第3章44
と、その時。
「あ、コカリちゃん!」
ナトリウムが、何かに気が付いた。
「おにいちゃぁ~ん!」
ヒラヒラのピンクのドレスを着た少女が駆け寄ってきた。金髪碧眼の可愛らしい少女である。頭にはダイヤを散りばめた豪奢なティアラを載せているが、それが微妙にずり落ちていて、どこか情けない。
と、少女は小石に躓き、顔面から地面に激突した。
「びぇぇぇん!」
少女はすぐに起き上がったが、泣きながら鼻血を垂らしている。
「あぁぁぁ!大丈夫!?コカリちゃん!」
ナトリウムは、丸めたティッシュを少女の鼻の穴に詰め込んだ。
「ダン様、カナさん、紹介します。僕の妹でレプトスピラ王女、カリウム二世。通称コカリ姫です。」
転んだ勢いで落っこちてしまったティアラを載せ直してやりながら、ナトリウムは妹を紹介した。
コカリ姫は、鼻にティッシュを詰められた間抜け面で、ボヘーッとダンとカナを見上げている。間抜け面だが、どこか愛くるしい。
彼女の未来の夫こそ、この国の次期王者である。
「ナト…お前にそっくりだな。」
ダンは思わず呟いた。カナも同意見である。見た目もよく似ているが、中身は何と言うか…。ナトリウムをもっと悪化させた感じかもしれない。