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私のわがままな異世界転移   作者: とみQ
ヒストリア王国最後の激闘編
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第2章 この世界はきっとそういう風にできている 5-16

目の前に広がる濃密な霧のせいで気づけば視界不良。ポセイドンは離れているから分かるとしてもすぐ近くにいた隼人くん、アリーシャまでも見えなくなってしまった。

ポセイドン自身はこの霧に触れている存在を感知しつつ、尚且つ私たちは私たちで三人連携がうまくとれない。そんな狙いか。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


話は再び精神世界での出来事へと戻る。


「でもさ、どうして私もまた精神世界に来たんだろ?」


オリジンは間違いなく美奈に宿っていた精霊だ。単に契約を結ぶということならば私は別に必要ないはず。というかそもそも一緒に来られるなんて思ってもみなかった。


「フオッ、フオッ、フオッ。それはワシがシーナと話をしたかったからじゃよ」


にべもなくそう告げるオリジンのおじいさん。


「……え? 私のファンとか!?」


「えっと……。めぐみちゃん?」


「フォッ、フォッ、フォッ。相変わらず面白い娘じゃのう」


「分かってるわよ。ほんの冗談じゃない」


苦笑いを浮かべる美奈。そんな彼女に腕を組みつつ念を押して一応否定はしておく。美奈ってけっこう真面目なとこあるからすぐ冗談を本気にしちゃうのよね。


「フオッ、フオッ、フオッ。シーナよ。今回お主はちと勘違いをしておると思うてのう」


「……勘違い?」


「そうじゃ。お主、シルフが自分のせいで居なくなってしまったと思っとりゃせんかのう? まさか消失してしまったなどど」


「え……!? ど、どういうことよ!?」


シルフの名前を出されて私は戸惑いの色を隠しきれない。

私はオリジンの言う通り、自分のせいでシルフを消失させてしまったのだと思っていた。

だけどオリジンの発言から察するに、私の解釈は間違っているということなのだろうか。

少なくとも彼の口振りから、今の私にとって喜ばしい有益な情報を教えてくれるんだということだけはわかる。


「うむ。シルフはまだお主の中にちゃんと存在しておるぞよ?」


「? ……何言って……うそよ。だって私、あの時からシルフの存在を一切感じなくなっちゃったのよ?」


そうなのだ。西の広場でゲートの中に閉じ込められた時から、シルフに呼び掛けても一向に返事はないし、身体の中に彼の存在を感じられなくなってしまったのだ。そしてそれは今でも変わらない。

そんな状態だからシルフは私の中からはいなくなってしまったものだと思っていた。

だからそのことは自分のモチベを保つためにも極力考えないようにしてきたのだけれど。

今さら無事だと言われても正直俄には信じ難い。

けれどシルフにまた会えて、再び一緒に戦うことができる可能性があるのなら、こんなに嬉しいことはない。


「確かにシルフは現在力の大半を失い、深い眠りに落ちていることは間違いない。だからシーナの呼び掛けにも答えられなかったのじゃよ」


「眠り?」


「そう。眠っておるのじゃ。なので再びあやつを起こしてやらねばならん。だからお主をここへ連れてきた」


「え……と。結局私は何をすればいいわけ?」


オリジンの話を聞く限り、どうにかしてシルフを起こすということなんだろうけれど。

シルフに呼び掛けても今まで反応が無かったのに、何か特別な処置が必要なのだろうか。


「ふむ。ここは精神世界。言わば心が実体化する世界じゃ。よってより近しい距離で人と精霊が会話できると言っても過言ではない。今のワシとお主のようにな。シーナ、シルフに心の限り呼び掛けてやってくれ。お主が本当に心の底からあやつを必要としてくれるのならば、その声はきっとあやつに届くはずじゃ」


「……」


オリジンの柔らかな瞳に見つめられて私は少したじろいだ。何かダメだ。いちいち泣いてしまいそうで。私は涙を既の所で堪えつつ彼から目を逸らす。

そしたら不意に私の手が握られた。顔を向けると目の前に美奈がいた。


「大丈夫だよ? めぐみちゃんはすごいもん」


「……バカ。……バカ美奈。……何で今そんな事言うかなあ……ホントむかつく……」


そう言いながら私の頬を今日何度目かの涙が伝う。

ほんと私ったら弱すぎる。弱すぎてこんな自分が大っ嫌い。

私は美奈の肩に顔を埋めながら目を閉じて、心の限りに相棒の名前を叫んだんだ。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「エンチャント・ストーム!!」


私の右手に装着したユニコーンナックルが眩い光を放ちながら暴風を発生させる。

そこを起点に霧が文字通り霧散して、視界が悪くなったのも束の間。目の前に再び皆の姿が見えた。


「さすがシルフの力を借りたエンチャント・ストームは中々の力よね」


『ふふ……シーナってば、君はほんとにいつも調子いいんだから』


「あら? それって私の長所でしょ?」


脳内に響き渡る相棒の声に私は確かな安らぎを感じながらその声に微笑を浮かべながら応えるのだ。

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