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第3章14
王城を出ると、既に日は傾きかけていた。
「ダン様。魔獣化したケタラールの娘さんに会うのは明日にしませんか?人の家を訪ねるには、少し失礼な時間帯になりますよ。」
ナトリウムはダンに提案したが、ダンは
「いや、今日中に行こう。むしろ暗くなってからの方が、いいかもしれん。」
と、そのままの足で、娘の家に向かった。
教えられた場所に行くと、それらしい小さな家が見えた。
賢者ケタラールの家は、元は王城の近くの大きな屋敷だったとの事だが、ケタラールが魔獣化し、倒されて、娘が残されると、娘は逃げるようにこの町外れの小さな家に移り住んだという。
もう暗くなってきたのでわかりにくかったが、家は外側からあちこち壊されているようである。窓ガラスは無残に割られていたし、家の外壁には見るに堪えない中傷の言葉が落書きされていた。
「ヒドイな。可哀相に。」
カナは呟いた。
「そうですよね。酷いです。」
ナトリウムもそれに同意する。
「突っ立ってても始まらない。さっさと行くぞ。」
ダンは木製の扉をノックした。