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魔獣物語  作者: ひよく
序章
9/155

序章9

「カナぁぁー!!」

 最初にカナが魔人の攻撃を受けた時と同じように、タミナが悲痛な叫び声をあげた。

 だが、今度はタミナばかりではなく、ダンも同じようにカナの名を叫んでいた。


 カナは悲鳴をあげなかった。

 即死したかもしれない。

 最悪の可能性を頭から振り払うように、ダンがカナに駆け寄り、その体を抱き起した。


 タミナも、カナのもとへ駆け寄ろうとする。

 それをダンが大声で制した。

「来るな!大丈夫!生きてるから!」

 そう叫んだダンだが、実際には、まだカナの生死は確認していない。タミナに出て来られては困るから、咄嗟にそう叫んだだけである。


 タミナを安心させるために。

 それ以上に、自分がそう信じたかったから。


 ダンに怒鳴られ、タミナは硬直したように、その場に留まった。「生きている」と言われて多少は安堵したものの、とてもではないが、無事には見えない。

だ が、ダンの言葉には逆らえない迫力があった。


 魔人は立ち上がろうとしたが、よろめいて、また尻餅をついた。

 右腕は切り落とされ、それ以外にも大小いくつもの傷を負っているのだ。あまりの出血量に、さすがの魔人の体もついていけなくなってきているのである。


 ダンは祈るような気持ちで、カナの首筋に指をあてた。


(生きてる!)


 弱々しいが、確かに脈がダンの指にふれた。

 生きてさえいれば、回復魔法が使える。ダンが最も得意とする魔法は、回復魔法なのである。


 ダンはありったけの魔法力を回復の力に変えて、カナの体に注ぎ込んだ。

 破裂した内臓を修復し、砕けた骨は大きな箇所だけ繋ぎ合わせた。


 これで、命は取り留めるだろう。

 だが、これが限界である。完全回復は到底、不可能だった。カナは戦線離脱するより他にない。意識すら戻っていないのだから。


 しかし、それはむしろ好都合とダンは考えた。


 カナに魔人は斬れない。

 それがわかったからである。

 よく考えれば、それは当然の事と言える。それに気付かなかった自分の迂闊さに、ダンは呆れた。

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