第000話「賢者」
-----創歴18年-----
人里離れた秘境と呼ばれるような森の中で、一人の賢者と竜、神獣、精霊、、、、数多の生き物が彼を囲むように鎮座していた。
「わしは、もう長くない。」
横になっていた賢者は唐突に言葉を発した。
「だが、この世界を行く末を見ることができないのは忍びない。だからわしは、1000年後にこの世界に転生するように魔法をかけた。お主らにはわしがいない1000年の間この世界を見守ってもらいたい。もしよからぬ方向にいくようならそれを良い方向へと導いてもらいたい。」
賢者は弱々しく、だが期待を込めて言った。それを聞いていた者達は、寂しげな表情とともに彼の願いをできる限り守れるようにと頷いた。
「1000年後わしはここに転生する。そのときまたここに集まってもらいたい。お主らには圧倒的な力がある。だがそれは何かを守るとき以外振るうではないぞ。私利私欲に使うは未熟者のすることじゃ。わしは、お主らだからこの世界を任せられる。」
賢者は彼らを信頼していた。彼らを一緒に魔王と戦い、また多くの戦場で一緒に戦った戦友でもある。賢者は昔自分が旅してきたことを思い出しながたら口を開いた。
「ではこの世界を頼んだぞ。」
そう言うと賢者は力を失い、そこには賢者の亡骸だけが残った。そこに残された者たちはただ茫然とその亡骸を見ていた。すると一匹の竜が土を掘り、人の形をしていた精霊が彼をそっと土の中に埋めた。そこには彼を弔うように小さな石碑が飾られた。