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第3章20
その日の深夜、カナはふと目が覚めた。
カナは辺りを見回した。
狭い家の中で、皆で雑魚寝していたはずなのだが、ダンの姿が見えない。
「ダン?」
暗い中で呼んでみたが、返事はない。
「どうしたんですか?カナさん。」
ナトリウムも起き出してきた。
「ダンがいないんだ。」
「用足しでは?」
「いや、違うと思う。」
「そう言えば、ケタミンさんもいませんね。」
カナとナトリウムは、外に出てみた。
そして、2人に衝撃が走った。
地面は抉れ、木は倒れ、焦げ臭いが充満していた。
「魔術師の戦闘の跡だ…。」
カナは呆然とした様子で呟いた。
「何故、こんな大きな戦闘があったのに、僕達は目を覚まさなかったのですか!?」
「誘眠魔法で、眠らされていたんだと思う。ダンなら使える。ケタミンも使えるのかもしれないけど…。でもあの倒れた木は、ダンの仕業じゃない。多分、あれは雷撃魔法だ。ダンは雷撃魔法だけは、絶対に使わない。」
「ダン様とケタミンさんは何処に!?」
それを訊きたいのは、カナのほうだ。
結局、ダンとケタミンは帰って来ないまま、夜が明けた。