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私のわがままな異世界転移   作者: とみQ
間章 シルフとアーバンの憂鬱
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六日目

柔らかな陽光が射す早朝。アーバンは訓練場へ向かおうとしていた。

騎士見習いの生徒達を訓練するため、自身の剣を携え騎士寮の自室の扉に手を掛ける。

するとその時扉の向こう側から誰かがノックをしたのだ。


「誰だ?」


「俺だよ、アーバン」


「? ロメオか……?」


扉を開けるとそこには見知った同期の友人、ロメオが立っていた。

騎士の鎧に身を包み、自信に溢れた(たたず)まい。

元々長身なのに燃えるような赤髪を立てていることでより一層身長が高く見える。

身体ががっしりしていて目つきが悪いのも相まってかなり威圧的で怖い印象を受ける男だ。

今でこそお互いを親友と呼べる程仲良くしているが、騎士学校時代はロメオが騎士の出自、アーバンが平民の出ということもあり、常々いがみ合っていた。

今思えばよくここまで関係が良好になったものだと思う。

アーバンはロメオを改めて見、これから街の見回り警護といったところなのだろうと思った。

わざわざこんな早朝から一体何の用だろうか。


「こんな朝早くに一体どうしたというのだ?」


「いや、ちょっと気になる事があってな」


「気になること?」


「そんなことより中に入れてくれよ」


「いや、今から出るところなのだが?」


「すぐ終わる」


そう言って半ば強引に中へと足を踏み入れるロメオ。

こういう所は昔から変わっていない。

こちらの意向はあまり気にせず自分のペースで事を運ぼうとする。

まあお互い隊長という階級。そう暇ではない。

長くはならないだろうと観念して中に戻る。


「相変わらず質素な部屋だな」


扉を閉めて部屋へと入るとロメオは開口一番そんなことを言った。

これもいつものことなのでアーバンは無視する。

ロメオはそのままベッドに腰掛けると、「はあ……」と短いため息をついた。


「で? 一体何の用だ?」


「お前、アリーシャ様のことが好きなのか?」


「ぶふぁっ!!!!」


「お前! ……きったね!」


余りにも唐突過ぎて思わず吹き出してしまうアーバン。


「な……何を言うのだ!? いきなり!」


アーバンは基本的に物事に動揺したり心を強く揺さぶられるようなことは無いタイプである。

しかし事恋愛に関しては未だ学生の域を脱していない。

いや、下手をすれば今時の学生の方がよっぽど恋愛の経験が豊富なのではないか。

そんなだから急に惚れた腫れたの話を持ち出されると、未だにどんな態度で受け答えしていいのか分からないのだ。

アーバンは何故ここでアリーシャ様の名前が出てくるのか全く考えが及ばぬまま、頭がぐらぐらする感覚を味わっていた。


「いや、何か一昨日アリーシャ様がお前を探してるってソニアが言ったら凄い勢いで追いかけていったそうじゃないか、ソニアが気にしてたぞ? というかその反応だと……図星なのか?」


「――ああ」


それを聞いてようやく得心がいく。

何故かロメオが目を輝かせているように見えるのは気のせいだろうか。

アーバンは内心ソニアにまた余計なことをしやがってと舌打ちした。

彼女がわざわざそんな事をロメオに報告するということは、きっとまた自分をからかって楽しんでいるのだとそう思った。

そこまで考えてアーバンは辟易しつつ、とにかく事の経緯は理解出来た。

昨日の訓練場での一件なのだろう。


「あのな、私がアリーシャ様に恋慕(れんぼ)の念を抱くなど、(おそ)れ多い。そんなわけないだろうっ!」


そう言うアーバンにロメオはつまらなさそうに舌打ちをした。


「ちっ、なんだよ……せっかく朝から出向いたってのに、収穫なしかよ……」


「はっ? 収穫??」


「あ、いや! べ、別に独り言だ。気にするな。じゃあ朝から邪魔したな。帰るわ」


「あ、ああ」


それだけ言い残して去っていくロメオ。


「……何だというのだ、一体?」


ロメオの去った扉をしばらく見つめるアーバン。

結局アーバンにはいまいち事の真意が読めなかった。

こんな早朝に、わざわざ確認しにくるような事だろうか。


「あっ、まずい! 私も行かねばっ!」


アーバンは自分も出掛けるのだったと気づき、慌てて扉を開けるのだった。

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