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第3章4
「本名はダルノン・キャストスペイだ。ダンは通称だ。」
ダンがそう言うと、カナがケタケタ笑い出した。
「‘ダルノン・キャストスペイ’か。お前の本名、久々に聞いたな。」
カナの物言いに、ナトリウムは首を傾げた。
「カナ様も賢者様で?」
カナの言葉遣いが、魔術師に対する戦士のそれにしては、さばけ過ぎていたからである。魔術師と戦士が一緒にいた場合、普通、彼らは主従関係だ。だが、カナはダンに雇われているわけではない。
「私は見ての通り戦士だよ。」
見ての通り…というなら、ダンだって、見た目には戦士にしか見えない。
「こいつは俺の双子の姉だからな。」
2人の関係を長々と説明するのは面倒臭いので、ダンはそれで済ませる事にした。
「そうでしたか。言われてみれば、目元がよく似ておいでで。カナ・キャストスペイ様。」
納得したように頷くナトリウムに
「いや、私に苗字は」
‘ない’と言おうとしたところで、ダンはカナの脇腹を小突いた。
ナトリウムに聞こえないように小声で
「姉弟と名乗ったんだ。同姓でなければおかしいだろう。」
と、カナに注意する。




