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自分が知っている=有名人は勘違い

「よし! 今ならまだ大量に狙えるわ!」


 いまだに朝早くであるということ三階層である迷宮の中には同業者である冒険者の数は少ないことにサブリナはご機嫌そうに呟いた。


「あーそうですね」


 対照的にファラは欠伸をしながら返事をするというやる気のなさである。ネイトにいたっては迷宮に入る前に寄った道具屋で週刊誌を購入しそれに夢中という始末である。


「さ! みんな装備を整えていくわよ!」


 高らかにサブリナが宣言すると彼女は魔法のカバン(マジックバック)から細長い物を取り出し杖を腰のベルトに差し込みそれを両手で握りしめた。見るとファラも同様で細長い物を手にしていた。


 その手にしていた物の名を虫取り網という。


「さ! 捕まえるわよ!」


 叫ぶや否や魔法使いとは思えないほどの脚力を発揮したサブリナが駆ける。それに続くというか追いかける気があるのかはわからないがファラとネイトは歩きながら追う。


「ちぇりゃぁぁぁぁぁぁ!」


 サブリナが奇声を上げながら虫取り網を振り下ろし黄金に輝く生き物を捕らえる。捕らえられた生き物は必死に逃げようとしているが網が絡まり上手く動けないところに脚を振り上げたサブリナが笑みを浮かべながら一気に振り下ろした。


「qiva⁉︎」


 短く悲鳴のようなものを上げ黄金の生き物は沈黙する。それを確認したサブリナは満足気な笑みを浮かべるて網を取り外し黄金の生き物、ゴールデンスライムを掴み上げ魔法のカバン(マジックバック)へと放り込んだ。


「まず一匹」

「早いですね」


 ようやく追いついたファラがサブリナへと声をかける。


「当然よ! 今日はボロ儲けしてみせるわ!」

「まぁ、お金がないのはサブリナだけですからほどほどにしてくださいね? エスケープリングを使うようことにはならないでくださいね。あと潰したらダメですからね。それにあんまり集めたら……」

「当たり前よ。この子たちは可愛い可愛い金貨に変わるんだから!」


 ゴールデンスライムはある特殊な加工方法を使うと金貨へと変わるらしいのだがその技術はギルドが独占しているのである。そのためゴールデンスライムをギルドへと持っていくと金貨へと化けるのである。だがその金貨も持っていったゴールデンスライムの状態により左右されるため傷がない普通の状態で捕獲して持っていくのが常識となっていた。


「 って見つけたぁぁぁぁ!」


 話している最中にもゴールデンスライムを視界の端に捉えたサブリナは飛び上がり虫取り網を振り回していた。そんなサブリナをため息をつきながら見ていたファラは手頃な岩に腰掛けた。


「ネイト、君はいかないの?」


 いまだ雑誌に夢中なネイトに声をかけるとネイト雑誌からは目を離さずにヒラヒラと手を振ってきた。


「確か、君も何か買ってなかったっけ?」

「サブリナほど高いものではない。生活費は残してる。それに……」


 開いたページをファラに見えるようにし、ある一点を指差し至極真面目な顔を作っていた。


「今日の血液型占いはA型は動いたら災難が降りかかると出ている」

「……この世界中の生き物を血液タイプ四つに分けると四分の一は災難が降りかかることになるけど? というかネイト、あなた血液型占いなんて信じてるんですか?」

「この血液型占いを書いているのはかの有名エクソダス先生なんだぞ? 信じるしかあるまい」


 誰? と内心で思ったファラであったが思ったことを口に出すほど子供では……


「かの有名なら占いにも興味がない僕にも知られていないと。つまりそいつは有名じゃない」


 いや、それ以上に子供であった。


「うむ……」


 意外と知られていないことにどことなくショックを受けた様子でネイトは雑誌をしまい、代わりに虫取り網を取り出す。がすぐに魔法のカバン(マジックバック)にしまいこんだ。


「残念だが客がきた」

「みたいですね〜」


 テンション高く虫取り網を振り回し奇声を上げているサブリナは気づいていないが迷宮の奥から幾つもの気配がこちらに向かってきていることにネイトとファラは気づいたのだ。そしてそれは洞窟の形をしている迷宮に音という形で如実に伝え始める。


「……ねえ、足音が多くないかな?」

「うむ、我、ちょっぴり嫌な予感」


 戦闘態勢を取っていたファラとネイトであったが響く足音が思いの外多いことに若干の焦りを感じ始め、わずかに額に汗を浮かばせていた。

 やがて音と共に足元から振動を感じるようになるとすでに二人の危険感知はかなりのものであった。


「……一時撤退といきませんか?」

「我もそれを提案する」


 二人の意見が一致したところでいまだにゴールデンスライムを捕まえているサブリナへと振り返る。


「よし! これで七匹目よ! 今日は大量ね!」


 普通はなかなか捕まえれない物をあっさりと捕まえ額に浮かんだ汗を拭っているところであった。


「サブリナ、撤収しますよ。なんかやば……」

「我、撤収!」

「早ぁ⁉︎」


 ファラがサブリナに声をかけているあいだにネイトは素早く身を翻し迷宮の入り口に向かい疾走していた。


「サブリナ! 逃げますよ! やばいです! なんかいろいろとやばいですから!」

「いやよ! 今日はあと十匹は捕まえるまで帰らないわよ!」


 強情なサブリナに軽く舌打ちをしながら自分は逃げようとファラが入り口の方へと体を向けた瞬間、


「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

「助けテェェェェェ!」


 悲鳴、足音という騒音を撒き散らしながらサブリナのいるほうから新たな乱入者が姿を現れ。


「「は?」」


 サブリナとファラは間抜けな声を上げるのであった。

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