第1章28
「あぁー!ちくしょう!」
オルソは何度目になるかわからない叫び声を発した。
「ここまで来て、マジックアイテムが手に入らないなんて、そんなのありかよぉ。」
しょんぼり項垂れるオルソに、ダンは容赦なく言い放つ。
「約束だ。マジックアイテムは手に入らなかったが、報酬はもらうぞ。」
そんな2人の様子を見ていたカナが口を挿んだ。
「なぁ、ダン。」
カナはオルソの武器のバトルアックスを指さす。
「やってやれよ。あれ。」
ダンは溜息を吐いた。
(なんでそこまでサービスしてやらなきゃならないんだ。)
そんな事を考えて。
「あれって、なんだ?カナ?」
オルソが不思議そうな顔をする。
「オルソ、お前のバトルアックスを貸してみろ。」
「いいけど、何するんだ?」
オルソがバトルアックスを渡しながら問う。
「お前はどんなマジックアイテムが欲しかったんだ?」
「そうだな。火炎魔法みたいな派手な攻撃魔法が自在に繰り出せるようなマジックアイテムがあったら、カッコイイよな~。」
「火炎魔法か…。」
ダンはオルソのバトルアックスに手をかざし、魔法力を高め、神経を集中させる。
「何やってんだ?ダン?」
「し!」
口を出すオルソをカナが制した。
オルソのバトルアックスは淡い光を放ち、一瞬、ふわりと浮かんだ。
光が消えると、ダンはオルソにバトルアックスを返した。
「これでいいだろ。」
「何やったんだよ、ダン。」
「‘炎’を強くイメージして、そのバトルアックスを振り上げてみろ。」
「は?」
「いいから、やってみろ。」
そう言われて、オルソは目を閉じ、‘炎’をイメージした。
「うりゃ!」
そうして、バトルアックスを振り上げる。
すると、大気が震えた。炎の塊が出現し、真っ直ぐ飛んで行った。障害物があれば、それに当たって、それを燃やしたのだろうが。
「なんだ!?どういう事だ!?」
オルソは目を白黒させている。
「お前のバトルアックスに魔力を付加した。これでそのバトルアックスは、マジックアイテムになったんだ。」
これには、さすがのオルソも驚いた。
「お前、付加魔法まで使えるのかよ!」
付加魔法が使える魔術師は、古代に滅亡したと一般には伝わっているのだ。
「魔法は一通り、何でも使える。」
ダンは素っ気なく答える。
古代に滅亡し、現代には伝えられていないとされる魔法はまだまだ数え切れない程あるのだが、それらも使えるという事なのだろうか?
実はカナの剣にも、ダンがある魔法を付加してあって、カナはそれを最悪の事態に陥った際の切り札として用意している。