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108界目の正直:異世界召喚はもうイヤだ!  作者: 阿都
第1章「やった! 魔王を倒したぞ!」
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06,一応これでも剣士ですから

「さてっと。お互い、まだ名のってなかったよね」


 半分消し炭になった元大蛇と戦場の後始末を手伝ったあと、俺は改めて彼女たちと向き合っていた。

 彼女たちのパーティーは6人。

 もっと多いかと思っていたけれど、戦術運用で誤認させられていたようだ。

 それだけで、この人達の力量がわかるというもの。


 常に最前線で戦っていた女の子が、溢れそうな興味を隠そうともせず俺を見る。

 黒髪をポニーテールのように束ね、急所のみを守るように設計された機動性重視の軽装鎧とは裏腹に、重厚な力感をまとう手甲。

 うわぁ。鎧も手甲も、いい付与が施されている。

 これは思っていたよりも、さらに上のランクの人たちかもしれない。


「俺はカズマといいます。偶然とはいえ、助かりました。ありがとうございました」


 俺は相手より先に名のることにした。

 お礼を告げることも忘れない。微妙なニュアンスを含めて。

 女の子たちは少し面食らったようだった。


「助かったのはこっちよ。私はトリーシャ。一応このパーティーのリーダーを勤めてるわ」

「俺はチャド。さっきはありがとうな」


 トリーシャとともに、盾戦士も戸惑ったように名のる。

 チャドは見たまんま戦士だ。盾と重鎧と片手斧。ゲームで言うならタンカー役だろう。

 あの大蛇の一撃をくらっても片腕骨折で済ませるあたり、かなりの防御技術をもっていそうだ。


「私はブラム。ご助力に感謝を」


 前衛組の最後は槍戦士。細面で落ち着いた雰囲気はむしろ法術士のような印象だけれど、俺はしっかり見ていた。

 この人の槍術は半端ない。あのスピード重視の戦闘のなかで、常に大蛇の鱗の継ぎ目のみに攻撃を加えていた。

 しかもできる限り、執拗に念入りに、同じ1か所にめがけて。

 針の穴を通すような正確な攻撃を、長時間続ける技量と精神力。

 見た目に騙されちゃいけない。この人、敵に回すと恐ろしいよ。


「あたしはハリエットです。あの、ホントにホントにありがとうございました! あたしがしくじったせいで討伐失敗するとこでした!」

「……イネス。アンタすごいな」


 後衛の2人は、法術士と弓術士。

 ハリエットは、全員がせいぜい20歳前後だと思われるこのパーティーのなかでも、一番若い印象を受ける。

 いかにも白魔術士のようなローブを羽織り、法術強化用のロッドを持って、ひたすら頭を下げていた。

 彼女が拘束術を担当したのか。

 ハリエットは恐縮しているけど、あれはあれですごいイメージ強度だったと思う。しかも戦闘後にチャドの腕を癒やした治癒術は、はっきりきっぱり一流だ。


 弓と矢筒を背負ったイネスは、神経質そうな細い目で俺を見定めるように観察している。

 この人の弓術もあなどれない。ヒット・アンド・アウェイする前衛組への支援攻撃は、それはもう素晴らしいタイミングと正確性だった。

 彼が後ろにいてくれるなら、安心して戦える。そう思わせるだけの技量を持ってる。


 そして最後は、あのオーバーキラー。

 黒と紺を基調にしたドレスローブを着て、赤みのかかったブロンドの髪と、人目を引くその容貌は、まさに正しく美しい! の一言なのだけど。


「ねぇ、あなた。見事な拘束術だったわね。ワイヤー3本に光属性と操作、ってことは4ワード? それであのイメージ強度が保てるなんてなかなかだわ。あなたの名前は聞いたことがないけれど、もしかしてまだ修行中なの? 誰から教わったの? ぜひお話が聞きたいわ。法術士同士、情報交換は必要と思うのよね。あ、秘伝や秘術まで教えてとは言わないわよ。でもでも、話したいなら聞くわ。ええ、もちろん些細なことだって大歓迎よ。だって法術を極めるには、どんなに小さな情報もけっして無駄にはならないものね! だから……」

「シーアーーー」

「は、はい! なぁに? トリーシャ」

「まず名のりなさいよ! ホントにアンタはまったく!」

「はい! ごめんなさい! 私はシンシア。シンシア・フォスター。親しい人はシアって呼ぶわ。なんなら、あなたも呼んでくれてかまわないわよ。優秀な法術士とは、ぜひ仲良くなりたいものね。私はなんて呼んだらいいかしら? カズ? そうね、カズがいいかしら? ね、これからカズって呼ぶわね」


 ……うん。オーバーキラー&マシンガントーカーの法術大好きっ娘って感じですね。

 本当にありがとうございます。俺にとってはご褒美でもなんでもありません。


「シンシアさん」

「シ・ア!」

「……シアさん。ご期待には添えないかも」

「え、なんでどうして! 法術士同士、親睦を深めましょうよ! だって……」

「いや、俺、法術士ではなくて、一応これでも剣士ですから」


「「「はい?」」」


 その場にいた人、みな口を揃えてツッコミをくれました。

 そんなに驚くことかなぁ。


 それより早く移動した方がいいと思う。

 

 ……嫌な気配が近づいてる。



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