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108界目の正直:異世界召喚はもうイヤだ!  作者: 阿都
第1章「やった! 魔王を倒したぞ!」

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10,きっちりはっきり説明しろよな!

 今、俺はトリーシャたちと一緒に大型の幌馬車に乗って、ロンディニムという都市を目指している。


 誘われた、というよりも強制連行に近い。


 1つ。魔族討伐にあれだけ貢献してくれた以上、報酬を払わないわけにはいかない。

 討伐報告の後、報奨を山分けするから、一緒に来てほしい。


 1つ。その法術に戦闘技術。とても興味深い。情報交換しないか?

 っていうか、その腕前を活かさないのはもったいない。うちの仲間になんない?


 トリーシャ、いきなり勧誘かよ。ちょっとうれしいけど、さ。


 そして、もう1つ。


 逃がさない、って言ったでしょ! 私と法術について語り明かしましょう。

 満足するまでつきまとうわよ。


 うん。最後の理由だけは思いっきりスルーしたいところだけれど、たぶん無理。

 この法術大好きっ娘は、おそらく討伐報告を放り出してでも、俺にくっついて来るよ。

 やばいぐらいに見つめてくる。いや、もう呪い殺すぐらいの視線です。


 ……別の世界にこんな魔眼を持ったモンスターがいたなぁ。


「まぁ、とって食いはしないから気にすんな。というより気にするだけ無駄だ。諦めろ」

「とっても役立つ助言に感謝……」


 チャドが苦笑いしながら、干し肉を投げてよこした。


 幌馬車の荷台には精霊術の付与がかけられているようで、揺れが少なく結構快適だ。

 やはり前世界と同じく精霊術による道具類が普及しているらしい。


 御者はイネスとブラムが交代で勤めていて、今はイネスの番。

 ブラムは荷台の隅で槍を抱えるようにして座り、目を閉じている。

 本当に寡黙な男だな。


「で、なんであんなところにいたの? しかも1人でさ。アンタなら確かになんとかできそうだけど、それにしたって1人は無謀よ?」


 トリーシャの疑問は当然だよな。ハリエットも勢い良く頷いている。


「いや、その、恥ずかしいんですが、単純に道に迷ったんですよ」

「はい?」


 俺は、もちろん誤魔化すことにした。


「俺、地図にも載ってないような辺境の小さな村から出てきたんですが、道に迷ってしまって。とにかく休めるところを捜していたら、あの廃墟に出たんです。とりあえず大きい建物を選んで入って休んでたんですが……」

「スレイブが戻ってきた、と?」

「そういうことです。あんな化物の寝床とは思っていなかったから、驚きました」

「……ふーん」


 はい、疑われてますね。

 でもさ。こういう時は胡散臭い理由のほうがいいと思うんだ。


 もっともらしい嘘ついたって、本当に根も葉もないから、いずれバレる。

 だったら、始めから信じられないようなことを言っておけば「なにか言えない事情があるのか?」と勝手に推測してくれるからね。

 もともと冒険者のような職種は身元がよく分からない人が多いし、訳ありも少なくない。

 そこを追求しすぎる輩は敬遠されるから、話したくない相手には聞かないのが暗黙の了解だ。


「ま、いいか。人それぞれよね」


 ほらね。

 トリーシャはリンゴのような赤い果物を一口かじると、話題を転じた。


「それよりも、法術と剣術。両方とも大したものね! しかもいい剣を持ってる。もしかして銘あり?」

「ええ。一応、アダマスって名がついてます」

「聞いたことないわね。剣匠は?」

「そのままアダマスって人ですよ。この剣の名というよりは、剣匠アダマスが鍛えた1本という意味ですから」

「それだけの業物を鍛える人なら、もっと世間に名が広がっていそうなものだけど」

「俺の村周辺じゃ有名だったんですけどね」

「ふーん。地図にも載らない辺境の村、ねぇ……」


 はい。2回目の「これ以上聞くなコール」を発信。無事、受信された模様です。

 そろそろ、質問し返したほうがいいかな?


「これから行くロンディニムってどんな感じですか?」

「初めて? カズって本当に辺境にいたのね」

「王都だからな。人も物も溢れているぞ。賑やかで華やかで、俺は好きだな」

「チャドはもともと騎士の出だから余計にそう思うんじゃない?」

「でもでも、あたしも大好きですよ! 賑やかっていいじゃないですか。もう元には戻らないんじゃないか、ってみんな思ってたんです。ホントによかったですよぅ」


 シンシアやチャドも混ざって会話が弾む。

 でも、ハリエットがちょっと気になることを言ったな。


「もう以前と変わらないぐらいに戻ったんですか?」

「いや、やっと8割ってとこか。でもなぁ。たった1年しか経っていないことを考えたら、すごい復興スピードだぜ?」

「そうですよ。遷都したほうが早いっていわれたぐらいなんですから」

「まぁねぇ。魔王が今も生きていたらと思うと、ゾッとするわ」


 ……へ?

 トリーシャ。今なんて言った?


 俺は慎重に言葉を選んで、さらに問いかけた。


「魔王、ですか……。もうそんなに経つんですね」

「ああ。英雄が魔王ラシュギを討ち取って1年。やっと平和ってやつを実感できるようになってきたな」

「とはいえ、今回みたいに力を取り戻してきた魔族もいるからね。まだまだ油断できないけど」

「そのために俺たちみたいな荒事専門のハンターがいるんだろ?」

「まぁね。お仕事があることはいいことだけどさ」

「もう! トリーシャさんはときどき不謹慎ですよぅ!」

「そういえば英雄も秘法術を得意としていたっていうわね。ぜひ話を聞いてみたかったわぁ」

「シアはホントそればっかりね」

「今だ名前が公表されていない救国の英雄、か。一体誰なんだろうな」


 盛り上がる皆を前に、俺は頭の中が真っ白になっていた。


 ……あー。えっと。

 もうどこからツッコんでいいのか分からないほど、ツッコミどころが満載なわけですが。


 とりあえず、女神様に物申す。

 きっちりはっきり説明しろよな! ヴァクーナ!



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