終わった恋と新たな出会い
俺の名前は黒川狼牙、少年漫画の主人公
みたいだとかからかわれる事以前はあったが、今は
小説家としてペンネームに頼らずやっていっている。
ちなみに俺は高校生(17)だが、ハマっている雑誌に
小説を投稿したら即デビューが決まり、今は売れっこなんて
のになっている稀有な例だったりする。
からかわれていた名前が一気に「男らしくてかっこいい」と
呼ばれるようになった。女の子のファンがかなり増え、もう
俺をからかう奴は誰もいない。
俺を推薦してくれた編集長には今も頭が上がらかったりする。
――まあそれは置いておいて。俺には好きな人がいたりする。
森園有栖。俺の幼馴染だ。男勝りでおてんばで、よく乱暴な
遊びや悪戯に付き合わされた物だが、振りまわされるうちに
いつしか彼女の事を好きになっていた。
苦節十年。なかなか想いを告げられずにいた俺だが、今日ついに一歩を
踏み出す事にした。彼女を雑誌に載っている有名なカフェに呼び出したのだ。
「好きだ」と告げるために――。
有栖はしばらく待つうちにようやくやって来た。
いつもの事だが、彼女は時間にルーズである。
淡い茶色の長い髪に同色の大きな瞳。黙っていれば
美少女な有栖だが、黙っていないからあまりクラス
メイトの評判はよくなかったりする。
買ったばかりらしい青と白のストライプのワンピースが
とても似合っていて可愛らしかった。
「ごっめーん、狼牙。遅れちゃったね~」
「――遅れちゃったね、じゃないだろ? まったく三十分も遅れる
なんてお前本当にルーズだよな」
「なによ~。三十分くらいいいじゃない」
ぷぅと頬を膨らませる様子が可愛らしい。そういう時間にルーズな所も、
怒られてすねる所も俺が彼女の事を好きな理由だ。
「あの、さ」
「あのね!」
俺の声と有栖の声が何故かかぶった。
彼女も何か言いたいことがあるのだろうか。
「あ、ごめん。先いいよ、狼牙」
「あ、いや、有栖から先で。レディーファースト」
「わ、分かった」
有栖は顔を赤くし、もじもじと指を動かしながらうつむいている。
何かを言いたいのに言いにくい、そんな顔だ。
俺はもしかしたらと期待してしまった。
「ろ、狼牙、あ、あのね……」
「な、何だよ!?」
「わ、私、私実は――」
「あんたが好きなの」。そう口に出すのだと俺は思っていた。
その時まで、そう期待してしまっていた。
しかし、その予想は裏切られ、彼女が取り出したのは携帯電話で
待ち受け画面には地味めの顔立ちの男が映っていた。
「私、この人と結婚するの!」
――世界が、止まった。いや止まったのは俺だった。
俺の思考回路が一時的に止まっていた。
頭が真っ白になる俺には一切気がつかず、有栖は恋する乙女の顔で
言っちゃったと顔を赤らめていた。その顔はとても幸せそうで、俺は
もう彼女につけいる隙も何もないことを知った。
「お、おめでとう、有栖……」
「ありがとう、狼牙! 狼牙ならそう言ってくれると思ってたよ!!」
俺の初恋は報われる事なく、そして相手に想いを告げる事なく
儚くも砕け散った――。
告白しようとした瞬間振られ、すっかり仕事のやる気がしなくなった
俺は小説制作用のパーソナルコンピュータ(パソコン)に向かう気が
起きなくてだらだらとマンションの自室のソファで寝そべっていた。
「はぁ~やる気しね~」
「――それは困ります」
しかし、突如冷たい声音の声が耳に響き、驚いた俺は飛び起きた。
そこにいたのは――赤ずきんだった。えっ、ショックで幻覚を見たんじゃ
ないかって? 違うわ! 赤ずきんだったんだよ! あれはもはや
赤ずきんとしか言いようがなかったんだって!
さらさらの短い黒髪に日の光によっては赤にも見える茶色の瞳。
赤いフードつきのマントを着た赤ずきんちゃんは、俺の目の前に
ちょこんと立っていた。
「よ~黒川。今日から担当さん変わったから」
「白雪紅子と申します。黒川先生、これからよろしく
おねがいいたします」
それが赤ずきんちゃんこと白雪紅子との俺の初対面だった――。
しばらくスランプになってしまったので、スランプを
脱するためのリハビリとして新たな小説を投稿しました。
かなり長らく書いてませんが、他の作品も決して放り
投げたりせず投稿するつもりです。
童話とはあんまり関係ないですが、童話モチーフの
名前を使ったキャラクターを出しました。
今回はファンタジーなしの恋愛物です。




