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No one is alone.  作者: 椎名
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Someone is alone.

必ず前話をお読みください。

 戦争なんか大嫌いだ。そう子どもの頃は思っていた。

 とにかく怖かったのだ。

 前触れもなくやってくる知らない肌色の軍人どもは、一瞬で日常なんて消し去ってしまう。

 母が用意した朝食がぐちゃぐちゃになって床に落ちる。

 配達に行った父はそれっきり帰ってこない。

 妹が、母が、最悪な形で、最悪な方法で壊されていく。

 隠れた棚の隙間から、俺はそれを見る。

 ただ見る。

 

 震える体で考えていたことは、失禁や嘔吐をしようものなら見つかってしまうという恐怖。

 妹の片足が千切れる瞬間も、震えるだけだった。



 戦争は嫌いだ。さらに言うなら兵士というものが嫌いだ。

 戦場では兵士を殺せるから、昔ほど戦争が嫌いではなくなった。

 最低な奴らを殺す為の戦いだと思えば、もうどうでもよくなった。


 言葉が分からないのはいい。最低な奴らの弁明など聞かなくてすむからだ。

 泣こうが叫ぼうが、そこにぼろぼろになった少女がいれば、そいつは最低だ。

 少女はたいてい壊れている。

 出血よりも打撲がひどい。幼い関節が方向のおかしい方に曲げられている。

 目が濁って口は乾いてしまっている。

 生きていても、壊れている。

 治る少女はいないので、兵士を殺した銃とは別のものを少女に向ける。

 しっかり頭部に向けて放つ。

 

 この瞬間、俺は少女を救う感覚と妹を殺す感覚の両方を味わう。

 次の瞬間、安心して嘔吐ができる。



 その日に出会ったのも最低な奴だ。

 そいつは少女を連れていた。

 まだ壊れていない。

 追うことに、する。


 そいつの連れていた少女はよく妹に似ていた。

 それで俺の頭はおかしくなってしまったのかもしれない。

 少女はとてもきれいだったが、

 殺さなければならない

 と、思った。


 そいつは必死だった。しかし悲しいくらい非力でもあった。

 追いつめられてなお少女を離さない姿に腹が立った。

 殺してやろう。

 それだけ考えた。

 兵士の痩せぎすの体は狙い辛い。

 二発命中。少女が邪魔をした。


 追いつめる中で何度も問いかけたことを最後に問う。

 「お前も俺の妹をレイプしたんだろ」

 兵士が笑うもんだから、俺は夢中になって引き金を引いた。

 言葉が分からなくて本当に良かったと思う。

 これ以上、胸糞悪くなっては堪らない。


 今日は嘔吐だけでなく、何度も死にたくなった。

 戦争なんか大嫌いだ。久しぶりにそう思えた気がする。

 本当に大嫌いだ。

 

 胃液の張り付いた喉を洗おうと、少女の水筒を覗き込だが

 中身はすっかり空だった。

 しばらく雨は降りそうにないほどの快晴だ。

そんな世界が、時にある。

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