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私のわがままな異世界転移   作者: とみQ
第2章 ドワーフの王国、インソムニア
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「実はこの規模の魔石はヒストリアにもあったのだ」


ふとアリーシャが横に並びそんな事を呟く。

その横顔にはうっすらと微笑みが浮かんでいる。


「え? そうなの?」


「ああ。一つは城の地下、もう一つは中央広場の地下にそれぞれ設置されている。その二つがヒストリアの街の灯りを始め、様々な動力源となっているのだ」


確かにヒストリアの街は夜になると自然と外灯が点る仕組みになっていた。

ネストの村では一つ一つ魔法で点けて回っていたので、一体どうやっているのかと不思議に思ったものだが。そのような仕組みがあったのだ。


「でも魔石の魔力はすぐに切れちゃわないの?」


美奈の疑問にアリーシャは笑顔で頷いた。


「魔石には元々魔力を外から取り込んだり放出したりする力が備わっている。放出し過ぎれば自然と取り込もうとするしその逆もしかりという訳なのだ。そんなだから魔石を体内に介する魔物達には飢えというものがない。別に食事などは取らなくてもいつまでも生きていられるのだ」


「へえっ……」


美奈は改めて魔石の凄さというものを実感する。

世界の至る所に蔓延(はびこ)る魔物にはいなくなってほしいが、この世界では魔石というものは人々が生活をしていく上でなくてはならないものなのだ。

魔石は既に色濃く人々の生活に入り込んでいる。


「アリーシャ様、とりあえずどこに向かいますか?」


話しているうち馬車は進み、地上までおおよそ五メートル位の高さまで降りてきていた。

道幅が五メートルくらいしか無いのに道の端に柵のような物が全く無かったので、落ちてしまうのではないかと美奈は内心冷や冷やしていたが。その心配もようやく無くなったと言っていいだろう。

美奈は一人安堵の息を漏らした。

思えばここへ来るまでの時もそうだった。

基本的に渓谷沿いに馬車を走らせていたのだが、柵は橋の近辺にしかついていなかった。

それ以外の場所は無防備な崖。一歩間違えれば簡単に転落してしまう。

美奈の感覚では危険だし心配になってしまうのだが、その辺は慣れなのだろうか。


「大丈夫かミナ?」


「あ、うん。何でもない。大丈夫だよ?」


そんな美奈の心中を察したわけではないだろうが、アリーシャが黙っている美奈を見て声を掛けてきた。

美奈はそれに手を振り応える。


「うむ、ではとりあえずこの前の魔石屋に行ってみようか」


「なるほど。分かりました」


そうこうしているうちに目的地は魔石屋に決まったようだ。

美奈がアリーシャに初めてネストの村で出逢った時、インソムニアへの使いの帰りだと言っていた。

そして光属性の付与された魔石を購入し、それを国へ持ち帰る途中だと。

おそらくその時の店に行くのだろう。

道中サーペントライガーを初め、たくさんの魔物と戦い魔石を得た。

先ずはそれを換金して軍資金の調達か。

しかしその時ふと美奈の頭に疑問が浮かび上がった。


「アリーシャ、前回ここへ来た時はサーペントライガーはどうしたの?」


アリーシャは馬車でネストの村に来た。

ということはインソムニアに行く途中、サーペントライガーに出くわしたに違いない。

帰路はドゥクライガの実を買っていけば済む事なのだが行きはそうはいかない。

あの頃のフィリアは氷系の魔法が使えなかっただろうし、御者とアリーシャだけではいくらアリーシャが強いといっても相当苦戦したのではないだろうか。


「ん? ……ああ」


そんな美奈の意図にアリーシャは少し思案してから気づいたようだ。


「前回は航路を使ってインソムニアに来たからな。サーペントライガーとの戦闘は行っていない。馬車は船に乗せてくればいいし、最悪インソムニアとの交流は少なくないのでな。借りる事も出来ただろう」


「……あ。……そっか」


そう言われてようやく気づいた。

先程のドワーフもアリーシャが陸路で来ることを珍しがっていた。

前回も船でインソムニアにやって来たのだ。


「私、そんなに頭回る方じゃないから……」


「別に気にするな。私としてはミナのように何でも気軽に聞いてくれる方が助かる。分かっているようでも伝わっていない時だってあるのだからな」


「はあ……アリーシャ様がそれを仰いますか……」


二人の会話を御者台から聞いていたフィリアがため息混じりにそんな事を呟いた。

フィリアの言葉に得心がいかず、美奈は人差し指を口元に当て思わず首を傾げてしまう。


「フィリア? ……私も昔はかなり無愛想で無口だったが、今では割りとそうしているつもりなんだが……」


急に戸惑うアリーシャは先程までの余裕はどこへやら。フィリアはそんなアリーシャに振り向きもしない。


「はいはい。旅に出るというのに私に何の相談もしてくれなかった事は別に全く本当に気にしていません」


「フィリア!?」


フィリアの放った一言にアリーシャが凍りつく。

言葉まで氷の力を得たのかと美奈は不謹慎ながら感心してしまった。

それはさておき、ここからしばらくアリーシャとフィリアの夫婦のような問答が続いたのだった。

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