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私のわがままな異世界転移   作者: とみQ
間章 シルフとアーバンの憂鬱
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四日目

アーバンは久しぶりの休暇を貰っていた。

戦い以後寝たきりとなっていたアリーシャも昨日ようやく目覚めた。

そして被害のあった町の復旧作業や傷ついた兵士や騎士の治療もようやく一段落。

無傷で済んでいた者も一度休みを取るような流れになったのだ。

とはいっても普段から真面目でこれといった趣味も持たないアーバン。

休みの日はいつも暇を持て余し、結局訓練場へと足を運んでしまっていた。

流石に戦いの後の休暇ともなれば、家でのんびりと過ごしても良かったのだが、出来れば体を動かしていたかった。

というのも昨日はアンガス王直々(じきじき)に予言の勇者の話が伝えられた。

その話とそれを聞く椎名の表情を見てしまった事が大きな要因であった。

アーバンはその時の彼女の表情が今も頭に焼きついて離れないでいた。

彼女は納得などしていなかった。

寧ろこの事で大きく胸を痛めているのが容易に想像出来てしまい、アーバンはやるせない気持ちになる。

そんな事がありアーバンはずっと悶々(もんもん)とした想いを抱えながら過ごしていた。

アンガスは予言の勇者はアリーシャを含め四人と言った。

だが勇者と一緒に戦った自分はそれが嘘だと知っている。

もう一人、四人目の勇者隼人がいるのだから。

アーバンは彼が魔族に連れ去られてしまった事を既に美奈から聞かされていた。

それを隠して王は予言の勇者の話をしたのだ。

何故そんな嘘を言うのかと一瞬困惑したが、現にアリーシャが勇者であると知った騎士や街の人々は歓喜の表情に満ちていた。

それもそうだ。

我が国の、それも王女であるアリーシャが予言にある勇者だという事実に心踊らせない訳がない。

それを見て、王はこういう事態を予測して皆に嘘をついたのだと理解した。

それが本当にいい事なのかどうかは別問題だが、それを目の当たりにしてしまったら、アーバン自身も何も言えなくなってしまったのだ。

ただそれでもマイナスな部分もあるにはある。

アリーシャに対して快く思っていない者が少なからずいる。

そんな者達の反感を買ったのだ。

まあそういった者達は今でこそそう多くは無い。

アリーシャ自身も努力を重ねてきたのだから。

だか未だアリーシャに対するそういった見方が消えないのも事実。

そこにはそれなりの理由があった。

アリーシャは兄であるアストリア程では無いにしろ剣の才には恵まれていた。

だが昔から周りに愛想を振りまくという事も無く、皆と馴れ合う事はしなかった。

一人で行動する事が多く、常に一匹狼であったのだ。

それは希少な闇属性の魔法の適性があるという事で忌み子と言われながら幼少期を過ごした事が大きな要因と言える。

そして現在騎士となったとはいえ一国の王女。

決められた隊には所属していない。

王から勅命(ちょくめい)を受けて動く事ばかりであった。

そんな彼女に団長のベルクートが構い立てしていた事や、副団長のライラ直々(じきじき)に稽古(けいこ)をつけていた事も(ねた)みに拍車(はくしゃ)がかかる要因となったのだ。

更に男の騎士などから見ればアリーシャが女だという事が特に気に入らない。

そこはアストリアとの決定的な差であると言っても過言では無い。

この国には男尊女卑(だんそんじょひ)や身分の格差などという問題が今でも根づいている。

そんなだから自分より剣の才能がある者が女だという事実も妬みの対象となってしまうのだ。

王女であるのならば王女らしく振る舞えというような。

もちろん貴族や平民の出自であり女性の騎士という者も少数ではあるが存在する。

彼女達も騎士の道を目指すという事は生半可な覚悟ではとても続かない。

それこそライラのように天武(てんぶ)の才に恵まれていれば話は変わってくるが、常人の何倍も努力を重ねるのは当たり前。

それでいて人並み以上の結果を出せた者だけが生き残れる世界なのだ。

そして最後に兄であるアストリアの存在だ。

アストリアは一言で言うとカリスマ性に富んでいる。

剣の腕は勿論、愛想も良く、皆から愛されている。

そんなアストリアが今は消息を絶っている。

勿論公(おおやけ)にはしていないがアリーシャに対する猜疑心(さいぎしん)のあるような者に限って内政に深く関わる者が多いのも事実。

そうなればアストリアに心酔(しんすい)するような者は今回のアリーシャの一躍ヒーローになったような扱いは不愉快に思っても何らおかしくはないのだ。

もし仮に勇者と(あが)められる者がヒストリアの国にいるとすればそれは間違い無くアストリアだと思うだろうから。

そういった理由から一部の者達の間では予言の勇者がアリーシャなどという事は全くのデマであるというような事を(ささや)く者もいるようであった。

しかしながら結局そういった者達の見解の方が的を得ているのだから大層(たいそう)皮肉なものである。

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