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思えば、何もかもが一瞬の出来事だったのではなかったのだろうか。


ここに着いてからはあたりまえのように3時間ほど洗いたてのシーツみたいな原稿用紙と向き合っている最中で煙草が切れて表に出た。

初夏だというにも関わらず気温35度を超す焼け石地獄の環境でも、家賃2万円のボロ屋は築50年超えの平屋ではあるが風通りもよく海辺にあるため天国のようだ。珍しく後藤のやつも良い仕事をしやがると感心する。


この島に越して来て早4日、移住者も珍しいド田舎の離島ではまるで見世物パンダのように島民が寄ってたかって俺の様子を観察しに来ていた。狭い島の中だ。4日も経てば大方の人間と知り合い、数人とは打ち解けてもいるためかもうあまり家にまで人は来ていなかった。


煙草が売っている商店までは遠回りであっても海沿いを歩くのが好きだった。潮のおかげでべたつく皮膚や髪が何だか自分が今生きているんだなぁということを実感させて嫌悪感を抱くからだった。そうでなければ自己嫌悪によって"自分"が死んでいくように思えたからだった。



「じいさん、煙草くれねぇか」


島に住み始めた時一番親身になって受け入れてくれたじいさんの"何でも売ってます屋"がある。…まぁ内陸でもあるまいし大したものは扱ってはいないけれども。

じいさんの店には馬鹿みたいにでかい声で笑うガキ共はいないし、ましてや文藝春秋なんて一切扱ってなかった。サンドウィッチがなくて菓子パンが売ってなくて、代わりに置いてあるのは少しの既成品とじいさんが握った下手くそなおにぎりだった。

そんな何でも売ってるじいさんとお店は島で一番好きなものだった。




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