにため息すら漏らしてしまう。


「ミナッ!? 疲れたか!? ここは私の寝室なのだが! ちょっと休んでいくか!?」


そんな美奈の思考を遮るように頭に良く響く声がすぐ目の前で木霊した。

ここは地下だから音が反響し余計に声が通る。

美奈はその声の大きさに思わず顔をしかめた。


「あの……早く武器庫に行きませんか?」


「む……そうだなっ! さすがミナ! 頑張り屋さんだっ!」


「……」


王の間を出てからずっとこんな調子で美奈の周囲を陣取っているメンデス。

一直線に宝物庫に向かってくれればいいものの、聞いてもいないのに途中の部屋や通路の先を逐一説明して中々歩が進まない。

そんなだから美奈は勿論、後ろで先程からずっと蚊帳の外という具合で二人についていくアリーシャとフィリアも苦笑いを浮かべるばかりであった。


「アリーシャ様……ミナ様はだいぶメンデス様に気に入られてしまったようですね」


「……そのようだな」


メンデスの様子を目の当たりにしながら困った表情を浮かべるアリーシャとフィリア。

二人の口からも自然とため息が漏れる。

それを横目で見つつ常に近いメンデスの顔を避けつかわしつ苦笑いを浮かべる美奈。

正直美奈もどうすればいいか分からない。一番困っているのは美奈なのだ。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「ついたぞ! ここが第二武器庫だ!」


そこから更に一時間ほど歩いた。

本来ならその半分の時間で着けそうな道のりではあるものの、何とかメンデスの案内の元ようやくたどり着いた武器庫。

そこは高さ三メートルほどの大きな扉に守られた部屋であった。

メンデスが第二と言ったので武器庫は最低でも二つはあるのだろうと予想出来た。

やはり多少廃れたとは言っても未だに武器の国と言われるだけの事はある。

見張りのドワーフが二人ほどいたが、メンデスが一声掛けるとすぐに扉を開けてくれた。


「ミナ! 凄いだろう! 武器庫の鍵は私が管理しているのだ! ここは私を通さないと開けられないようになっているからな!」


「そ、そうなんだ。……すごいですね」


もうぐったりとして喋る気力も微笑みも失せた美奈だが、それでもメンデスの物言いに何とか応え続けていた。

やはり覚醒により昇華した精神力は伊達ではないのだ。


「おおっ! そうだろう! 中はもっと凄いぞ! とにかく入れ!」


そう言ってメンデスは美奈の腕を掴んで中に連れていこうとする。


「あちっ!?」


「あっ!?ごめんなさい!」


メンデスの手が美奈に触れた瞬間。

何かに弾かれたように美奈の腕をうまく掴むことが出来なかった。


「ミナ様っ!?」


慌てて美奈の元へ駆け寄るフィリア。


「ミ……ミナ……今のは……えっと……」


「私っ! 今ちょっと触れると危険だからっ!」


目に見えて落ち込むメンデス。

美奈は慌てて弁明しようとするがあからさまに俯いて美奈の話を聞こうとしない。


「ミナ……そんなに私のことが嫌いなのか?」


更に俯き地面を人差し指でぐりぐりといじり回しながらそう呟く。

美奈はますます額に冷や汗を浮かべ、苦笑いながら笑顔を作る。


「えっと……。いや、そういう訳じゃなくて。そんな急に触れられたら女の子だもん、びっくりするよ?」


「じゃあ好きか!? 私の事は好きであるか!?」


「ひっ……」


今度は急に詰め寄ってくるものだから流石の美奈も変な声が漏れた。

今度は美奈に触れないよう一定の距離を保ってはいるがドン引きしているのは誰の目から見ても明らかであった。


「……嫌い、ではない……よ?」


それでも絞り出すように当たり障りのない返答を返す美奈。

後ろで誰かの「すご……ミナ様すごい根性ですね……」という呟きが聞こえた。


「そうかっ! わかった! ひゃっほ~いっ!!」


そして嫌いではないという美奈の発言を聞いたメンデスはそのまま飛び上がらんばかりに跳ねおきた。

そして今までとは打って変わった上機嫌さで武器庫の扉を開き中へと足を踏み入れたのだった。


「……すごく……苦手」


美奈はメンデスを見送りつつ、肩を落としながら大きくため息を一つ。よろよろとした足取りで自分も中へと入っていく。

そんな美奈の背中にポンと手を置き軽く擦る手の感触があった。


「ひっ!?」


「す、すまないっ!」


振り向くとそれはアリーシャだった。

考えればメンデスは武器庫に入っていったところだ。

自分の背中を触るわけはないのだが、それだけ今美奈は余裕を失くしているということなのだろう。

美奈は喋る気力も失くしたのかそのまま前を向くととぼとぼと自分も武器庫へと入っていった。


「大丈夫だろうか……」


「……どうでしょうか」


取り残されたアリーシャとフィリアは美奈のいつもより更に弱々しい背中を見つめながらそんなことを呟いた。

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