15
温泉を後にし、三人は宿屋へと続く大通りを北へ歩いていた。
街は天井の魔石による灯りが無くなると、街灯の灯りに切り替わり、夜の街の雰囲気を醸し出している。
天井の魔石は夜の時間にマナを吸収すべく灯りが消える。
その代わりにこの街の更に地下に設置された魔石から魔力を街へと供給するようになるのだとか。
後は街の中心にも一つ。これらの魔石でこの街の灯りや動力を担っている。
この辺りのことは場所や魔石の大きさや数に違いはあれど、どこの街でもそんなに違いは無いのだとか。
なので魔石は大きな街では欠かせない人々の生活必需品なのだ。
「あ~……良かったですね~……露天風呂」
ご満悦といった表情でふわふわと軽やかなステップで歩くフィリア。
顔は蒸気し、いい具合に火照っている。
そのせいか昼間よりも肌艶も良さそうに見える。
だがその後ろについてきている美奈とアリーシャはフィリアとは対照的にげんなりとして疲れきっていた。
「全然ゆっくり出来なかったんだけど……。むしろ疲れたよ……」
「フィリア……全く……君という人は」
「まあまあお二人共、私たちの親交が深まって良かったではありませんか。また行きましょうね?」
「あれは深まったって言わないと思う!」
「わっ、私は二度と御免だからなっ!」
フィリアの言動に即刻否定の声を上げる二人。
かくして恐怖の露天風呂大会その一はフィリアのご満悦で幕を閉じたのであった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
インソムニアの夜はヒストリアほど閑散とした雰囲気ではない。
酒場や温泉などといったちょっとした娯楽施設があるためだ。
武具を扱う店が多いので、戦いを生業とした者達も数多く滞在しているのもあり、旅の一時の息抜きも兼ねてそういった店を利用する人も少なくない。
よってこの時間でも街はかなりの賑わいを見せていた。
通りを歩く三人は若い女連れ三人組という事もあってか、道行く人々にチラチラと視線を送られていた。
そしてその全てが男。
中には下卑た笑みを浮かべる者もおり、自然と足早になっていった。
「アリーシャ、フィリア。……なんか見られてるよ?」
「ああ、そのようだな」
「ミナ様、アリーシャ様! こんな所に長居は無用です! 変な輩に絡まれる前に早く宿に戻りましょう!」
「フィリア、違うのだ。その中に一つ、違う感じの視線が混じっている」
「えっ!? そうなの!?」
美奈のの言葉には確かにフィリアの言う意味合いに対することものだったが、アリーシャはそれ以外に別の視線を感じ取ったようだ。
アリーシャの表情が急に真剣なものに変わる。
「え!? ……敵……ということですか?」
「……分からない」
急な展開に小声になる。
確かに色々な者達が自分達を見ているのはそうなのだが、その中に異質な視線を送る者の存在があるというのか。
「オリジン? 何か感じるかな?」
『いや……特に魔族らしき反応は感じんのう……ならば人か』
オリジンに確認を取るとそういった返答が帰ってきた。
「あっ、路地裏へと移動したが……どうする?」
アリーシャがそう言うので三人は顔を見合わせる。
恐らく人気の無い場所へ行って自分達を誘っているのだろうが。罠だという可能性も充分に考えられる。
「行って……みる?」
美奈の提案に頷く二人。
確かに行動が解せない部分もあるが相手は一人。対してこちらは三人である。例え罠だとしてもこのメンバーならば大抵の事には対応出来る自信があった。
美奈達は件の相手が入り込んだ路地裏へと足を踏み入れた。




