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漆黒の戦機  作者: 夏木裕佑
第三章「それぞれの宇宙」
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一三二年 十月二十日~ ③

「来たぜ、船長。うじゃうじゃいやがる」


フィリップが言うと、リガルのヘルメットに装備された無線機から、彼のしゃがれた声が聞こえてくる。リガルは手に持っているブラスターを改造した、対人用無力化パルスライフルを握りなおしながら、周りにいる五体の保安用ロボの丸っこい頭を軽く撫でた。彼自身は、通路の奥まった部分にある角で、壁沿いに身を隠しながら銃を構え、伏せている。いつでも銃撃できる構えだ。


今、リガルのヘルメットにはヘッドアップディスプレイに投影表示されたアクトウェイ船内の状況が映し出されている。こんな状況にクルーたちを追い込んでしまった自分の不覚に対する自責の念は消えてはいないが、今は命に関わるこの状況で、船を、クルーを守るための行動に集中すべきだ。


軽く頭を振り、船内図の三次元映像を手でくるくると回しながら、リガルは唸った。一目見て数え切れないほど、大勢の赤いアイコンが広がり始めている。その傍に、敵の総数を現した数字がポップアップ表示された。


「アキの捉えている情報によると、敵は一五二人。全員が軽装備の歩兵部隊並みに武装している。訓練を積んだ連中なら、ひとつの前線基地を壊滅できる装備だが、動きは統率がとれていても、ひとりひとりの行動は素人丸出しだ。リーダーが余程信頼されているんだろうな」


今、クルーたちは一人が五台の保安ロボットを随伴させて、漆黒のステルス装甲服を身に纏って、リガルと同様に通路で待ち伏せている。


保安ロボットは四足の、それぞれの脚の先に可動式電動モーターを搭載したモデルで、階段を昇ったり、ワイヤーを射出して真空中の船の外壁まで伝うこともできる特別製だ。両手には暴動鎮圧用のパルスガンが装備され、必要なら殺傷力のあるエネルギー兵器も使用する事が出来る。今はもちろんパルスガンモードで、射撃する事に関しては、敵の命を奪わない設定がなされている。


「暇つぶしに作りました」


アキがある日突然、このロボットの試作型を持ってきた時、リガルは思わず面喰らった。AIが暇つぶしなど聞いたことも無かったが、彼女の触れ込みでは、両手に持っている兵装を整備器具などに換装し、船の整備などを行う補助ロボットとしても十分以上の活躍が出来るらしい。熱心にロボットの頭を片手で撫でながらそれらを昏々と説明し続ける彼女を遮って、リガルは可愛らしい保安ロボットの頭を撫でたい衝動を抑えながら、自室の肘掛をとんとんと叩いた。


「今のロボットではダメなのか?」


「現在使用している子達は、半年前に私がこの船にAIを移した時、既にかなりの年月が経過していたものばかりでした。今も使用するには問題ありませんが、より効率的に作業を進めるには新しいものに変える必要があります。それに、私達は七人でこの船を動かしています。万が一白兵戦となった時、少ない人員をカバーする何かが必要です」


「成程な、それは一理ある。アキ、決定と同時に調達する目途は立っているのか」


「どこかのステーションに立ち寄った時などに、工廠を借りて製造したいと思います。なので、それまでに許可を頂ければ、すぐにでも」


「採用しよう。これら資金については、会計長も兼任しているキャロッサと相談して決めてくれ。フリップにも設計図を見せて、他のクルーにも事情を説明すること」


その後、アキがスキップをしそうな勢いで部屋を出た後に気付いたことだが、彼女は自分自身も含めて、七人のクルー、と呼んだのだ。この船と、自らである筈のアクトウェイまでもを他人のように呼んだ彼女。


リガルは、彼女が量産した保安ロボットの頭を軽く叩いた。ロボットは反応して、どこか可愛らしい仕草で飛び跳ねている。彼女がこの船を自分の居場所と感じているのならば、俺が、死んでも守るべきだ。そう決意を固め、格納庫から侵入してくる赤いアイコンの群れを睨み付ける。


アクトウェイの通路は、アキの判断で各所が分厚い隔壁で閉鎖されている。その隔壁の通路にはとりわけ厳重な防衛用設備を設け、生半可な攻撃では通過できない様になっている。通り抜けるにはバレンティア製の高性能爆薬が必要だ。その他、五ヶ所だけ通行が可能な場所があり、流れ込んできた敵を、アキ、キャロッサ以外のクルーが率いる保安ロボット部隊が鎮圧する。キャロッサとアキは後方で、万が一の事態に備えて待機している。


一五二人の敵集団に対する強みは、クルーが装備しているステルス装甲服だ。これは、黄金の花束ゴールデン・ブーケのドゥエストス衛兵長が特別にクルーたちの分を手配したもので、リガルが身に着けているのは、ニコラス・フォン・バルンテージ氏の救出作戦の際、彼が身に着けていたものと同一の品だ。通常の装甲服が外部に示すあらゆる反応をシャットアウトし、ステルス性を極限まで高めた装甲服は、生半可なセンサーによる探知を許さない。大抵の索敵器具を誤魔化せる高性能装甲服だが、それでも、人間の持つ五感だけは誤魔化す事が出来ない。


目に見えず、電磁波を発しなくても、押しのけた空気の流れを始めとする情報を、人間は五感を使って敏感に察知する。だからこそ、こういった高性能な武装は、中身の人間に能力の高さを要求するのだ。


もうそろそろ、細長い触手のように伸びた敵兵の占拠エリアが、ほぼ同時に、待ち受けているクルーの元へ到達する。リガルはヘルメットの通信スイッチを入れた。


「みんな、攻撃に備えろ。発砲のタイミングは各自任せる。危険を感じたら、まず後退しろ。アキが隔壁で閉鎖する」


「了解」


力強く、短い返事が返ってきて、リガルはそれ以降、自分の目の前だけに集中した。影一つない無機質なアクトウェイの白い通路の奥から、微かに足音が聞こえてくる。ライフルの擦れ合う音、何かが装甲服に当たる乾いた音、電源の切られた磁力ブーツが床を蹴りつける音、音、音……それらを忠実に再現、増幅する装甲服の中で、彼は汗に濡れた手で、手甲越しにライフルの冷たい感触を想像した。


通路の先、T字型の通路の向かって右側から敵兵が現れる。茶色と黄色を混ぜたような、古びた装甲服だ。彼らがひとり、またひとりと増え始めるのを目の当たりにしながら、リガルはさらに待つ。まだだ、まだ早い………


今だ。


一直線の通路に敵の兵士が十人ほど集まった時、遂に、彼は手に持っているライフルの引き金を絞った。


長い銃の銃床が肩の上で跳ねる。一発目で先頭の敵兵が両出を上げるようにして倒れ、リガルは反撃を食らう前に動きを止めるべく、麻痺モードにセットしたパルスライフルの引き金を絞り続ける。鳴り響く轟音と閃光が通路を満たし、数秒後には元の静けさを取り戻した。


一直線の通路は、気絶した男たちの装甲服で埋め尽くされた。一番奥の通路の影で、何人かがまだ動いている気配があるが、こちらの反応を探知できないでいるらしい。脳裏にドゥエストスの声が響く。


「いいですか、船長。あなたが一ミリも動かなかったら、この宇宙から消え去ったと思ってください。冗談抜きに、身動き一つしないあなたを探知することは、私にもできなくなるでしょう」


リガルは胸の前に据え付けられている弾倉入れから新しいエネルギーパックを取り出すと、パルスライフルの使い切ったエネルギーパックを抜き取り、慎重に再装填する。装甲服のヘッドアップディスプレイに表示されているライフルのエネルギー表示が百パーセントになると、再び照準器の筒の中に映っている赤い照星を敵へ向ける。


アキが送信してくる情報によると、他のメンバーも戦闘状態に入ったようだ。


今回、敵を殺すのではなく無力化することを提案したのはキャロッサで、こちらが誰も死なない限り、相手も殺すことは無い、と主張したのだった。


リガルは、別に相手が生きようと死のうと、ここまで銃を持った入り込んできている訳だから、死んでも文句は言えまいと思っていたが、キャロッサの言葉に耳を傾け、彼女のために、誰一人殺さないことを選んだ。


というより、リガルは、アキの体内といえるこのアクトウェイの中で、鮮血をまき散らすような事態は避けたかった、というのが本音なのだが。


後ろで六本足の保安ロボットが、パルスガンを二本のアームで構えたまま、そろそろと前進していく。モーターの、ウィーンという音が通路を響き始めると、海賊達は通路の奥から猛烈な応射を開始した。


が、アキは想像以上にこのロボットを可愛がっていたようだ。丸っこい玉ねぎ型の頭部から、胴体、足、腕に至るまで、純白の曲面装甲が施されているため、ブラスターやビームライフルのような比較的小型の火器では、傷一つ付けることが出来ない。あれを倒すには、少なくとも手榴弾のような爆発物か、対物狙撃ライフル、ロケットランチャーくらいでないと無理そうだ。

そうこうしている間に、保安ロボットが発砲を開始する。内部の動力源に直結されたパルスガンを、各機が連携して間断の無い発砲を繰り返す。


通路には気絶している海賊たちの装甲服がごろごろと転がっているが、ロボットたちは器用に足を持ち上げて彼らを乗り越え、頭などは一ミリも揺らすことの無い絶妙な姿勢制御のまま肉薄していくと、敵は泡を食って後退していく。


「こちらリガル。敵を撃退した、追撃する」


無線でそういうと、続々と同じような報告がクルーたちから入ってくる。船内に入り込んだ海賊は続々と気絶者を出し、何とか抵抗しながらも、格納庫方面へと押し戻されていく。その様子をホログラフで確認していたリガルの耳に、聞きなれない男の声が、耳障りな雑音と共に聞こえてきた。


「……えるか。こちら、コンプレクター……の、ハンス……」


「船長、アキです。敵は降伏を申し出ています」


「なに、降伏?」


リガルは思わず聞き返したが、その後に、予期しない声がヘルメットの中に響いた。


「船長、アタシだよ。こいつの言うことを聞いてやってくれないかい」


「ジュリー?何を言ってるんだ。罠かもしれないんだぞ。そこに君たちクルーを巻き込むわけには――」


「大丈夫だよ、あいつは何もしてこない。こっちが誰一人殺していないことを見て気が変わったんだろう。いいかい、船長。相手はくそったれに信用できる男だ。ここは私を信じてくれないかい」


リガルは考えた。ここでジュリーの言うことを信用した場合どうなるか。相手は百五十人はいて、今は百人ほどだろうが、彼らを拘束する力はリガル達には無い。この勢いのまま保安ロボットを動員して全員を捕虜に取ることもできる。しかし、そうなればあの船から逃げきれないだろう。大勢の仲間を見殺しにすることはできない筈だし、何よりも奴らには瞬間移動機能も付いているようだ。その技術などにも興味はあるが差しあたりそこは考えず、俺はクルーの安全と、ジュリーの言葉を天秤にかける。


そうだ、保安ロボットを使おう。俺とアキだけが奴らの前に出て、ありったけの保安ロボットを格納庫に集めればいい。そうすれば被害は最小限に済む。そう思いつき、リガルは答えた。


「わかった。奴らの降伏を受け入れよう。アキ、俺のところへ来てくれ。イーライ、君は俺とアキ以外のメンバーを集めて、格納庫前の整備室辺りにでも陣取るんだ」


「船長、何をするおつもりですか」


イーライの心配そうな声に、リガルは思わず笑い出しそうになるのを堪えながら言った。


「降伏を受け入れるんだよ、イーライ。敵の船長の思惑が知りたい。どうにも、あんな船が俺達を襲うのは何か目的がありそうだ。そうだろ、ジュリー」


一瞬の沈黙の後、ジュリーが静かに口を開く。


「まあ、そういうことさね。奴らの目的は私だよ」


「ジュリー、なんで―――」


「細かい説明は後さ」


驚きの声を上げるフィリップに、ぴしゃりとジュリーは言った。


「アキ、あんたはイーライと合流するんだ。保安ロボットの映像は、あんたが皆に中継すること。私と船長で格納庫まで出向き、奴らと話をする。気にするこたないさ、相手はもう戦う気は無い。それでいいね、船長」


「ああ、わかった。俺から降伏を受け入れ、格納庫へ手下を集めるように要求を伝える。さあみんな、仕事に取り掛かってくれ」




用心深く、格納庫へ通ずる小型エアロックから首だけを出して、リガルは眼下に群がる装甲服の集団を見下ろした。百人を超える人間が、真空にも対応できる重そうな装甲服を着て、気絶して横たわったり、落ち着かなさげに歩き回っている者もいる。彼らの間を縫うように歩いて、声をかけたり、跪いて気絶している仲間を見たりしている男が一人いることに気が付き、リガルはそろりとハッチから体を晒した。気が付く人間は一人もいない。格納庫の中では数台の保安ロボットが、カメラアイをくるくると頭の周りで回しながら首を傾けている。


リガルは後ろに控えている、同じステルス装甲服を着たジュリーに呼びかけた。


「リーダーらしい男を見つけた。ジュリー、本当に大丈夫か」


「なんだい、今さら怖気づいたんじゃないだろうね、船長」


「そんなわけあるか。よし、行くぞ。少々演出がすぎるが、効果はある筈だ」


「わかった。アタシはステルスをオンにしておくよ。理由は聞かないでおくれ」


「了解。じゃあ、いくぞ」


リガルは格納庫の上方にあるハッチから身を躍らせた。続いてジュリーも飛び降り、およそ十メートルほどの高さから躊躇なく踊り出ると、ステルス機能を全開にした装甲服が、人ひとりが思いきり地面を蹴りつけるくらいの音を立てて着地する。同時に、光学迷彩を皮膚が剥がれるが如く機能を消し、群衆の目の前に真っ黒な装甲服が、突如として出現したように見えた。


ヘルメットの、中が覗けないバイザーばかりがリガルらを捉える。数人が傍に置いてあるパルスライフルを手に取ろうとして、リガルは”ひやり”としたが、傍に居たリーダー格の男が何事かを怒鳴る仕草をし、彼らは銃を床に置いた。


からん、と乾いた金属の音が、だだっ広い格納庫の中で虚ろに響く。リガルが歩み出ると、海賊の頭目らしき装甲服姿が同じように歩み出て、二人は一メートルほどの距離を置いて立ち止まった。保安ロボットの群れと装甲服の群れの間で、それぞれのリーダーが対峙する。


「君がこの船の船長か」


相手の男の声が、少しだけ雑音交じりにリガルにも聞き取れた。やけに役者めいた話し方をする奴だ、と、リガルは心の中で呟いた。


「そうだ。アクトウェイの船長をしている、リガル。そちらは?」


「コンプレクター船長、ハンスリッヒ・フォン・シュトックハウゼンだ。我々の降伏を受諾して頂きたい」


ちらりと、リガルは彼の後ろで佇んでいる海賊たちを見る。彼らは完全に戦意を無くしているように見えるが、罠かもしれない。少し時間を稼いで、意図をはかった方がよさそうだ。


「その点に依存は無い。できれば、いきなり襲撃しておいてそれよりも唐突に降伏を申し出てきた理由を聞きたいんだが」


「そう来ると思っていたよ、リガル」


声色に好奇心を隠そうともせず、ハンスリッヒはヘルメットに手をかけた。


「良い装甲服だな。まるで君の気配がわからなかったよ。ところで、こちらもひとつ聞きたいのだが、これを外したらガスで気絶……なんていうことは無いだろうか」


「無い。といっても信じるには難しいだろうから、私が先にヘルメットを取ろう」


そういい、リガルは真っ黒い影のような装甲服の首元に手をかけ、二重に密閉された細菌兵器用の防護ブロックを解除する。勿論、格納庫の中の安全性は全ての換気設備をチェックしているアキが、これでもかとリアルタイムの情報をヘッドアップディスプレイに投影しているので、確認されている。海賊たち……ハンスリッヒたちが何か有毒化学物質を流した様子は無い。意外に潔い男の様だ。


”くそったれに信用できる男だ”。ジュリーの言葉が脳裏によみがえる。彼女は、こいつらのことを知っているのか。


空気の抜ける音がし、リガルはヘルメットを脱いだ。黒くみずみずしい髪の毛が揺れ、汗で皮膚にへばりついている。それを掻き上げた後、リガルは手を振って、ハンスリッヒにヘルメットを外すよう促した。彼は頷き、古臭いヘルメットを脱ぎ始める。


一秒後、優雅な金髪の美青年が、先ほどの古臭い装甲服姿からは想像もつかないほどの高貴な佇まいでそこにいた。やや吊り上がった両目は底なしに青く、形の良い眉と顔立ちの中で、やけに高い鼻が目立つ。顔つきからして、旧帝国人だろうか。


「先ほどの質問だが、答えよう。何故、降伏したのか。君には負けたからだ、リガル船長」


「意味が分からない。まだ、君達を負かしてはいないと思うが」


「事実上負けている。たった数分で、こちらは半数に及ぶほどの人数が無力化された。しかも命は奪わず、気絶させられただけだ。結果は目に見えている」


「それで気を変えた、と」


「なんでそう思う?」


「爆薬まで持って来ておいてよく言う。それよりも、目的はなんだ。乗り込んでくる目的は」


ハンスリッヒは弾ける様に大笑すると、目を細めてリガルを睨み付けた。


「この船に、ある女性が乗っている筈だ。名前はジュリー・バック。誤魔化しても無駄だ。彼女がこの船に乗り込んでいることは調べがついている」


「随分調べたんだな」


ハンスリッヒは薄い笑みを浮かべた。


「レイズ=バルハザール戦争のことは誰でも知っている。君達アクトウェイの活躍は、シヴァでも大々的に取り上げられているんだ。今やこの黒い船を知らないノーマッドはいやしない。まあ、私が君達を調べたのは別の段階だがね。レイズ星間連合での海賊との一件から調べた。リガル、アキ、イーライ・ジョンソン、フィリップ・カロンゾ、セシル・アカーディア、キャロッサ・リーン、そして、ジュリー・バック。彼女の身柄を差し出して欲しい」


リガルは、装甲服のパルスガンに軽く手を伸ばしながら首を振った。が、何かの力で彼の手は止められ、驚きと共に、耳元で声がした。


「ハンス、いい加減にしな。その口閉じなければ、今すぐその脳天を撃ち抜くよ」


その声に、男の顔が無表情に戻り、次に満面の笑みが顔を支配した。リガルが首を傾けると、隣にはステルス機能をオフにした黒い装甲服が佇んでおり、小さなパルスガンで一ミリのずれもなく、正確にハンスリッヒの眉間の中央に狙いを定めている。微塵も驚く様子は無く、彼は一歩、前に歩み出て、ジュリーに触ろうと手を伸ばした。


鋭い銃声。ハンスリッヒの足元に火花が散る。瞬間的に周りの海賊達も身構え、緊張が走る。


「やめろ!」


金髪の男が怒鳴った。振り上げられた銃は全て下ろされ、リガルは生きた心地がしなかった。


「ハンス、私に話があるんだろう。この船から出ていきな。話すだけなら通信でできる」


「いや、それには及ばない。僕がアクトウェイに残ろう。部下は先に退去させる。

さあ、諸君!話し合いだよ。早く部屋へ案内しておくれ」

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