第3章43
「さてと、とりあえず、ナトはレプトスピラに帰るんだろう?」
カナはナトリウムに問いかけた。
「はい。今回の事件の顛末を、王と王妃に報告しなければなりませんから。」
「なら、レプトスピラまで、送ってやるよ。お前、方向音痴だからな。いいだろ?ダン。」
「そうだな。途中で迷って、くたばっていられたら、俺達も寝覚めが悪いからな。」
そうして、3人は行きと同じ日数を要して、レプトスピラまで戻った。
レプトスピラの王城まで辿り着くと、ナトリウム帰還の知らせはすぐに広まった。本当の事を言うと、王と王妃を含めた国中の誰もが、ナトリウムに事件の解決の手伝いなど、期待していなかったのだ。ただ、王妃の書状をクロストリジウム王に届けて来られれば、それだけ充分と思われていたのである。
ナトリウムは王族だが、正式な場では王室に仕える騎士である。王と王妃に謁見を申し入れ、その時間までカナやダンと一緒に王城の中庭を散策していた。
中庭は花々の咲き乱れる美しい庭園だった。揚羽蝶が飛び交い、中央にある噴水には清らかな水が湛えられている。
「キレイな所だな、ナト。」
カナは率直な感想を述べた。
「ありがとうございます。カナさん。」
ナトリウムが応えた。
ダンも、レプトスピラの王族の趣味の良さを感じていた。




