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私のわがままな異世界転移   作者: とみQ
第2章 ドワーフの王国、インソムニア
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21

「ミナ、フィリア。宿に戻る前に行っておきたい場所があるのだが……」


「「……?」」


不意にアリーシャがそう告げた。

メルと別れてこのまま一旦宿へ戻るものと思っていた美奈とフィリアは顔を見合わせた。


「どうしたの? 旅支度は必要だと思うけど。一度チェックアウトして馬車で移動した方が良くないかな?」


「いや、ここからの方が私が行きたい場所は近いのだ。それに、もしかしたらわざわざ北の洞窟まで足を運ばなくても済むかもしれないと思ってな」


「あっ! まさかアリーシャ様っ! ドワーフの王に会うんですか!?」


「ドワーフの王様?」


フィリアの言葉を受けてアリーシャは頷いた。

美奈も何となくフィリアの言葉で察したが、如何せんこの世界の情報に疎い部分が多くまだ少し首を傾げている。


「そうだ。ドリアードはインソムニア北部の炭鉱でと言っていた。王に直接掛け合えばこの国から直接炭鉱に入れるかもしれない。そうすればわざわざ回り道する必要も無くなり一週間もの時間を必要としなくなる。一度掛け合ってみる価値は十分にある」


ヒストリアとインソムニアは国交が盛んだと聞いていた。

ということはヒストリアの王女であるアリーシャがインソムニアの王様に顔が利いても何らおかしくはない。

美奈もようやくそこでなるほどと笑顔を見せる。


「そっかそっか。あ、でも王様って言ってもどこに住んでるの? 上から見た時お城は無かった気がするんだけど……」


最初に地上からこのインソムニアの国に入った時、美奈は馬車の窓からこの国の景色を概ね一望していた。

だがその際ヒストリア城のような立派な建物は見当たらなかったのだ。

もしかしたらドワーフには王様なんていないのかもとすら思っていたのだ。


「ああ、城は無い。ドワーフはそもそも地底人だからな。更にこの地中に居住しているのだ」


「地中……?」


アリーシャの返答に美奈はただただ目を丸くし、言葉を失うだけであった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


インソムニアの街のほぼ中心に位置する場所。

そこに今いる場所よりも更に地下へと続く扉はあった。

そこにいた衛兵に事情を説明したアリーシャ達はあっさりと中に通され地下へと続く階段を下りた。

その先は地下迷宮のように入り組み、道中多くの扉があった。

長く長く続く廊下を歩く事約数十分。

その最奥に彼はいた。


「久しぶりだなっ、アリーシャっ! ガハハハハッ! ちょっと見ないうちに大きくなりおって! もうワシなんかよりずっと大きいわい! ガハハハハッ!」


「お久しぶりです、ガンジス王」


豪快な高笑いを浮かべる王様を前に、アリーシャは片膝をつき(うやうや)しく玉座に座す彼に挨拶をする。

流石に王室は場内の他の場所と比べれば十分豪奢(ごうしゃ)な造りになっていた。

大理石の床に壁には色彩豊かな絨毯が掛けられ正に王家の者が居るべき場所、といった雰囲気だ。

ガンジスと呼ばれた王は、久しぶりの訪ね人に相好を崩している。


「やめろアリーシャ! 王と呼ばれるのはこそばゆいわい! そんなに(かしこ)まってくれるなっ! なんせお前はワシの孫みたいなもんじゃからな! ガンジスでいいぞ!」


顔にこれでもかというくらいに髭を蓄えた筋骨隆々のドワーフ。この男こそインソムニアの国を束ねる王であった。


「そうですか。ではガンジス。今日はあなたにお願いがあって参りました」


「なんだ! 何でも言ってみろ!」


ガンジスは声を張り上げて答えた。

それにしてもドワーフというのは一言一言声が大きい。

脳天に響き渡るその声量にまだ慣れない美奈は、常にドワーフが喋る度にビクりと驚いていた。

語調が強く、まるで怒っているようにさえ聞こえるのだ。

実際は全くそうではないのだが、元々大人しい性格の美奈はどうしてもそういった喋り方が苦手であった。


「ガンジス、現在閉鎖中の炭鉱に入る許可をいただきたい」


「何!? あそこは危険だぞ!? それに魔物が棲みついておる!」


アリーシャの話に思わずガンジスは目をひんむいた。

派手な顔が更に派手になって最早仁王のようだ。

いちいちリアクションが大きいのだ。

美奈はアリーシャの陰で笑顔を浮かべながらも内心冷や汗をかいていた。


「はい、知っています。私達は訳あって、そこにいるアダマンタートルの討伐をするつもりなのです」


アリーシャはというとドワーフには慣れているのか至って冷静に話を進めている。

それに隣で澄ましているフィリアの存在も手伝って、美奈は何だか自分だけがびくびくしているようで少し恥ずかしくなった。


「アダマンタートルは十数年前、我が国の歴戦のドワーフを送り込んでも歯が立たなかった相手だぞ!? あれを討伐できるとは到底思えんがなっ!」


「確かにそれはそうかもしれません。ですが私達パーティーも腕に覚えがあります。それにこのミナは予言の勇者の一人でございます。精霊を操り身体能力や魔力はずば抜けた物を持っております」


「予言の勇者だとっ!? その者がか!?」


突然自分の方を見られて美奈は出来る限り平静を装いつつこくりと頷く。

ドワーフはまたまた目をひんむいてしげしげと美奈を見つめた。


「う~む……その少女がか。……むむむ」


確かにガンジスからしたら十八歳の人間の女の子が勇者と言われても実感は湧かないのだろう。

それに美奈は身長も低く、優しい性格も相まって全く強そうには見えないのだ。

ただでさえそんななのに今はドワーフのがなりたてるような物言いに圧倒されてしまい、無理矢理笑顔を作っているような状態。

正に蛇に睨まれた蛙。

熊に囲まれた小動物と言っても過言ではない。

美奈は今、笑顔を浮かべるだけで精一杯だった。

そんな美奈の心中を知ってか知らずか、アリーシャは次にフィリアを紹介していく。


「更にこちらのフィリアは補助魔法と氷を操る能力を有しています。そして私はご存知の通りヒストリアの騎士であり、日々たゆまず研鑽を重ねて参りました。その結果、今や騎士団の副団長にも劣らぬ実力を得たと自負しております。是非ともお任せいただきたい」


「なんとっ……むう……」


「父上! いいではありませんか! 是非ともお願いしましょう!」


ぐむむと考え込んでいるガンジス。

その時ずっと先ほどから傍らに控えていたもう一人のドワーフが口を開いた。

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