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ごーるでんすらいむ

 ゴールデンスライム。通称ゴルスラ。

 それは一週間のうちに金の日にのみ迷宮に現れるモンスターである。黄金に輝くプルプルと震える固形物が迷宮内にいればゴールデンスライムと言えるものであろう。

 そしてこのゴールデンスライムは非常に高値で売れるのである。言わば金の塊なわけであるから生け捕りにすればかなりの儲けになるのだ。

 そのため金の日にのみ迷宮にもぐりゴルスラを狩る専用冒険者までいる有様である。


「さぁ! 儲けるわよ!」


 そんなお金儲けに最適な金の日の迷宮第一層入り口前にサブリナの大声が響き渡った。そんなサブリナの後ろには鼻にティッシュを詰め込みふがふが言うファラと腕を組み静かに瞑想? らしきものをしているネイトの姿が見て取れた。


「あんたたち! やる気を見せなさい! 今日で儲けて貯えと装備を充実さすのよ!」

「「お、おう」」


 今までにないほどのやる気を見せるサブリナに思わずネイトとファラは一歩後ろに仰け反った。その様子はやる気を通り越してすでに鬼気迫るという勢いといってもいいほどである。


「なにかあったんですか?」

「我はよくわからんがあいつのつけてる指輪が以前より宝珠が大きくなってる気がするんだが……」

「あー言われてみればそうですね」


 ネイトに言われサブリナの持つ指輪に注視してみると緑の巨大な宝石が嵌め込まれていることかな気づいたであろう。そしてそれに愛おしそうに頬擦りするサブリナ。それを見てファラ、ネイトの二人は確信する

 。


「また、無駄遣いしましたね」

「ハァァァ⁉︎ 何処をどう見たら無駄遣いになるのよ!」


 ぼそりと小さくつぶやいたファラの言葉に地獄耳で拾い上げたサブリナが即座に反応する。


「いい! この宝珠は風の宝珠の生産地として有名なフグリアスで採取された至高の逸品なのよ! 効果は魔法攻撃力の上昇と魔力上昇という素晴らしい効果なのよ!」


 嬉々として自分がいかにしていい買い物をしたのかという事を特に誰も聞いていないのにペラペラと饒舌に喋り始めるサブリナであったが対照的にファラとネイトはげんなりとしている様子であった。


((ああ、またか……))


 二人の胸中はまさにこんな感じである。

 酒場でよく賭けの対象にされるサブリナ (というか彼女の気が非常に短いためすぐに喧嘩になるわけだが)は冒険者としては異例の稼ぎ方である決闘での収入を得るで生活しているような状態である。決闘のファイトマネーで初心者冒険者と同じ位には稼ぎをだしている。しかし、彼女の悪癖である無駄遣いのせいでお金は一向にたまらないのだ。


「それにあの子、すぐに偽物掴まれますからね」

「あれも偽物なら売りつけた魔導具屋は更地に変わるであろうな」


 過去に数度、サブリナに偽物を売りつけた流れの魔導具屋のことを思い出してかネイトは遠い目をする。

 同じように思いだしたのかファラの方は深々とため息をついていた。

 ここ、迷宮都市カーディナスは迷宮に潜る冒険者を主に客にしている。武器、防具、薬などは危険な迷宮に潜る冒険者たちにとっては必要不可欠なものだからだ。それも店によってはまるで品物が違うと言えるくらいに大量の店舗が存在する。だからこそ質の悪い道具や精巧に作られた偽物もかなりの数が市場に流れているのだ。

 そんな中、偽物をよく掴まされて帰ってくるのがサブリナという少女である。いつも何かを買ってきては嬉々として報告してくるのだが夕方になると大体は偽物であることに気づき怒り狂うということが多いのだ。


「気づかないうちにさっさと終わらさない?」


 ネイトにだけ聞こえる声でファラが告げる。その言葉にネイトは静かに頷く。


「うむ、いかに我が真の力を解放したとして敵わぬかもしれないからな」


 冷静そうに告げるネイトであったがその実、顔にはびっしりと冷や汗をかいていた。

 それほどまでにキレたサブリナは恐ろしいのだ。まぁ、キレなくても恐ろしいのだが。


「ほら! 早く行くわよ!」


 すでに迷宮に入りたくてウズウズとしている様子のサブリナが大きく声を上げながらファラ達へと手を振り回していた。

 そんなサブリナに手を振り返しながらファラはネイトへとアイコンタクトを取る。


(やばくなったら撤退だよ)

(当然だ。最悪、サブリナには…… 囮となってもらい我らは脱出だ)


 どこまでも仲間に向ける思考とは思えない事を口から出したネイトにファラも頷くとサブリナの元へ向かうのであった。

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