シルフの独白
ボクは精霊だ。
精霊の寿命は長い。
それは人から見れば永遠にも思える程の長さらしい。
だけどボクはそんな精霊の中では若い部類に入る。
ざっと百年と少しくらいしか生きていない。
その言い方もおかしいか。存在していない、と言った方が正しいかもしれない。
ボクは生まれた頃、同じ精霊のおばちゃんと一緒にいた時期があった。
そのおばちゃんは生まれてから少しの間だけ一緒にいてくれて、この世界の色々な事を教えてくれだんだ。
その時の事をボクは今でも昨日の事のように覚えているけれど、その中でおばちゃんが一つ教えてくれて忠告を思い出した。
人間の女はめんどくさいから気をつけろ、だ。
それについてボクは今でも完全に理解したわけじゃないけれど、今回の事で少しだけ実感が湧いた。
まあ悪いのはボクだっていう事はもちろんわかってる。
めんどくさいなんて悪口めいた事も実際思ってるわけじゃない。
要するに今回の事を簡潔に言い表すならば、ボクは失敗してしまったんだ。
彼女を傷つけるつもりなんてこれっぽっちもなかったのに、うまくいかなかった。うまくやれなかった。
本当はただ彼女に元気になってほしかっただけなんだ。
いつも明るくて。皆のことを考えていて。
そんな彼女を励ましたくて。
良かれと思って口をついて出た言葉が、まさかあんなに彼女を傷つけることになるなんて。
きっと彼女なら納得してくれると思ってしまっていたんだ。
だけど考えが甘かった。
ボクは精霊だから、まだまだ人の心の機微というものには疎いのだと反省した。
けれど今反省しても遅いのだ。
彼女を傷つけないで済む方法を。
言葉をしっかりと選ぶべきだった。
ただでさえいっぱいいっぱいだった主の心を乱す手助けをしてしまうなんて、ボクは本当に精霊失格だ。
ボクは今この瞬間も彼女の心を直接的に感じながら、そんな後悔をしていた。




