表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔獣物語  作者: ひよく
序章
3/155

序章3

 男の服はズタズタで、幾つかの小さな布切れが、かろうじて体に纏わりついているのみ。虚ろな目は焦点を結んでおらず、半開きの口からは涎がこぼれていた。


 まともな人間ではない。


 誰が見てもそれがわかるほど、男は全身から異様な雰囲気を醸し出していた。

 慌てふためいた村人達は、逃げ場を求めて右往左往するが、背後は切り立った崖である。逃げられるとすれば、先程、通ってきた村に続く道だけなのだが、それはこの不気味な男の背後にある。


「何なの、この男!?」


 思わず叫んだタミナの言葉に答えたのは、ダンだった。

 否、タミナに答えたというより、カナに話しかけたと言った方が正しい。


「魔人だ、カナ。気を付けろ。」

 落ち着いた声である。この場にいる人間の誰よりも、彼は落ち着いていた。

魔術師は常に冷静であれという父の教えが、彼の子供らしくない冷静沈着な性格を作り上げていた。

 どうやら、父達に加勢に行くには、まずこの男を倒さねばならないようだ。

 ダンは集中し、魔法力を高めた。


「魔人!?魔人って、なんだ!?」

 ダンほど冷静ではないカナは、動揺した声でダンに訊きかえした。

 それでも抜剣し、素早く身構えるあたりは、さすがである。


「魔獣化した人間の事だ。人間だって、魔獣化する事はあるんだ。ごく稀にな!」

 ダンは空気の流れを掴み、それをコントロールするように魔法力をこめた。

 すると、風は刃となって、魔人に襲い掛かった。鎌鼬の魔法である。


 ダンの作り出した鎌鼬は、魔人の皮膚に無数の裂傷を与えた。だが、大したダメージではない。魔人の全身からは血が滴り、一見すると派手に見えるが、ひとつひとつの傷は浅い。

魔人がその攻撃に一言の声も漏らさなかったのは、魔獣化によって恐怖を感じる神経が麻痺していたせ いなのだが、そうでなかったとしても、悲鳴は起こらなかったかもしれない。


 しかし、次の瞬間、カナが大地を蹴って、魔人に飛び掛かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ