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第3章2
ダンは、川の中で遊ぶカナを見ながら、神経を集中させていた。
何もカナの裸体に興味があるわけではない。カナの裸など見慣れている。
かなり流れの速い川だ。それでも、カナが溺れるとは思えないが、万が一という事もある。いざという時には、魔法で川の流れを一時的にストップさせてしまうつもりなのだ。そういった自然の力に手を加える魔法は高等魔法なのだが、ダンであれば容易い事である。
やがて、気の済むまで遊んだカナが川から上がってくると、ダンは高めていた魔法力を散じさせた。
ダンはカナにタオルを放り投げた。
「早く体を拭け。客が来る。」
「客?」
カナもダンも人の気配には敏感なのだが、どちらかというと、その点ではダンのほうが優れている。近付いてくる気配を先に察知するのは、いつもダンだ。
「敵ではなさそうだが、その恰好はまずいだろう。さっさと服を着ろ。」
そう言うと、ダンはカナの右足の甲に軽く触れた。川底の岩に擦って作ってしまった小さな擦り傷が、その瞬間に消えていた。