序章 大邪神、降誕!!!!!
その日、ダークエルフ達は歓喜した。
村に唯一ある神殿の床に描かれた魔法陣の中には、一人の人影が悠然と座しており、その頭上には、恰もその人物の威光を表しているかの様に、神々しく金色に輝く光珠が、今迄暗闇の中に沈んでいた神殿の中に浮かび上がり、あたりを真昼の様に照らしている。
その光の荘厳さが、美しさが、そして何よりも、その力強さが、この魔法陣の中におわす存在が何者であるのかを、何よりも雄弁に物語っている。
彼らの執念は実を結び、今、此処に、奇跡が起こったのだ!
神話の中の邪悪の化身、伝説の恐怖をもたらす絶対悪!
そう、彼等はこの世の全ての理を破壊する、狂暴にして凶悪なる不吉な存在、大邪神を召喚したのだ!
「やった!やったぞ!遂に、これで奴らに、遂に目に物を見せてくれてやれる!」
「今こそ、今こそ我らの悲願が達成される時!」
「ああ、ああ!神は、いえ邪神様は本当におられたのですね!今迄の苦難は、この為にあったのですね!」
ダークエルフ達は、あまりの感激から床の上に頽れて、感謝の念が強すぎる余りに、皆一様に滂沱の涙を流しており、顔を床の上から離す事ができない有様であった。
そんな、ありとあらゆる賞賛を一身に受ける大邪神は、
「はぁ?何?何?何何?一体何事?何があったの?起こったの?」
……………… 自分の身に何が起こったのかを理解できず、親子丼を片手に混乱しているだけであった。