第1章19
ダンとオルソは、互いの武器を構え、対峙する。
ようやくカナも、オルソとダンが本気でやり合おうとしている事がわかった。
カナとダンが稽古する時は、いつも寸止めで勝負を決する。当然ながら、実際に斬りつけたりはしない。
しかし、オルソの武器バトルアックスは、その重量ゆえに、寸止めが難しいのだ。実際に当たってしまったら、命に関わる。
だからこそ、ダンのほうもいざとなれば魔法を出すと言ったのだろう。ただ、とりあえずは剣だけで対応するつもりのようだ。
(なんでコイツら、いきなり本気で勝負するんだ???)
よく理解できないカナは、疑問符だらけになった頭で、2人を見つめていた。
オルソは、バトルアックスを大上段に構えている。
ダンは、少し斜めに崩した中段の構え。構え方はカナとほぼ変わらない。
ダンの剣技は、基本的にカナの真似だ。ただ、カナほどの腕力がない分、剣はカナの物よりやや軽い物を使っている。
カナの剣は、亡き父が若かりし日に愛用していた大剣で、バトルアックス程とまではいかないが、重量はかなりの物だ。カナは子供の頃から、この剣を軽々と使いこなしているのである。
「うぉぉー!」
先に仕掛けたのは、オルソだった。
右足を踏み込み、間合いを詰め、大きく振りかぶったバトルアックスを振り下ろした。
ダンはそれを左に跳んで躱す。しかし、その一撃はフェイントだったようだ。オルソは間髪入れずに、回し蹴りをダンの脇腹めがけて飛ばした。
それも上体をひねって躱したが、完全には躱しきれず、ダンの体勢が崩れる。
そこにオルソが、バトルアックスで横薙ぎの攻撃を仕掛ける。ダンはこれを剣で受け止めたが、ダンとオルソでは、腕力が違いすぎるし、体勢も悪かった。力で強引に押しやられ、ダンは地面に転がされた。
とどめとばかりに、オルソは再びバトルアックスを振りかぶろうとした。
が、草に足をとられ、バランスが崩れた。その隙に、ダンは転んだままの体勢から、オルソの足を払う。
今度はオルソが転ばされ、起き上がったダンは、オルソの心臓めがけ、剣を突き刺した。
しかし、その剣はオルソの皮膚を一枚突き破ったところで、ピタリと止まっていた。
勿論、わざとである。
この勝負、ダンの勝ちという結果に終わった。